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傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第四巻 商人から領主へ ――選ばされた支配

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第154章 静かなる突破――高級見習への一歩

ブライアンは即座に首を振った。

「それ(価格下落)はありません。私たちは各地で共同経営者を探すことができます。彼らのコストと利益を合理的な範囲で固定し、数量を厳しくコントロールすれば、価格が下落することはないでしょう。」

なるほど、とフィルードは内心で感嘆した。

(この男……前世の商業理論の“原型”に自然とたどり着くとは。こういう直感的な才覚は、学んで身につく類のものではない。もし俺にもっと大きな領地があれば、財務官に据えてやりたいほどだ。)

「兄さんの考えは私の方針と完全に一致しています。あなたの見解に従いましょう。」

フィルードは強く頷いた。

「オークが撤退した後、毎月、私はあなたに石鹸のロットを送ります。あなたはそれを下の行商人に分配してください。もし過程で何か問題があった場合、無理に耐える必要はありません。全部、私に責任を押し付ければいい。危険を冒して財産を守る必要はありません。」

ブライアンは深く息を吐き、安堵の笑みを浮かべた。

「もちろんです。」

二人はその後も杯を重ね、話は尽きず、夜更けまで飲み続けた。

そしてフィルードは、ふらふらと駐屯地へ戻った。

――駐屯地に戻った途端、足がもつれ、思い切り転ぶ。

「……痛っ。誰だ、団長を襲うとは!」

反射的に片手剣を抜き、周囲を警戒した。

次の瞬間、後頭部を軽く叩かれる感触――反射で剣を振り返って放った。

そこに立っていたのは、青いロングドレスを揺らすエレナ。

嘲るように微笑んでいる。

ホッとしたフィルードは剣を収め、少し不満げに言った。

「つまらない悪戯はやめろ。真夜中に寝もせず、人を驚かしに来るとはな。」

そう言って立ち去ろうとしたが、エレナはすぐに追いすがった。

「あなたは団長なのに、自分の隊からこんなに長い間離れて、配置の指示もせず出かけて……しかもこんな時間に帰ってきて。説明は?」

「説明できないなら、侯爵様に報告します!」

(……前世の学生時代の“委員長タイプ”を思い出すな。面倒くさい。)

フィルードは苛立ちを隠さず言い返す。

「俺がどこへ行こうと俺の勝手だ。お前に口出しされる筋合いはない。

お前は俺の妻でもないだろう。告発したいなら好きにしろ。」

そう言い捨ててテントへ戻った。

背後で地団駄を踏む気配がして、少しだけ胸がスッとした。

しかし、テントに戻ってからも、怒りは引かなかった。

(……この女、魔法の階位が高いからって、俺にマウント取りまくりやがって。)

苛立ちを紛らわせるように荷物を漁り、ウェインから褒美として受け取った三本の高級魔薬を取り出した。

既に蓄積は終わっている。

必要なのは“引き金”だけ。

本来なら自然突破を待ち、魔薬は部下のために温存したかった。

だが――

(もう待てる状況じゃない。エレナに一泡吹かせるにも、今が好機だ。)

フィルードは一本目の魔薬を口に含み、噛み砕く。

苦味――だがすぐに腹の底から力が溢れ上がる。

急いで座り、瞑想に入る。

体内で反発し合う魔力の奔流。押しつぶされそうな圧迫感。

魔薬の力が尽きかけた時、まだ何かが足りないと感じた。

(二本目だ……いく!)

二本目を飲み込むと――

“カチッ”

何かの枷が外れる手応え。

フィルードはすぐさま魔晶石を両手に掴み、吸収を加速させた。

魔力の質が変化し、渦のように体内で安定し始める。

瞑想を終え、ふぅと目を開けた。

箱には一本だけ残っている。

「……高いんだぞ、これ。」

顔をしかめつつも、内心は勝利感で満ちていた。

魔力は濃度が上がり、制御も滑らかだ。

最低級魔法なら三十回。

中級の全力なら十五回。

さらに、威力は以前の三割増し――

(これなら……十分だ。)

フィルードはゆっくり立ち上がる。

(反撃の時間だ。月は暗く、風は強い。絶好の条件だな。)

彼は気配を消し、そっとテントを抜け出した。

向かうは――エレナのテント。

巻き上げ戸を僅かに開けた瞬間、エレナが鋭く反応する。

「誰?」

答えず、フィルードは大胆に飛びかかった。

素早く転がって避けるエレナ。

フィルードは魔力で加速し、その身を抱きしめる。

滑らかな感触――

次の瞬間、エレナが叫んだ。

「くそっ!なんで服を着てないの!」

「……は?」

フィルードは思わず手を離した。

エレナは急いでベッド脇に転がり、身体を隠す。

フィルードは顔を覆った。

「見てない、何も見てない。」

「覚えてなさい!今日こそ終わりよ!」

エレナは服を乱暴に着込み、飛びかかってくる。

(ちょうどいい。実力試験だ。)

二人は魔力を激突させた。

衝突は三度。

互角――だが、エレナの魔力が尽きかけているのが分かった。

(俺の瞑想法は通常より一割濃厚。これが差になる。)

汗だくのエレナを見下ろし、顎を掴む。

「どうした。魔力切れか? じゃあ――お会計の時間だな。」

エレナは冷たく鼻を鳴らした。

「あなたの瞑想法、普通じゃないわね。ほんと、つまらない男。女相手に張り合って喜ぶなんて器が小さい。」

フィルードは肩をすくめた。

「お前、見た目以外に女らしいところあるか? 暴力の度合いは男より男らしいぞ。」

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