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第94話 遺言


 大魔法使いさまが亡くなり、領地のあちこちにいたゴーレムたちも動きをとめた。いずれ、その主人同様、時の尖兵に敗れ、ち果てていくだろう。


 大魔法使いさまの遺体を中庭に埋め、一本杭いっぽんぐいの墓標を立てる。


 もはやここに留まる理由もなく、俺たちは北の城塞都市へ戻ったのだった。


 と、言いたいところだが、すこしばかり、しかし、とても重要な寄り道をすることになった。西まわりで北へ向かったのだ。


 なぜなら、それが大魔法使いさまの遺言だったから。伝言してもらわなければ、というその相手が西方にいるらしかった。


 予想できないでもないし、そもそも大魔法使いさまが、西の果てにいる骸骨がいこつ野郎に会ってこいと言っていた以上、彼しかいないことはわかっていた。むこうは知らないだろうが、べつの世界では、ともに旅をした暗黒神官ダークプリーストが。


 考えてみれば、大魔法使いさまは露払いを務め続けてきたに違いない。その言葉どおり、きっと何十年も何百年も昔の約束どおりに。


 果たして、西の地で出会ったのは、暗黒神官ダークプリーストのグレゴだった。むかしのおもかげどころか、ひとの姿さえ失っていたが。



 ……俺たちは、大魔法使いさまの遺言にしたがい、西方へ向かった。


 かつて〈森の魔女〉が支配し、大魔法使いさまが受けついだ領地は、王国の飛び地として西方の護りとされてきた。

 しかし、西には荒れ果てた大地が広がり、およそ人の住める場所ではない。そもそも攻めてくる者などいないのだ。実際は、何者も〈門〉へ近寄らせないための領地だった。


 では、これまで領地より西へ向かった者がいないのかと言えば、そうでもないらしい。領地を抜けていくことは難しくとも、領地を避けて行くことは可能だからだ。

 海路をとり、北回り、または南回りに迂回して西の果てへ向かう。上空を巡回する赤き竜、大魔法使いさまの目を盗み、多くの船を打ち砕く厳しい荒波を越えて彼らが行き着くのは〈増殖する迷宮〉である。


 かつて〈門〉のあった場所を中心に、ねじまがった有機的な構造の迷宮がある。その主人が不死者アンデッドとなったグレゴらしい。とはいえ、迷宮を管理しているわけでもなく、グレゴを倒せば迷宮が崩壊するとか、その支配権を譲られるとか、そういうことはないそうだ。大魔法使いさまは自分の死期が近いことを感じていたのか、迷宮に関する知識をウーシスとオイフェに託しておいてくれたのだった。


 迷宮は、近づくもの全てを取りこんで自己増殖するように設計されている。


 おそらく暗黒神官グレゴの趣味だと思うが、神話や伝説の怪物に似せてつくられたものが衛兵よろしく迷宮内を徘徊はいかいしており、侵入者を排除、ひらたく言えば殺害し、その死体や持物は、あらたな怪物の創造や迷宮増築の材料に回され、半永久的に、迷宮はその深度と難度を増していくのである。


 この世界に残る魔力が尽きるまで。


 帰る場所のないスカベンジャーには、屍肉しにくあさり、物乞ものごい、盗人ぬすっと渉猟者しょうりょうしゃのほか、遺跡荒いせきあらしも含まれる。

 こうした迷宮に挑むのは、遺跡荒いせきあらしたちだ。迷宮の怪物は手強く、迷宮の主人あるじに出会えば、まず命はない。それでも迷宮に挑む者がいるのは、迷宮深部には古代の魔法具や魔法書、数多あまたの財宝が蔵されているからだ。


 屍肉あさりとして、同じスカベンジャーだった俺も、遺跡荒らしにあこがれたことはある。その実態が、ほぼ墓荒らしであることを知り、屍肉あさりと変わらないなと、あこがれも捨てたけれど。魔法時代の遺跡にもぐるような本当の意味での遺跡荒らしは少数なのだ。

 なぜなら、言葉どおりの遺跡荒らしは、死者の墓をあばくのとは危険が段違いで、そのわりに見返りがすくない。苦労して遺跡や迷宮の最深部までもぐっても、すでに荒らされたあとだったりする。容易に稼げるなら、誰でもやるだろう。ある意味では、危険そのものを求める山師のような連中だ。


 自分がそんな真似をすることになるとは思わなかった。それもレナを連れて。


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