第97話 迷宮3
骸骨兵、骸骨騎士、骸骨司教、骸骨製の被造物、それぞれの個体は飛び抜けて手強いわけでもなく、ウーシスの補助をうけながら俺とオルフェとで倒すのは難しくない。
ただ、王女さまを守りながら、間断なく倒し続けるとなると話はべつだ。
こちらは疲労していくのに、骸骨どもに疲労のいろはなく、被造物は強さを増していく。みさかいなしに暴れまわり、広間自体をくずしてしまうのではないか。
余計なことを考えている隙をつかれ、ランスを構えた骸骨騎士の突撃をまともに喰らった。遠征用に仕立てた鎧のおかげで死なずに済んだが、〈餓狼〉があっても耐久力や回復力があがっているわけではないのだ。
ウーシスが俺の手当てをするあいだ、オルフェ一人で骸骨騎士を打ちくだき、骸骨兵を破壊し、骸骨司教の雷を避けながら、骸骨製の被造物を翻弄していた。
オルフェは戦闘に特化した魔法の使い手であり、自分自身の力を強化しながら戦っている。その動きは人間技とは思えず、〈餓狼〉の力を借りているときの俺とおなじか、それ以上だ。熟練の弓矢よりも速い雷を左右に身を揺らせてよけ、骸骨司教の首を短剣で刈りとり、粉々に踏み砕いた。
さらに被造物の足に蹴りつけて片足をバラバラにし、傾いだ巨体を踏みつけるようにして高く飛びあがると、からだをひねって天井を蹴り、落ちかかるようにして、その頭部を破壊した。
頭部を失った骨の塊が音を立てて崩れ落ちる。一方、オルフェも大きく肩を上下させて荒い息を吐いていた。警戒をゆるめずに戻ってくるその背後で、破壊された骨が形をとりもどしていく。それを横目にみながら、めずらしくオルフェが弱音をはいた。
「御主人様、一度、退きましょう。これでは、きりがありません」
広間では、首を失った骸骨司教の体が立ちあがり、再生中の頭蓋骨を拾いあげると、そのまま何事もなかったかのように首のうえに乗せるのだった。
続けて、被造物に向かって強制回復を唱え、壁や天井を覆う人骨を取り込ませながら修復する。
俺たちは広間の入口まで後退した。そこへ、ゆっくりと骸骨たちが近付いてくる。
「倒せないのなら、破壊したすきに通り抜けていけないだろうか」
との俺の提案に、ウーシスが首を振る。
「できるかもしれませんが、追ってくるでしょう。面倒かつ厄介ですね」
「大魔法使いさまから、なにか聞いてないか」
「倒す方法まではわかりません。暗黒神官の寝床まえに門番がいる、それだけです。この手の不死者には炎が有効です。荼毘に付すとのイメージが手順として意味を持つのかもしれません」
ただ、ここでは……。
と、言葉を続けようとしたウーシスの背後から元気な声があがった。
「火に弱いってことだね! わたしに任せて」
止める間もあらばこそ、これまでじっと耐えていたレナが、嬉しそうに〈燃えろ!〉と古代語を口にした。
その瞬間、周囲の大気がうすく掻き消えたような気配があり、こちらへ近付こうとしていた骸骨兵、骸骨騎士、骸骨司教、骸骨製の被造物、それぞれが激しい炎にまかれ、壁や天井にならんだ人骨も、いっせいに燃えはじめた。
あっ!
王女をのぞく3人の声が被り、得意げな様子だった王女が、きょとんとしたふうにこちらを振りかえった。




