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今日の敵は明日の・・・

「久しぶりだな、豪」

「いや、いつもの適当スペースは今回、無しなのか?」

「うるせぇ!そんなスペースもともと存在しねぇ」

「大体、なんだその格好は!頭に剃り込みなんか入れやがって!カッコ悪いし、俺はお前の親になんて報告すればいいんだ!」

「だぁぁぁぁ!もぅ、相変わらず、その能天気振りは変わらねぇみたいだな!マジで腹立つ!」

豪は怒り狂う淳を放置して瓦礫から立ちあがり、大きな化物に目をやっていた。

「おぃ、淳。そんな事よりも、あの化物をどうにかして、倒さねえと」

「あぁ?あのビックフットは白服の坂野って奴の飼い犬だよ」

「白服の・・・だったら、なおさらだ!」

「させるかよっ!」

刀を抜き、ビックフットに向けて走り出そうとする豪に淳は再び攻撃を仕掛けてきた。

豪は思わず淳の攻撃を受け止め、瓦礫に向かって淳を放り投げた。

淳は体を捻り、着地を決めると豪に勝ち誇ったかのように笑いかけてきた。

「淳!さっきから何しやがる!」

「あのビックフットはこれから自衛軍のヘリポートを崩しに行くんだ。邪魔はさせねぇよ」

「何考えてやがる!正也と由美がいるかもしれないんだぞ!」

「ハッ、俺を殺そうとした奴だ。知った事か!・・・どうせお人よしのお前の事だ。白服の考えに賛同しないからこんな事になってんだろ」

「お前は賛成だと言うのか!」

「当り前だ!だから、てめぇを殺す!」

豪に向かって勢いよく飛び出してきた淳の腹に豪は「ふざけてんじゃねぇぞ!」と叫びながら見事な蹴りを入れた。

鳩尾に見事に入った淳は腹を抱え、その場に倒れた。

「がっ・・・豪、てめぇ・・・」

「お前の相手をしてる暇はない」

豪は倒れる淳にそう言い放ち、ビックフットに向かって走り出した。

「仁、マリとポチを連れて、先に上に行ってろ!」

上条は立ち去る豪に向かって「わかった」と言い、倒れる淳に全く見向きもせずに立ち去り、豪に全く相手にされなかった淳は「ちきしょぉぉぉ!」と叫び声をあげていた。














~数分前~


大きな音と共に正也達が登っていた壁が大きく揺れ、思わず由美がロープから手を滑らせてしまった。

花形隊の一人が落ちてくる由美の腕を掴み、由美とその花形隊の一人は宙刷り状態になった。

「由美!」

「大丈夫だ。そのぐらい、俺たちならすぐに体制を整えれる」

下で由美が宙づりになったのを目にし、正也が叫ぶが花形がそんな正也をなだめた。

「大丈夫ですか、とりあえず落ち着いてください」

宙づりになった隊員は由美を落ち着かせようと声を掛け、由美も「はい」と返事をした。

袖がめくれ、掴んでいた由美の腕に緑の発疹がある事に隊員は気がついた。

二人の間でしばらくの静寂が続いた。

隊員は腰から銃を抜き取り、由美に向けようとするが、その前に由美が動いた。

掴まれていた腕を使い、足を振り上げて隊員の頭を蹴り飛ばした。

隊員の頭は剃り立った壁に何度もぶつかりながら下に落ち、上から飛んでくる隊員の弾丸を避け、壁の一部を壊すと由美はそのまま姿を消した。


由美の名前を叫び続ける正也を花形は捕まえ、急ぎ上に登り、鯉沼と秋葉は顔を見合わせ、秋葉がロープ伝いに下に降り、由美が開けた穴から由美を追って入って行った。






~現在~

由美の後を追って走っていた秋葉は、吹き抜けのロビーで「ふざけてんじゃねぇぞ!」という豪の声を聞き、下を見下ろすとそこにはビックフットの姿と、そのビックフットに向かって単身で突っ込んでいく豪の姿を見つけた。

「至難・・確実」

秋葉は由美を後回しにし、下に飛び降りて豪の前に躍り出た。

「秋葉・・・」

「アホかお前は無知にも程があるぞ」

「でも!」

「奴の肩の上を見ろ」

秋葉の言葉に豪はビックフットに目をやるとそこには、ショットガンを持った男と白髪の男がいた。

「香田と坂野だ・・・あいつ等は同じ町出身でな・・化物とショットガンは無理がありすぎる」

「クッフッフッフッフ・・・ならば俺にあの巨人は任せて貰おうか」

「あれ・・・築地さん。あの瓦礫は」

「私が吹き飛ばしました・・・まったく、なんなのこの狂った巨人君は?保護する立場の事も考えてよね」

寿はため息交じりに呟いた。

「私と巨人君で、時間稼ぎしてあげる。だから、香田を倒しなさい」

「いや、普通逆じゃないですか?」

「文句なら巨人君に言いなさい」

「豪・・・邪魔するなら貴様も殺すぞ」

築地の言葉に豪もため息を漏らし「わかりました」と答えた。



「じゃ、行ってくる」

ビックフットの肩に乗っていた香田は坂野に言い、豪と秋葉の前に降り立った。

「さてと、親父の腕を切り落とした実力、見せてくれよ」

「そっちこそ、死んでから後悔するなよ」

ショットガンを構える香田は、目の前で刀を抜く二人に話しかけ、豪もそれに応えた。


ショットガンの弾が何度も地面を削り、豪と秋葉はそれを何度も回避しながら、香田に近づき刀を構えるが、香田は刀を振り下ろされる前に、体を密着させ、打撃を加えてきた。

「秋葉、両翼に展開する!」

肘鉄を食らった豪は腹を摩りながら、秋葉に言い、秋葉はそれに応え、豪と秋葉は香田の左右に展開した。

秋葉が振り下ろした刀をショットガンで受け止め、後ろから襲いかかってきた豪に足を入れた。

だが、豪はモロに食らっておきながら、力任せに刀を横に振り、香田はそれを避けた。

「ハハッ、やっぱつえーな!でも、まだそんなんじゃ駄目だね」

香田は秋葉の刀を横に流し、豪に銃口を向け引き金を引いた。

弾丸が豪の顔の横をかすめ、そんな豪の後ろからはビックフットが踏みつぶそうと豪に襲いかかってきた。

豪は横に転がり、ミンチにされるのを回避した。

「くそ~築地さんの奴・・・時間稼ぎすらしてないじゃないですか・・・」

威勢よく飛び出した築地は、見事にビックフットのパンチを食らいまるで、アニメのようにテーマパークの外に吹き飛ばされ「ハーハハハハハ」と笑いながら星空に消えて行った。

「面白い奴もいたもんだ。あのくらいじゃ死ないと思うがな」

「そりゃあんたもだろ」

肩に乗っていた坂野は吹き飛んで行った築地を思い合掌していると後ろから寿が銃の引き金を引き、炎に包まれた坂野はビックフットの肩から落ちて行った。

「でも、その怪我じゃしばらく動けないでしょ。・・・しばらくの間、そこであんたのペットが切り刻まれていくのを見てなさい」

体を包んでいた炎は次第に収まり、皮膚が黒ずんだ坂野は、仰向けにビックフットの肩に乗る寿を睨みつけながら、咳をもらすと黒い煙が坂野の口から出てきた。

操り糸の切れたビックフットは、突然大声を出し、辺り構わず壊し始め、吹き抜けの階にいた白服にも被害が出ていた。

暴れ出したビックフットの肩から寿は飛び降り「後はよろしく」と上条達の気配を追い、姿を消した。

「あちゃ~、遂に本性出ちまったか・・・おぃ、一旦、勝負はお預けだ」

香田は、未だに武器を構える二人に言い、豪と秋葉は武器を下ろした。

「ギャォォォォォ・・・」

ビックフットは、同じ視線の高さにいる白服達を大きな腕で振り払い、思わず白服達はその場から飛び降り、豪達に合流してきた。

「おぃ、お前等。今は仕事の事は忘れろ!まずはこのデカ物を喰い散らかすぞ!」

香田の指示で白服達は「おぅ」と声を出し、それぞれの武器を構えた。

「弓矢隊、奴の目を狙え!・・銃を持ってる奴!奴の手足の指を狙え!奴の指を引き千切るぞ!・・・刃物を持ってる奴!あいつのぶっといアキレス腱をぶった切れ!中でも日本刀を持っている奴は、黒服ナンバーⅤの所に行け!」

香田は、白服に的確な指示を出し、自分もビックフットの手の指を狙い、引き金を引いていた。


秋葉の所にやってきた白服はたったの二人だった。

「おそらく、アキレス腱を斬る事は無理だ。残念な事に、あいつは俺達ど同様、いや、それ以上の超即再生を持っている」

香田が素早い動きで、ビックフットの体を登り、顔に到達して大きな目ん玉に目がけて引き金を引いた。

ビックフットは潰れた目を抑えながら、悶え苦しむがしばらくすると潰れたはずの目は元通りになり、抑えていた手も放し、下で構えていた白服達を捕まえ握りつぶしていた。

「だが、首と胴体を切り離せば、俺達と同じで奴も死ぬ」

「・・・つまり、あの太い首を切り落とせって言うのか?」

「そうだ」

「秋葉、さすがにそれは無理だって。あの太さの首を一太刀で斬れる訳がない」

「だが、やらなきゃならない。・・・まず、俺を先頭に奴に近づく、そして、俺が奴の首を斬ったら、再生される前に次にお前が飛び出せ」

そう言って秋葉は白服の奴等に指示を出し「最後は豪、お前だ」と付けくわえた。

「チャンスは一度きりだ。そして、誰も失敗は許されないからな」

秋葉は全員にそう言うと「逝くぞ!」と声を出し、秋葉が特攻していった。

豪達は秋葉の後を追って走り出し、秋葉達が動いた事に気がついた香田は白服達に一斉攻撃を命じた。

頭を集中的に攻撃されるビックフットは針が刺さる程度の痛みしかなかったが、それが数か重なるとかなりの物で思わず腕で顔を隠した。

その瞬間、秋葉は勢いよくジャンプしビックフットの緑色をした大きな首を斬り付けた。

四分の一を斬り、ブックフットの首からは緑の血が噴き出し後に続いた白服の一人も奴の首を斬り、二分の一にまで達した。

だが、飛び掛かってくる豪達に気付いたビックフットは腕を振り下ろし、白服の一人を叩き潰してしまった。

「だぁぁぁ!斬れろぉぉぉ!」

すでに飛び上がっている豪に選択肢はなく、刀を持った腕を大きく横に振り、肉の感触が豪の体に染み渡ってくる。

振り抜いた豪の刀はビックフットの首を切り落とす事が出来なかった。


ビックフットはぐらつく頭を両手で抑え、再生をし始めようとする。

「くそっ!」

豪は悔しながらビックフットの大きな背中を見ていると、奴の首の付け根に何かが刺さっているのが見えた。

「あれは・・・」

豪はビックフットの背中に刀を突き刺し、背中を登り始めた。

首の付け根に刺さっていたのは三本の鉤爪だった。

「・・・・仁志」

豪は、奴の首から鉤爪を抜き取り、再生をし始める前にその鉤爪で残りのつながっている皮の部分を斬り落とした。

再生し始めていたビックフットの首は、頭の重みで繊維がブチブチと千切れ始め、胴体から切り離された。


斬り落とされた頭は、仰向けに倒れる坂野に落ちてきた。

「あれ?」

ニヤついた顔からそんな言葉を最後に出し、坂野は巨大な顔の下敷きになって潰れた。

「坂野・・・」

坂野の最後を見た香田は、頭を失ったビックフットの肩に立つ豪を見上げた。

頭を失ったビックフットは、しばらくの間、立ち尽くしていたが次第にバランスを崩し始めた。

前に倒れ始めるビックフット。そして、その倒れる方向にはショットガンを持った香田が立っていた。

「馬鹿野郎、お前、避けるよな!?」

豪は、ビックフットの肩にしがみ付きながら、下にいる香田に声を荒げた。

「イヤだね」

香田はショットガンを肩に担ぎ、倒れてくるビックフットを見ながら、豪に言ってきた。

大きな地鳴りがテーマパークに響き渡り、香田はビックフットの下敷きとなって消えた。


「何なんだよ・・・こいつ等」

豪は倒れたビックフットの背中から刀を抜き取り、下敷きになった二人の思考に理解できなかった。

「心身共有・・・片方がいなくなれば、その片割れも後を追う。そう言う奴等だ」

「・・全然、わからねぇよ」

「あぁ、共生者の思考回路は、他人には理解できない・・・仕事再開」

秋葉の言う通り、その言葉を合図に、矢が二人に向かって放たれ、豪達は飛んでくる矢を刀で叩き落として行った。

「だぁぁ!もぅ!・・・何なんだよ!さっきまで協力してたってのに!」

「今日の味方は明日の敵」

「まさしくその通りだ!唯一違うのは、まだ日を跨いでいないって事ぐらいだ!」

豪は刀についたビックフットの血を振り払い、白服達に襲いかかって行った。















~おまけ~


豪  「なぁ、攻めの反対ってな~んだ?」

上条 「えっ?守り?」

豪  「おぅ、その通りだ」

上条 「えっ?何さ、どうかしたの?」

豪  「いや、お前も誰かに聞いてみ」

上条 「はっ?・・・まぁいいか、風さん。攻めの反対は?」

風  「・・・・防御」

上条 「ですよね・・・何が面白いんだろ・・・正也さん、攻めの反対は?」

正也 「はぁ?守りだろ・・・お前、一体何を期待してんだ?」

上条 「いや・・・別に、聞いてみただけです」

カリン「そう言うのはね、由美ちゃんに聞いてみるべきよ」

正也 「はぁ?なんで、由美?」

上条 「まぁ、一応、聞いてみますけど・・・由美さん、攻めの反対は?」

由美 「えっ?受け」

正也 「受けぇ!?」

由美 「じゃない!守り!」

上条 「あぁ~・・・なるほど」

正也 「なぁ由美、受けってなんだ」

由美 「何言ってんの!守りよ、守り!」

ポチ 「ワン」

由美 「うっさい、雑種!」

マリ 「ねぇ、ポチ、受けって何?」

上条 「ヒィィィ!言うな、ポチ!絶対に言うなよ!」

正也 「なぁ、受けってなんだよ」

由美 「うっさい、裁縫部!」

上条 「あっ、小谷野さん。攻めの反対は?」

小谷野「はぁ?・・・受け」

全員 「・・・・・」

小谷野「えっ?何?」

淳  「お前、本当に中央出身か?」

小谷野「あぁ・・・守りだ。間違えたな」

由美 「あぁ~見込みあるわね、彼」

上条 「あっ、築地さん、親父さん。攻めの反対ってなんですか?」

築地 「あぁん?・・・守りだろ」

親父 「フッフッフッフ・・・守りだな」

全員 「えっ・・・」


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