傷のついた目
豪 「にしてもさ、いいよな。あいつ等、どんどん上に行っちゃってさ・・」
仁 「たしかにね。私達、まだ最下層だからね」
保住 「フン、ワシなんて・・・最上階じゃぞ。」
二人 「・・・・誰?」
保住 「・・・・クズが」(ログアウト)
風 「・・・・」 (ログアウト)
淳 「ケッ・・俺なんて、プロローグで出てきただけじゃねぇか・・」
豪 「あっ、淳!ちょっと・・」
淳 (ログアウト)
仁 「・・今の誰?」
「ねぇ、どこに向かってるの?」
最下層で豪は、ある場所へと向かい、どこに向かっているのか上条が問いかけていた。
「どこって、こんなに暗けりゃ、移動にも不便だべ。管理室だよ」
そう言って『危険!立ち入り禁止』と書かれた鉄の扉を開くと、大きな機械が音を立てながら、活動していた。
「やっぱり、空調は効いてるな・・・って事は、ブレーカー落としただけなのか?」
豪は動いている機械を見ながらそう呟き、ペンライトで扉の横にあるブレーカーを照らすと、銃で破壊された機械が映った。
「あちゃ~、こりゃ酷いな・・・」
「だから、こんなとこ来ないで、さっさと上に上がればよかったんだよ・・・」
「おぃおぃ、来て良かっただろ。」
「なんでさ。損してるだけじゃん」
「ここにレジスタンスがいないって事は、すでに逃げ出したのかもしれない。普通、一人か二人いたっておかしくないだろ?」
「それは・・・そうだけど・・・」
「それにこれくらいなら、直せる」
豪は配線が書かれた物を下から拾うと、作業を開始した。
西田に向けて放たれた弾丸は、西田の手によって防がれ、手に持っていた録音機は音を立てながら、壊された。
「くそっ・・・全員、逃げろ!」
藤原は、正也を肩に担ぎ、銃を西田に向けながら、全員にそう言うと由美達は、固まって藤原から離れた。
西田は、ゆっくりと藤原に近づき、藤原は何度も引き金を引くが、緑の液体が飛び散るだけで、歯が立たなかった。
「ここまでか・・・」
悔しさをにじみ出しながら、藤原はそう呟くが、耳元で誰かが囁いてきた。
「何、諦めてんだよ。・・・馬鹿が」
藤原の背中で、意識が朦朧としていた正也が、藤原の胸元についた手榴弾を取り出し、西田に向かって投げた。
藤原は、正也を抱え猛ダッシュで走り、そんな後ろでは西田を巻き込みながら、手榴弾が爆発した。
「これで、死んでなきゃ、本当に成す術無しだぜ・・」
正也の言葉通り、西田は生きていた。
薄暗い闇に包まれ、炎の中が光り輝く場所から、ゆっくりと西田が出てきた。
「マジかよ・・・」
じりじりと寄ってくる西田を見ながら、後ろに下がって行く正也と藤原。
その光景を見ていた仁志は、助けなくてはと思うが、西田が化物になってしまったのを見て、気が引けていた。
「俺も、みんなの前で・・あの人のようになってしまったらどうする・・・」
そう思うと、見ていられないと、仁志は再び物陰に隠れてしまった。
・・・俺には何も力がない。いつも助けられてばかりだ。
『お前は何を迷っている』
「そ、そりゃ、みんなを守る力があれば、俺だって正也みたいに・・・」
『ならば望め』
「・・望む?」
『お前は何を望む』
「み、みんなを守る力・・・」
『ならば、その手に持っているものはなんだ』
仁志の手には、藤原に渡されたナイフが握られていた。
「これは・・人を傷つける道具だ」
『それは持ち主によってかわる。違うか?お前はそれを何に使う』
「みんなを守るために・・・」
『ならば望め・・・思いに俺達は反応する』
「俺達?」
『そうだ。望め。その手に持つ物はなんだ』
「みんなを守る武器」
『ならば、お前の体はなんだ』
「みんなを守る盾だ」
両手を振り上げる西田。そして、死を覚悟した二人は目をつぶった。
振り下ろされた両手は、緑色の腕によって止められた。
「グルルルル・・・」
新たな敵に喉を鳴らす西田。
異変を感じた正也が目を開くと、二人と西田の前に緑の肌を露出させた仁志が立っていた。
「仁・・・志?」
「正也、・・・俺は、もう一緒には行動できない。・・・・だから、じゃぁな。」
仁志は両手を開き力を込めると、手の甲から三本の鉤爪が飛び出してきた。
「はぁぁぁ!!」
仁志は、大きな掛け声とともに、手を振り抜き、西田の胸を爪でそぎ取った。
後ろに飛び退く西田を追い、仁志は猛突進し、壁を突き破りながら、西田の胸に爪を突き刺し、一緒に吹き抜けの中央から二人で落ちて行った。
「仁志ぃぃぃ!」
正也は、開いた穴から吹き抜けの場所を見下ろすが、真っ暗闇の抜きぬけの場所からは、冷たい風と西田の叫び声しか聞こえなかった。
幸助だけでなく仁志まで失った正也はその場に泣き崩れ、藤原は自分の足元に西田のパソコンが置かれている事に気が付いた。
「そんな・・・仁志・・・仁志・・・」
「・・・・人数もかなり減ったな。」
藤原の言葉に正也は、藤原を睨みつける。
「違う。そう言う意味じゃない・・・悪いが、俺も抜けさせてもらう。」
「どういう意味だ・・」
正也の言葉に藤原は、自分の袖を捲りあげた。
藤原の腕には、緑の発疹が出来、すでに肩にまで浸食が進んでいた。
「俺は、下に戻る。・・・もしかしたら生存者がいるかもしれない。それに、君の友達が銃弾も効かないような体で、飛び降りても死ぬようには到底思えないしな」
「・・・・あんたは、食欲に勝てると言うのかよ」
「俺が最後に喰うのは、人の肉じゃない。・・・銀の弾丸さ」
藤原はそう言うと、来た道を歩いて戻って行った。
「残り四人か・・・かなり減ったな」
正也は、生き残った奴を見渡すと、由美と父親と娘の親子しか残っていなかった。
「わ、私にも武器をくれ・・・」
「そこら辺に落ちてんだろ。勝手に拾えばいいだろ」
父親は、正也にそう言うが、正也はそっけない態度をとった。
銃を拾う父親に、正也は安全装置の外し方や弾の装填の仕方を簡単に教えた。
そして、正也はさっさと行くぞと言って、歩きだす。
「あの・・・お名前は?」
銃を手にして顔が強張る父親に由美が声をかけた。
「あ・・・私は、福生 信一郎と言います。・・こっちは、この子はマリです。ほら、挨拶しなさい」
父親に促され、娘のマリは「こんばんわ」と丁寧にお辞儀をしてきた。
「こんばんわ。いくつかな?」
「5歳」
指を五本立てて年を現すマリに「賢いね」と拍手する。
「あの愛想のない奴は、正也って言います。・・あっ、私は」
「知ってますよ。鷲田由美さんですよね」
福井の言葉に「はい」と小さく答える由美。
「すみませんでした。私のせいで皆さんにご迷惑をおかけしてしまって・・・」
「いえ、元を辿れば悪いのはレジスタンスです。でも、今となっては、そのレジスタンスに私達は、かなり救われましたけど・・・」
「えぇ・・・藤原さんも無事だといいんですけど・・・」
管理室の工具箱を勝手にあさり、道具を使って配線をつないでいく豪。
「あぁ~あ、まさか親父に習ってた事が、ここで発揮されるとわ・・・やっぱ工業系に就職しようかな~、教習の単位ちょっとヤバイしな」
「やっぱりね。顔がヤバイもん」
「失礼な。・・・仁だって男みたいな名前じゃねぇか」
「うるさい!」
「それに、ちゃんと教習は取ってんだよ。けど、心理学の方が面白くてな・・・」
「ふ~ん、じゃぁ何か催眠術とか出来るの?」
「催眠術?出来る訳ないだろ。・・・俺がやってんのは、行動の心理学だ。いろんな場面で人はどのように行動するか?とかそんな感じ。」
「つまんなさそうね・・。」
「そうでもないさ。例えばこういう場面で、女性は力のある人物に・・まぁ男とかと一緒に行動を取ろうとするんだ。後ろで文句ばっか垂れながら、俺が配線を直すまで待っていようとする誰かさん、みたくな」
笑いながらそう言う豪の言葉に、無意識に自分の心理を読み取られた気がした上条は、豪に蹴りを入れようと近づいてくる。
「よし、完成!」
豪はそう言って、ボタンを押し振り返ると、そこに上条がいた事に目をギョッとさせた。
「何やってるの?」
「えっ?」
「離れろ!」
豪は、上条を抱き上げ、急ぎその場から離れた。
その瞬間、豪が直していた配線から青い火花が飛び散り、地面に降り注いでいた。
「キャーーー!放せっ!触んな!」
抱きあげられた上条は、豪の腕の中で暴れ、豪は上条を下ろした。
「危なかったぁ~・・・なんで、近づいてくるんだよ」
「それよりも直せるんじゃなかったの?明らかに壊れてるじゃん」
「いいんだよ。あれで、壊れた事を認識すれば、非常電源に切り替わる」
豪の言葉通り、火花は電気の供給が無くなることで出なくなり、代わりに大きな機械が、更に大きな音を立てながら、動き始めた。
すると、薄暗かった廊下に光が戻り始めた。
管理室から出た二人は、何故かハイタッチを決め、移動を開始した。
「ねぇ、厨房を抜けた方が近道じゃん。なんで厨房に行かないの?」
「いや、厨房は止めた方がいい・・・。死体が一体転がっていた」
「えっ・・・」
明かりが回復し、赤い絨毯とクリーム色の壁紙が貼られた一般客が通る道を歩きながら、豪は厨房の事を話し、上条は思わず息をのんだ。
「そんな・・・過激なレジスタンスだと言うの?」
「仁の話と俺の出来事を合わせればそう言う事に、なるだろうよ・・・。今から抜ける会場ももしかしたら、そう言う事になっているかもしれない」
豪は、大きな扉の前に立ち、ドアノブを握り、上条の顔を確認した。
「・・・覚悟はいいか?」
豪の言葉に上条は、手で胸元の服を握りながら小さく頷いた。
豪は、押し戸の扉を開くと、そこには想像していたよりもはるかに酷い光景が待っていた。
「マジかよ・・・」
豪はそう呟き、上条は思わず豪の背中に隠れ、目をつぶった。
会場に敷かれた赤い絨毯は、飛び散った血が固まり、所々茶色く染まり、人の物と思われる肉片が足元にまで、転がってた。
「一体、何があったって言うんだ・・・」
会場の上には胸にナイフが付き刺さったレジスタンスと思われる男が倒れ、客以外にもレジスタンスの死体まで転がっていた。
「まさか・・・中央政府が介入したのか?」
「知らない!知りたくない!ねぇ、早くここから出よう!」
豪の背中にしがみ付く上条は、目を閉じてはいるが、死体特有の生温かい匂いに耐えきれず豪に会場からでようと叫ぶ。
もちろん、こんな場所に豪だって長くは居たくない。そう思って向かいにある出口へと足早に向かい、会場の外に出るが、そこにもまだ、人の死体が大量に転がっていた。
「・・・こりゃ、電気をつけない方が良かったかもしれないな」
会場近くのエレベーター付近には、逃げ惑った人達が動かないエレベーターに駆け込もうとしたのだろう、エレベーター付近に大量の死体が積み上げられていた。
「・・・上の階に上がってから、エレベーターを使おう。・・それでいいな?仁」
「・・・うん」
上条は相変わらず、豪の背中にしがみ付き、目を開こうとしないが、それに対して豪は何も言おうとはしなかった。
だが、豪は下に転がる死体に疑問を持ち始めていた。
肉片に変わった多くの死体の色は、肌色と赤い色の二種類があるが、首が無くなっていたり、胴体を切り裂かれた死体は、緑色をしている。
「どうなってるんだ?」
どうやら、本当にただ事ではないと悟った豪は、下に転がる銃を手に取った。
使い方はわからないが、持っていないよりはマシだろう。
豪は銃を構え、引き金の上の部分にある安全装置を外し、撃鉄を引いた。
ガチッと音が鳴り、さっきまで抵抗がなかった引き金に、指をかけると軽く押しただけでは、動かなくなっていた。
「仁。ちょっと耳を抑えてろ」
豪はそう言うと、銃を構え上条が耳を抑えている事を確認すると、引き金に力を込めた。
バァン
銃声が静かな廊下を木霊し、豪の両手には強い衝撃が走った。
「うわっ!」
「キャァ!」
思わず後ろに仰け反る豪は、後ろにいた上条を巻き込んで倒れた。
「いってぇ・・・こんな衝撃が走るんだ。」
四つん這いになりながら豪は目を開くと、豪の下には仰向けに倒れようやく目を開いた上条が、上に跨る豪に思わず頬を赤く染めていた。
気まずい空気が流れ、互いに口を開かないでいると豪がようやく口を開いた。
「いや・・これは所謂、不可抗力というもので・・・」
豪のいい訳に対し、上条は豪の股を蹴り上げ、豪は横に倒れ、上条は汚れた服を払いながら立ちあがった。
「まったく、男っていつ豹変しても、おかしくないのね」
「いや・・・だから、誤解だって・・・」
急所を抑え、地面に倒れ回復を待つ豪を見て「馬鹿」と呟く上条。
「さて・・・そろそろ、移動しますか!」
豪は声だけは立派に張り上げるが、未だに極真空手三段の猛者に蹴られた急所を庇うように、内またになっていた。
「ねぇ、私ちょっと用事があるんだけど・・・」
「えっ?何さ」
「いや・・・だから・・」
「だからなんだよ」
「・・・トイレよ!トイレ!」
「あっ・・・ごめん」
「やだ!謝んないで!なんか負けた気分になるから!」
さすがに、ここの階で用を足す事は出来ないと思い、上の階に上がる二人。
「いい?絶対に入ってくんなよ!」
「入らねぇよ・・・さっさと行ってこい」
入口の前で待ってろと言われ、豪は壁に寄りかかり、上条が来るのを待った。
「ねぇ!居るよね!」
トイレの奥から上条の声が聞こえてくる。
「あぁ!居るよ!」
「絶対にどっか行こうとか思わないでよ!」
「思わん、思わん」
「ねぇ居る?」
「何回、聞くつもりだ!この野郎」
「じゃぁそこでなんか歌でも歌ってろ!」
「えぇ~歌?」
「はい、3,2,1」
「えぇ、えぇっと・・・新製品が安いっ、ケ~ス電光」
「・・・なんでCM」
「歌なんてしらねぇんだよ・・・あっ、これなら知ってるぞ」
そう言って豪は、さっき上条の上に跨り襲いかかるような誤解を招いたばかりだと言うのに、速いテンポの口調で、女性を脅すような歌詞の歌を歌い始め、用を済ませた上条から裏拳を喰らった。
「死ね」
端的にそう言われ、心が傷ついた豪。
「うわぁぁぁぁぁ・・・来るなぁ!」
そんな悲鳴が、二人の耳に入り、声のする方へと目をやった。
廊下の曲がり角からは、銃声とそのフラッシュが映し出され、フラッシュの陰に映し出された映像は、銃を連発する男に四足歩行の何かが食らいつく映像だった。
男の断末魔は、喉元を食いちぎられ止まり、二人の耳にはクチャクチャと気色の悪い音が届いた。
「えっ・・・何、今の・・・」
「わからねぇ・・・俺の後ろに下がってろ」
豪はそう言い、腰に差してあった銃を手に取ると、音のする方と銃口を向けた。
しばらく、気味の悪い音が鳴り響き、二人は恐怖と隣り合わせになり始める。
音が止み、曲がり角から現れたのは、緑の肌、四足歩行で人の形をした化物だった。
豪は、手に握った銃を強く握りしめ、化物に狙いを定める。
化物は目の前に二体の喰い物がいる事に気が付き、顔をニタつかせながら走り出した。
口からは、先ほど喰らっていた男の物だろうと思われる服が口から垂れ、豪は向かってくる化物に引き金を引くが、弾は全く当たらなかった。
「くそっ!・・・仁、離れてろ!」
後ろにしがみ付く上条を突き放し、豪は飛び込んでくる化物に立ち向かおうと、銃を投げ捨てた。
飛び込んでくる化物をそのまま巴投げに持ち込み、化物は仰向けに倒れた。
「ヒィッ・・」
今まで見た事のない物を目の当たりにした上条は、叫び声を上げ、その場を離れようとした。
背を向けて逃げようとする喰い物を追いかけようと化物は、走り始めるが、豪は走り出す化物の髪を後ろから引っ張り上げた。
化物の顎が空くのを確認すると、豪は首に腕を回し、化物の首を締め上げた。
「ギャオォォ・・」
「くそっ、落ちろ!」
化物は、次第に泡を吹き始め、豪は化物をうつ伏せにするように自分も倒れ込み、さらに強く締め上げた。
化物は痙攣を起こし、意識を失い大人しくなった。
「なんなんだ。こいつは・・・」
「豪、ごめん。大丈夫?」
上条は、落ち着きを取り戻し、豪に駆け寄ってきた。
そして下で伸びる化物を目にして「なんなの、これは」と呟いた。
「わかんねぇ・・・」
「すごいな・・・・まさか、最下層にまだ生存者がいて、その化物を素手で倒してしまうとは・・・」
そう言いながら現れたのは、頭に迷彩柄のバンダナを巻いたレジスタンスだった。
「レジスタンス!」
豪は、急ぎ下に転がる銃を拾い、男に銃を向けるが、男はその前に壁に寄りかかりながら、倒れた。
頭に巻いたバンダナからは、血がにじみ出し額を伝って流れ落ちていた。
豪が駆け寄り、男の腕と顔の半面が緑色に変色している事に気が付いた。
「なんだこれは・・・」
「触るな!・・・感染するかもしれない」
男の警告に豪は、伸ばしていた手を止めた。
「あんた、レジスタンスだろ?」
「・・・あぁ、ブルーソルジャーの藤原だ」
「何があったんだ。これはお前達がした事なのか?」
その問いかけに、藤原は心配そうに見てくる二人を疑問に思った。
「お前等・・・・何も知らないのか?」
本当に何も知らない二人に、藤原は何が起こっているのかを説明した。
浅い呼吸を繰り返す藤原は、すでに手の施しようのない怪我を負い、自分の命が残りわずかだと悟った。
「とにかく、そのウイルスから逃れるためにも、一刻も早くここから脱出しろ・・・・俺なんかが言えた義理じゃないが、無事を祈っている。・・・腹が減っても何も食うな。化物になっちまうぞ・・・」
「あんたは、どうするつもりだ」
「俺は、この痣が完全に俺を喰い散らかす前に、生存者を見つけようとしていたが、おそらくお前等が最後だろう」
藤原は、そう言うと一呼吸入れ「腹が減った」と呟き、その言葉に思わず豪と上条は一歩離れた。
そんな二人の行動を見て、藤原は軽く鼻で笑った。
「大丈夫だ。・・・俺が最後に喰う物は銀の弾だって決まってるんだ」
藤原は、手に持っていた銃を口に咥えた。
「・・・・目に傷になるぞ。向こうを向いてろ」
その言葉に上条は、豪の背中に隠れるが、豪は目を放そうとはしなかった。
「いいのか?」
「いいさ・・ちゃんと見届けてやるよ」
藤原の問いかけに豪はそう答えると、指で自分の顔にある目の傷をなぞった。
「・・・・俺は、もう傷持ちさ」
豪の反応に、藤原の表情は緩み「ありがとよ」と呟くと豪達がいる廊下に一発の銃声が鳴り響いた。