表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第四巻 商人から領主へ ――選ばされた支配

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

157/428

第155章 包囲の収束と、火照る夜明け

話している最中、フィルードが彼女の腰をぐいと抱き寄せると、エレナはすぐに大きな鯉のように跳ね上がり、バタバタと暴れ始めた。

「私を下ろしなさい、離して! もしこれ以上変なことをするなら、侯爵様のところに訴えに行くわ!」

――相変わらずだ。

フィルードは心の中で肩をすくめる。

“この女は、力関係を認めたがらない。だが結局、俺の腕の中からは逃げられない。”

彼はそのまま彼女をベッドに引きずり込み、縄でしっかりと縛り付けた。

「訴えに行けばいいさ。どうせ侯爵様も俺たち二人が怪しい関係なのを知っている」

エレナは顔を真っ赤にし、頭にきて噛みついてきたが、フィルードは大きな掌で彼女の顎を押さえつけ、動きを封じた。

少し肌寒い夜だった。フィルードは横になり、抵抗するエレナを抱き寄せて布団に押し込む。

「動くな。これ以上動いたら、俺の手は大人しくなくなるぞ」

その言葉に、エレナはようやく硬直し、低く息をのんだ。

「……何を企んでいるの? 変なことはしない方がいいわ。これは犯罪よ!」

フィルードはニヤリと邪悪な笑みを浮かべる。

「他に何ができる? 俺はただ、かつての約束を果たしているだけだ。お前を捕まえて寝床を温めさせると言ったら、捕まえて寝床を温めさせるさ」

“過去の恩讐は水に流すつもりだった。だが、一日中殴ってくる相手に遠慮する必要はない。”

「安心して寝ろ。明日の朝一番で解いてやるから」

エレナは悔しさで歯ぎしりする。しかし、フィルードは気にも留めず、彼女の腰を抱いたまま深く眠りに落ちていく。

――そして。

エレナは眠らず、ずっとフィルードを見つめていた。

彼の重い呼吸が胸の奥で響き、熱が身体のどこかをゆっくりと支配していく。顔が突然赤くなる。

「……なんなのよ、この男……」

長い間、苦悩や戦場をくぐり抜けてきた肉体は、以前よりもはるかに逞しく、肌は健康的な小麦色。

眉は鋭く、戦士の気迫が眠っている間ですら滲み出ていた。

彼女は抵抗しなくなり、むしろ彼の腕の中で静かに身体をゆだねていく。

夜明け近く、フィルードが目を覚ます。

ほのかな香り、目の前でじっと自分を見ているエレナ――その瞬間、反射的にキスをした。

今回は、エレナがまったく抵抗しない。

むしろ……受け入れている。

“……これは、まずいな。”

フィルードの理性が危険信号を鳴らす。

酒のせいとはいえ、このままでは完全に踏み込んでしまうところだった。

結局、最後は理性が勝ち、二人は離れた。

フィルードは満面の笑みで挨拶する。

「おはよう、愛しい副団長様」

エレナは縄を解けと睨みつける。

今の彼女の目には、怒りだけではなく、奇妙な色が混じっていた。

フィルードはすぐ縄を切り、そっと謝った。

「昨夜は少し飲みすぎたんだ。それに、君に煽られて、我慢できなくてな」

エレナは鼻で笑う。

「やったことを認めないなんて、男らしくないわね」

――その瞬間、フィルードの罪悪感は吹き飛んだ。

彼は再び馬乗りになり、にやりと笑う。

「感謝もできない小娘め。なら――俺の鞭撻を受けろ」

二人は再び取っ組み合い、髪を掴み合い、互いに床へ転げ回る。

「放せ!」

「そっちが先に放せ!」

「せーので、一、二、三!」

フィルードは放したが、エレナは放さず、引き倒す。

「この人でなし、また約束破ったわね!」

しばらくしてようやく二人は動きを止めた。

外はすでに明るい。

「分かった、もうやめろ。兵士に見られたらまずい」

その言葉を聞き、エレナはようやく手を離し、髪を整え始めた。

フィルードはこそこそとテントを出て、左右を確認した瞬間――凍りつく。

マイク、ブルース、ユリアン、ライドン、そして大量の近衛兵……

全員がテントに耳を押し付けていた。

殴り合って場所を奪い合っている者までいる。

――終わった。

フィルードは真っ黒な顔で怒鳴った。

「お前たちは訓練しなくてもいいのか? 千人隊長が率先して上官を盗み聞きとは、どういう罪に当たる?」

兵たちは慌てて言い訳するが、フィルードは怒りを収めず、追い払う。

その後、エレナが何事もなかったように現れ、軍の配置について真面目に話し始めた。

……そして一ヶ月以上。

昼は城の防衛、夜はエレナとの攻防。

最終的には、エレナの方から寄ってくるようになった。

フィルードは思う。

“こいつの性格、本当に大丈夫なのか……?”

もはや常人の枠には収まらない。

一方、城外の攻城戦は二ヶ月以上続き、ついに限界が見えた。

獣人の補給は尽き、奪った食糧も底をついた。

ある朝、獣人大軍は野営地の撤収を開始した。

計六万の投入――三万の正規兵と三万の部族戦士。

そのうち部族戦士は七千〜八千が城壁下で死に、さらに外で二〜三千が死んだ。

正規兵も四〜五千を失った。

ダービー城の損害も重い。

家屋はほぼ倒壊、農奴兵を中心に三〜四千が負傷し、戦死者も千人近く出た。

戦いは、ようやく終わりに向かっていた。

PS:ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

第155章では、いよいよ両軍の腹の探り合いが終わり、

次章からは本格的な“決着”に向けて動き始めます。


ブックマーク・評価・感想などで応援していただけると、

続きの執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
やっとデレてきた!! エレナ目線も気になるフィルードのことどう思ってるんだろう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ