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傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第四巻 商人から領主へ ――選ばされた支配

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第141章 聚魔珠の主

フィルードは、目の前に積み上がる物資の山を見て、思わず目を細めた。

その量は「豊か」という言葉では到底足りない。

金貨はおよそ十四万枚。

食料は数千万ポンドと推定され、正確な統計すら不可能。

魔晶石は五百個以上で、少なくとも十万金貨の価値。

低級魔薬は六百株、中級魔薬は百株、高級魔薬は二十株、

さらには上位魔薬が三株。

(……これはもう、国の財務省レベルだろうが)

傍らの二人の子爵も呆れたように嘆息し、

「魔薬だけで十二万金貨は確実でしょう」と説明した。

武器も充実していた。

中でも最も価値があるのは“上位の両手剣”。

三万金貨の評価がつくそれは、王国でも滅多に市場に出回らず、

代々の家宝として扱われるような代物だった。

その他の魔法武器は十二点。

四組の鎧、二本の片手剣、三本の巨大両刃斧、三本の弓。

エレナから奪った魔弓と同格か、それ以上のものも混じっていた。

(……こいつ、本気で戦争の準備をしていたんだな。

あれこれ蓄えて“北方に独立勢力でも作るつもり”だったとしか思えん)

さらに、魔法の品が六点。

そのうち、一点を見つけた瞬間、フィルードは思わず動きが止まった。

――峡谷で見た聚魔珠(マナ・オーブ)と瓜二つ。

ただしサイズは小さい。

それでも、その存在価値は揺るがない。

(まさか……ディオ家の先祖は“初級宝物庫”を発見していたのか?

あり得る。いや、むしろそれ以外に説明がつかない)

フィルードは表情に出さぬよう注意しながら視線をそらした。

ウェイン侯爵はオーブを見つめると、

珍しく露骨な欲望の色を浮かべ、指先で丁寧になでた。

そして振り返り、フィルードを手招きする。

フィルードが小走りで近づくと、

侯爵がいる建物は、内城の五分の一を占める巨大施設だった。

青石の壁で囲まれ、上部は巨大な網状の屋根が張られている。

(……温室か?

いや、構造は似ているが、守り方は軍事施設そのものだな)

建物の中央に聚魔珠が置かれ、

周囲には魔植がぎっしりと植えられていた。

残り五つの魔法品は、人工の“聚魔陣”だった。

ダービー城周囲に配置され、囲壁と兵站施設として活用されている。

(やれやれ……獣人と結ぶまでもなく、

この規模なら独立を狙えると本気で考えたわけだ)

ウェイン侯爵は聚魔珠を指しながら言った。

「フィルード団長。これが何か、分かるかね?

周囲の壁も、網も、すべてはこれを守るためのものだ。」

フィルードは即座に“知らないふり”をした。

「申し訳ありません、存じ上げません。ただ、

中に入った瞬間に魔力の濃度が大きく増したのは感じました。

周囲に植えられた魔薬とも関係があるのだと……」

ウェイン侯爵は満足げにうなずいた。

「その通りだ。賢い若者だな。

これは聚魔珠と呼ばれ、人類が作ったものではない。

魔法文明時代の遺産だ。」

フィルードは心の中で小さく震えた。

(……やっぱり来たか。確信した)

侯爵は続ける。

「これを持つ伯爵だけが、真の“上位伯爵”だ。

その力は他の伯爵をはるかに凌ぎ、

王国でさえ下手に手出しできなくなる。

ディオ伯爵がまさにそれだった。」

疑問を抱えつつも、フィルードは表情に出さず、

あくまで“好奇心旺盛な若者”を演じ続けた。

その他にも、城内不動産、家畜、魔法書籍など、

統計不能な資産が大量にあった。

(……まぁ、何十年、何百年貯めた資産なら当然か)

ウェイン侯爵は兵士に物資の管理を指示し、

休む暇もなく、簡易な会議を始めた。

侯爵が上座、フィルードと二人の子爵が横に座る。

その下に多くの男爵や騎士が並ぶ。

ウェイン侯爵はゆっくり告げた。

「では、論功行賞を行う。

今回、最も大きな功績を挙げたのは――

フィルード団長と、二人の子爵だ。異議は?」

異議を唱える者などいるはずもなく、

場の小貴族たちは一斉におべっかを並べた。

侯爵が続ける。

「褒賞は三つ。農奴、金貨、領地。

騎士は金貨または人口のみ。

男爵は戦功に応じ、騎士領一つ分以内の土地を得ることができる。

二人の子爵には、隣接するハロルド子爵領から

男爵領を一つずつ割譲する。農奴や奴隷は王国が回収するので、

人を移すか、金貨に換えるかは任せる。」

そして視線をフィルードに向けた。

「フィルード団長。

北方に直轄領がなかったため、やむを得ず――

ハロルド領内の男爵領をそなたに授ける。

獣人戦が終われば、小領地の整理をする。

その際、その領地の農奴と奴隷、

そして前任男爵が残したすべての財産は、

そなたの物として補償とする。」

フィルードは静かに頭を下げながら、

内心では淡々と計算した。

(……これで“足場”は手に入った。

ここからが本当のスタートだな)

PS:この章で、ひとまずこの巻は区切りになります。

ここから先は、主人公が本格的に自立へ踏み出していく流れに入ります。

引き続き応援していただければ嬉しいです。

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