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「いつも通りにやろう。クロエ、バフよろしく。アイシャ、サイクロプスの注意を引け」


 相手が魔物だと、声に出して指示だしできるからラクでいい。これが対人間戦だと、さすがに手の内を明かすことになるからな。


「ふぅ。重たい武装しながらだと呪文ひとつ言う気にならないって」


 クロエが大剣を壁にたてかけて、《クルセイダー》としての体力のなさを反省した様子もなく、支援魔法を発動。


「〈奔〉」


 これはパーティ全員の速度上昇バフの支援魔法。アイシャが槍を構え、攻撃の構えでサイクロプスの注意を引く。この隙におれは跳躍し、壁を蹴って、死角からの攻撃。安売りで購入したのにいまだ現役の片手剣で、戦技〈破砕の槌〉。サイクロプスの脳天を叩き潰し、撃破成功。


 着地。さすがに三人がかりだと、この程度の魔物は楽だったな。バフで敏捷性を上げ、アイシャの陽動のおかげで、致命の一発を簡単にぶち当てることができた。まぁソロ討伐だと、苦戦しただろうが。


 コレットが駆け寄ってきて、潤んだ瞳で見つめてきた。


「お兄さま、素敵でしたわ!」


 兄冥利に尽きる瞬間とはこのことか。


「いやぁ、こんなの、おれ一人でも充分だったんだけどね、まったくもって」


 アイシャからジト目で見られている気もするが、細かいことは気にするな。あとで調子にのったこと謝っておこう。妹がいないところで。


 大物の魔物は倒したが、まだまだ敵の流れは途絶える様子がない。とっとと市民を避難させてから、この本命の攻撃を防衛側に伝えてやらんと。

 そこでコレットたちを連れ市役所を出る。ひとまず周囲にいるのは、討伐難度C級のリザードマンだけのようだ。前衛を任せたアイシャが、上空からの相棒ペガサスと連携して撃破していく。


 この避難民の一行のしんがりは、おれが務めるしかないか。近接戦闘もいけることが売りのはずのクロエは、ついに大剣を市役所に置いてきたし。支援魔法のレベルは高いのに、どうしてソーサラーじゃなかったんだろうか。


「クロエ。おれはしんがりに回るから、お前はアイシャを支援しつつ市民誘導を頼むぞ」


「了ー解」


 コレットが心配した様子で、おれに言ってきた。


「お兄さま。わたくしもお兄さまと共にいます」


「いや、おれは大丈夫だから、コレットは避難民の誘導の手伝いをしてくれ。移動しながらも、逃げ遅れた市民が合流してくるはずだからな」


「分かりましたわ。お兄さま、お気をつけて」


「ありがとう。クロエ、ちょっと」


 クロエを手招きして呼ぶ。コレットが近くにいるが、この指示は聞かれたくなかったので、クロエに顔を近づけ、耳元で小声で言った。


「コレットにストレスがかかるような状況だけは避けろよ。いいか、冗談じゃなく、コレットがストレス数値98に達したら、魔王復活が可愛く思えるレベルと思え」


「うーん。いいけど、なんかその妹ちゃんに睨まれているんだけど」


 クロエから離れてくコレットを見やると、ストレス数値が45に達し、そこから下がっていくところだった。確か、さっきまで3だったのに。やはりコレットも、周囲に魔物がウロウロしている状況では、不意にストレスを感じるのだろうか。


 クロエが「ははぁ」と呟いて、


「わたしは何が君の妹ちゃんのストレス数値を上げているのか分かったよ。これは面白い」


 クロエの奴、面白い玩具を見つけた顔をしているが、まぁ大丈夫だろ。

 というか、これ以上、考えるのも疲れたし。


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