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新たな共生者

豪  「はい・・・・というわけで、なるべくテンションを低くして、やっていきましょう」

淳  「おぃ、お前どんだけ、前回の事で傷ついてんだよ・・・」

豪  「だから・・・俺は腹黒くないし・・・それなのに、未だに仁も由美も口きいてくれないし・・」

淳  「ハァ・・・これだからお前は駄目なんだよ」

豪  「どうせ、俺はガラスのハートですよ・・・」

淳  「いや、ガラスなんかじゃねぇよ。お前はチキンだ」

豪  「おぃおぃ、誰が鶏肉だ!・・・お前なんかミミガー的なマイナーな喰いもんだろうが!」

淳  「いや、そう言う意味じゃなくて・・・って誰がミミガーだ!ミミガー舐めんなよ!なまら美味いだろうが!」

正也 「おぃおぃ、お前等二人は、合びき肉みたいな物だろうが」

豪と淳「黙れ、煮卵!」

正也 「なんでだよ!煮卵ってどんな存在だよ!・・・ラーメンに入れたら美味いだろうが!」

淳  「馬鹿、単品で喰ってみろ。口の中がヤバイ事になるぞ」

豪  「つまり誰かが横にいないと、目立たない存在って事だよ」

正也 「はぁあああ?意味わかんねぇし!」

上条 「ねぇ、だったら私は?」

三人 「・・・・・ワカメ?」

上条 「なんで?」

豪  「いや、・・・よくわからないけど、なんとなく」

淳  「あ~あ、つまりどうでもいい存在だって、遠まわしに言っちまったよ」

豪  「いや・・そう言う訳じゃなくて・・」

上条 「うわっ、サイテー」

保住 「なら、ワシなら高級食材のなにかだろうさ」

淳  「いや、見た目からして食用ガエルだろ」

保住 「・・・クズが」(ログアウト)

上条 「あ~あ、保住さんって結構、傷つくんだよ」

淳  「はぁ?関係無いし・・つーか、どうでもいい」

山田 「なぁ淳ちゃん、だったら俺は?」

淳  「・・・玉ねぎ?」

山田 「あぁ、駄目、玉ねぎ苦手」

淳  「じゃぁ、キャベツ」

山田 「いや、野菜系全般駄目なんだよね」

淳  「じゃあ肉類?」

山田 「いや、喰い物全般がちょっとね・・・」

淳  「お前、一体、何食ってんだ?」















一発の銃声が鳴り響き、しばらくの静寂がその場を包み込むが、そんな空間を淳は引き裂いた。

「な・・・いきなり何しやがる!」

「・・それは今、握っている物を見てから言うんだな」

正也は銃を下ろし、訳のわからない淳は知らぬ間に握っていた右手を開いた。

淳の握られた手の中には正也の撃った弾丸が入っていた。

「何だよ・・・これ」

「間違いないな」

戸惑う淳を横に、正也は淳に銃を向け、後につられるように小谷野も淳に銃を向けた。

「正也・・・こいつ、発病したのか」

「あぁ、鯉沼が言っていた。自覚症状なしで発病する奴がいると・・・だが、まだ発狂する可能性も捨てきれない」

「発病?発狂?・・・何言ってやがるんだ!俺にもわかるように説明しろ!」

「・・・淳、腹は減ってないか?」

「あぁ?さっきもその質問したな!・・・あぁ、もうペコペコだよ!腹減って死にそうだ!これでいのか!」

その言葉にホテルにいた連中の顔は一気に引きつり、冗談半分で答えていた淳は全員の顔色を見て、しまったと後悔していた。

「・・・縛ろう。鯉沼達が合流してから、判断してもらおう」

「同感だ」

小谷野は、銃を向けたまま正也にロープを手渡し、正也はロープを片手に淳に近づいて行った。

「おぃおぃ、待てよ・・・正也、何考えてやがる」

「いいから、今は黙って俺の指示に従え」

二人から銃を向けられ、無意識に両手を上げる淳に正也はジリジリと歩み寄ってくる。

淳が後ずさりをしようと足を少し動かすだけで「動くな!」と小谷野の厳しい声が飛んできた。

「おぃおぃ、この状況をよく考えろよ!指示に従えだ?従える訳ないだろ!正也、お前は俺を殺そうとした!それに、銃を突きつけて俺を縛り上げようとしている」

「今のお前は危険な状態にあるんだ!だから、お前を保護しておく必要があるんだ」

「あぁ、今この状況が危険な状態だよ!」

互いに譲らす銃を突きつけられた淳は動けず、正也は化物と化した淳に動くのを躊躇していた。

硬直状態が続き、そんな中「淳ちゃん!」という声が正也と淳の間に入った。

「山田」

「淳ちゃん、先に行け後から追いかけるから」

割って入った山田の片手にはナイフが握られ、そのナイフはもう片方の手で捕まえているマリの喉元に突き付けられていた。

「お前等!動くなよ、俺が狂ってる事わかってんだろ?・・・マジでやっちまうぜ」

山田はナイフを強く握りしめ、マリは今まで優しかった山田の態度が一変し、冷たい物を喉元に押し付けられ、恐怖のあまり悲鳴すらあげれないでいた。

淳は山田の行為に甘え、正也達から背を向けて走り出した。

「淳!待て、行くな!」

「動くなって言ってんだろうが!」

「止せよ、山田!お前だってわかってんだろ?俺達は引き金は引けない。お前だってそのナイフは動かせない!」

「確かにな!でもよ、こっちはナイフだぜ?この硬直状態が続いて、俺の腕が疲れてきたらうっかりやっちまうかもしれねぇぞ」

歯を食いしばり悔しさをにじみ出す正也と小谷野。そして、山田はゆっくりとマリを連れて後ずさりを始めた。

その時、突如として地面が大きく揺れ出した。

その揺れの大きさは地面が大きく割れる程で、全員が地面に手を付き揺れが収まるのを待った。

だが、山田のすぐ後ろで地面が大きく割れ足を取られた山田とマリは地割れの中に吸い込まれていった。

マリの名前を叫ぶ由美の声が地面が揺れ動く中、響き回った。


「・・・・淳を追うぞ」

正也の言葉に崖の前で蹲っていた由美が正也を睨みつけた。

「俺達には力が必要だったんだ」

「正也の言う通りだ。ホテルの時のように銃がそこ等じゅうに転がってるのと訳が違う。残弾数も残り少ない」

何も反論しない由美に正也が行くぞと促すが、由美は首を横に振った。

「・・・行くなら二人で行けばいいじゃない」

「死にたいのか?」

「死にたくは・・・ない。・・でも、もぅ誰を信じていいのかわからない!何なの!なんでこうなるのよ!」

その場で地団太を踏み始め、二人の事が目に入っていないらしく由美は頭を抱えて蹲ってしまった。

「・・・駄目だ。錯乱状態にある」

由美の反応を見て、正也は小谷野に話しかける。

「どうする・・・ここに留まって、鯉沼達が戻ってくるのを待つか?」

「・・・いや、この街だって広いんだ。ここに辿り着ける可能性だってかなり少ないだろう。だったら、淳を追った方がマシだと思う」

「・・・・わかった。まぁ同じ所に居坐るのは得策ではないからな」

二人は錯乱状態にある由美の手を無理やり引っ張りその場を離れ、淳の後を追った。









~数分前~

「・・・おぃ、大丈夫か?仁」

その頃、同じく地割れに巻き込まれた上条を救おうと地割れに飛び込み、上条の手を掴み崖に刀を突き刺し、豪達はぶら下がり状態にあった。

「あぁ、死ぬかと思った」

「いや、それよりもはやく登ってくれないかな?肩が脱臼しそうです」

「うん、ごめんね」

上条はそういうと豪の腕を使って壁を上がり始め、豪も付いて行こうとした。

だが・・・

「マリちゃぁぁん!!」

由美の叫び声が出来あがったばかりの崖の上から聞こえてきた。

上を見上げると先ほど、正也達と一緒にいた男と少女が落ちて来ていた。

だが、手を伸ばそうと届きそうにない。

「おぃ、手を伸ばせ!」

豪が必死に叫ぶと、男がこっちに気付きニタリと笑いかけてきた。

「受け取れ、化物共!」

男はそう言うと、少女を豪の方へと放り投げてきた。

豪は、その子を受け取り、それを確認した男は、笑い声を発しながら崖の下へと落ちて行き、奈落の底へと姿を消した。

崖の上に登るが、そこには正也達の姿はなく誰一人としていなかった。

「・・・名前、何て言うんだ?」

「福井・・・マリ」

泣きじゃくる少女に豪は名前を聞き、泣きじゃくる少女は泣きながら自分の事をマリと呼んだ。

泣きじゃくるマリだが、二人は妙な違和感を抱いていた。

「なぁ・・・俺達が怖くないのか?」

流れる涙を拭いながらマリは、目の前に屈んでいる豪を見つめ「傷がちょっと怖い」と答えた。

「仁・・・これは俺の勘違いか?」

「いや、そんな事は・・・多分、無いと思う」

二人は曖昧なやり取りをして、ある共通した考えを抱いていた。


・・・・この子は俺達を恐れていない


泣きじゃくるマリを横に二人は、顔を見合わせ首をかしげていた。

「・・・もしかして、すり込みか?」

「すり込み?卵から孵化したヒヨコが初めて見た物を親と思うやつ?」

「そんな感じ。まだ人間と共生者との区別がつかないんじゃないか・・・」

豪の推測になんとなく納得する上条。

同じ共生者かと思ったが、秋葉のような感じはマリからは感じ取る事が出来なかった。

「マリちゃん。ここで何があったの?」

「あのね・・・あのね、マリの喉に冷たい物を押しつけられてね、地面がグァーって揺れてね、それから」

上条の質問に必死に答えるマリだが、さっぱり理解できず、そんな中、異様な気配を感じ取り、豪と上条は武器を構えた。

「グルルルルル・・・」

異様な気配を出す奴は喉を鳴らしながら、豪達の前に姿を現した。

「くそっ、ケルベロスか・・」

豪は瓦礫の中から出てきたケルベロスに舌打ちをしながら、刀を抜いた。

だが、ケルベロスの様子がどうもおかしい。明らかに尻尾を振り、こっちに好意を示していた。

「あぁ・・駄目だ。俺、犬派だから斬れないかもしれない・・・仁、お前がやってくれない?」

「じょ、冗談でしょ?・・・私にあの犬を殺せって言うの?」

「グルルルル」

相変わらず恐ろしい声を発してくるケルベロスだが、声と態度が全くの逆で、二人はどうすべきか迷っていた。

「あぁ!ワンちゃんだ」

マリは泣きじゃくるのを止め、戸惑う二人を無視してケルベロスに近づいて行ってしまった。

「あっ、馬鹿!その犬に近づくな!」

豪の声に、マリは振り返り「えぇ~でも~」と駄々をこね始める。

だが、ケルベロスは背を向けたマリに飛び掛かった。

「しまった!」

マリに目を取られていた上条と豪は全く動けず、ケルベロスはマリを押し倒した。

「キャハハハハ、くすぐったいよ~」

ケルベロスは、マリを殺そうとせず何故か顔を舐めまわしていた。

「・・・・あぁ、わかった」

呆気にとられていた豪は、このケルベロスの正体に気付き、武器を下ろして頭をかいた。

「こいつ・・いや、この犬、共生者だ」

「共生者?・・・・えっ、だって犬じゃん」

「武器だってウイルスに感染するんだ。犬が共生者になろうが不思議じゃないだろ」

二人がそんなやり取りをする中、マリはケルベロスに「お座り!」と命令し、犬は素直に従っていた。

マリの言う事を聞くのだから自分だって大丈夫だと上条が指示を出すが、噛まれる始末で、

「あぁ、もぅやっぱ私は猫派だ!」

銃を両手に構え、怒り狂う上条を豪は必死に抑え、マリはこの犬に『ポチ』と名付けた。













必死に逃げていて今まで気付かなかったが、今、淳は瓦礫の上を飛ぶように走っていた。

「うぉっ・・すっげ・・」

自分の身体能力が異常なまでに上がっている事を疑問に思わず、むしろ淳は楽しんでいた。

目の前にいるカメレオンに飛び掛かり、頭の上に着地するとカメレオンの首を捻じ曲げ、周りにいるカメレオン達を蹴り飛ばした。

蹴り飛ばされたカメレオンはすぐに体制を立て直し、淳に襲いかかるが淳の突き出した拳がカメレオンの腹を貫通し、それを見たカメレオン達は思わず、後ろに下がり始めた。

「逃がすかよ・・・さっきは俺の腕をめちゃくちゃにしやがって、お返ししちゃらねぇとな」

気が付けば、折れていた腕も元通りに治り、淳は後ろに下がるカメレオンを睨みつける。

その睨みが効いたのか、カメレオン達は一斉に、背を向けて走り出した。

「殺す!」

淳はそう叫びながら背を向けたカメレオン達に襲いかかろうとするが、その前にカメレオン達の頭が何発かの銃声と同じタイミングで吹き飛んだ。

頭を失ったカメレオンはその場に倒れ、淳の目の前に現れたのは、ショットガンを手に持った男だった。

緑の返り血を浴びた男は銃を肩に乗せながら、淳に話しかけた。

「あれ?先客がいたのか、悪い事したな」

「あんた誰だ」

「俺?・・・黒服の・・って言ってもわからないか、香田 伸司だ。ところで、今、人探ししてるんだけど、刀を持った男を知らないか?」

「刀?・・・あの変なしゃべり方する奴か?」

「変なしゃべり方?・・・『敵・・発見』とか言うやつか?」

「そう」

「あぁ、そりゃ秋葉だろ・・・そっちじゃねぇわ」

「なら知らね」

「そっか、じゃぁな」

そう言って立ち去ろうとする香田を淳は呼び止めた。

「おぃ、待てよ!・・・あんたはこれから何するんだ?」

「何って・・・仕事・・・お前は対象外だから、どうでもいいんだよね」

「仕事?・・何の?」

「人間殲滅・・かな?」

「人間?・・・俺だって人間だろ」

「本当にそう思ってんのか?・・お気楽な奴だな。だったら、聞くが、お前は今、なんで一人になってる?」

「はぁ?」

「利用されそうになったんじゃないのか?・・・人間に」

「・・・・なった」

口籠る淳を見て、香田はそんな淳を鼻で笑った。

「フッ・・・許せんのか?それ?」

「許せる訳ねぇだろ・・・あいつ等、意味わかんねぇンだよ」

「だろ?・・・だから、殺すんだよ。・・・付いてくるか?付いてくるんなら、色々と教えてやるよ」

再び香田は歩きだし、淳はそんな香田の後を追って歩き始めた。














「クッフッフッフッフ、お前、俺より強そうだな」

不気味に笑う築地は、黒のレインコートを着た親父に対面し、ボロボロになった包丁を嬉しそうに鳴らしていた。

「フフフフフ・・・己よりも弱者ではなく、強者を望むか・・それもまた良し」

親父はレインコートの中を探り始め、二対の長いシザーナイフを築地に投げ渡した。

「使うと良い・・・その包丁よりは使えるだろう」

「御親切に・・・試し斬りをしてもいいのかな?」

「フフフフ・・構わん。だが、お前は何を望む?」

「強者」

「求めてどうする」

「極める」

「なるほど・・・では、見極めさせてもらおう」

親父はレインコートの中から腕を出し、築地を挑発し始めた。

築地はシザーナイフを両手に構えると叫び声と笑い声が混ざった音を口から出しながら親父に立ち向かって行った。












「なぁ、ポチ・・・どこに連れてくつもりだよ・・・」

「グルルルルル・・・・ワン」

あれからどれほど歩いただろうか、マリはポチの背中に乗り大はしゃぎで、ポチは相変わらず低い声で受け答えをしてくる。

「絶対にポチとか似合わないし・・・」

先ほど腕を噛まれて未だに不機嫌な上条は、豪の後ろでぶつくさと呟き、その度に豪に宥められていた。

「まぁポチで反応するんだし、いいんじゃねぇの?・・・マリも気に入ってるみたいだし」

先頭をあるくポチは鼻を地面に付けながら歩き、鼻をスンスンと鳴らしていた。

「大体、犬が先頭って私達は犬以下か!」

上条の呟きに、反応したポチは「ワン!」と一鳴きし、上条は肩をビクつかせ噛まれた腕を隠した。

「まぁ、今の反応見たら、正直、仁は犬以下に見えるかもしれないな」

「そんな~・・・酷いよ、豪・・・」

「冗談だって、面白いからちょっとカラかってみただけ」

落ち込む上条の肩をバンバン叩き、笑い飛ばす豪。

そんな二人のやり取りをジーっと見つめてくるマリに豪が気がついた。

「どうした、マリ?」

「二人は付き合っているのか?だって」

マリから思いもよらぬ質問に二人は硬直し「はぁぁぁぁ?」と上条が悲鳴に似た声を出した。

「えっ?そう見えるか?」

「ちょっと、少しは否定しなさいよ!・・・ってマリちゃん、なんでそんな言葉知ってるの?」

「ABCでどこまで行ったの?」

マリの質問に上条は顔を真っ赤にし「Bか?」と尋ねてくる豪を蹴り飛ばした。

「マリちゃん!・・まさか、あの女に何か吹き込まれたのか!」

「違うよ。ポチが聞いてるの」

「ポチぃ?」

マリの下にいるポチが軽く「ワン」と答え、マリが「ABCって何?」とポチに尋ねていたため、上条が必死に止めた。

「待て!ポチ!・・・その子に犬視線で下手に説明しようとするな!」

「痛ってぇ~・・マジで蹴るとか止めてくれよ~」

「うるさい!馬鹿!」

頭を抑えながら近寄ってくる豪に見事な突きをし、今度は腹を抑えて倒れた。

「えっ?・・・ポチ、思春期って何?」

おそらくポチは上条を見て『思春期だな』とでも呟いたのだろう。

上条は「ヒィィィ」と悲鳴を上げ、「思春期ってのは仁のような奴の事だよ」とマリの質問に答える豪の頭を踏みつぶした。

「あぁ!もうこの馬鹿犬!これ以上、何も言うな!」


未だに興奮が鳴りやまない上条を横に、ポチが毛を逆立てて唸り声を上げ始めた。

「何だ・・・どうした?」

豪はポチが威嚇する方向を見ると、そこには炎上した車。その車を取り囲んだカメレオンと戦う風の姿を目にした。

「妙だ・・・保住がいない」

豪は風の近くに保住がいない事が気になり、辺りを探していると、ガマガエルが息を切らせながらこっちに逃げているのが目に入った。

「貴様等ー!何をしている!ワシを守らんか!」

保住がこっちに気付き、ガニ股で歩み寄ってきていた。

「おぃ、ガマガエル・・・風はどうするつもりだ」

「フン、知るか・・・車もロクに運転できない、出来損ないがどうなろうと知った事ではないわ」

馴れ馴れしく近寄ってくる保住だが、豪は刀を抜き保住の喉元に突き付けた

「勘違いするなよ。俺は、お前に聞きたい事があるから助けるだけだ。死にたくなかったら、そのでかい口を閉じてろ」

豪は刀を保住から放すと、風の方へと向かい走りだし、上条は何か喋ろうとする保住に銃を突き付け「しゃべるな」と釘を刺した。

「どけろーーー!!」

豪は叫びながら、カメレオンの群れに突進し、邪魔するカメレオンを次々と切り崩し、中心で戦う風と合流した。

「風さん!」

向かい合わせに立つ二人。

風は、豪に向かってナイフを投げ、豪はそれをしゃがんで避けると、そのナイフは豪に襲いかかろうとしていたカメレオンに刺さった。

豪は風に向かって刀を振り下ろし、風が横に避けると、カメレオンが真っ二つに割れた。

互いに背中を合わせに立ち、飛び掛かってくるカメレオンを柔道技で倒すと風が止めを刺し、風がカメレオンの足にナイフを刺し、怯んだカメレオンの首を豪が刀で撥ねた。

最後の一体が倒れた時には、二人は息を乱し、死体の山の中心に立っていた。

「どうして・・・・」

「風さんが言ったんだろ」

「何も言ってない」

「いや、言ってた・・・ガマガエルを守りたいと」

「それは、父が私を必要としているから」

「違う、そうじゃない。・・・ガマガエルは完全に風さんを見捨ててた。けど風さんは、そんなガマガエルを守るために、必死に戦っていた。そうだろ?」

「・・・・」

「風さんは確かに、作られた人間かもしれない。・・・けど、風さんは人間だ。ただの女の子だよ」

豪の言葉に、風は思わず視線をそらし「ありがとう」と口籠りながら答えた。







大きな揺れが起きた事で、崩壊したホテルの瓦礫が完全に崩れ、その瓦礫の一部が大きな音を立てながら吹き飛んだ。

不気味な分厚い雲を見上げ胸に刺さったナイフが印象的な化物が空に向かって大きく吠えていた。




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