第52話 カギ
わかったにゃ? と言われてもわからんわけだが、さらにネコ化の進みつつある大魔法使いさまから話をきいたところ、この異界の旅がなぞる過去の出来事が判明した。
ソフィア、グレゴ、ラキ、アーの4人は、いずれ、魔女と巨人を討伐する。ただ、その過程でなんらかの呪いをうけ、それが新たな呪いのもととなったらしい。
幸か不幸か、人の想いは、有形無形のつよい力をもつものだ。それが、魔女の呪いか穢れた地の影響か、歪まされてしまった。心のゆがみは、本人も気づかぬ遅効性の毒のように新たな呪いと破滅をよぶ。
ラキに惹かれていたソフィアは、魔女と巨人の討伐後、故郷へ帰ろうとするラキを引きとめるべく、グレゴに相談した。その結果、暗黒神官は、ラキの魔剣に呪いをかけることになる。
命を賭して、ソフィアを守れと。
そうして、姫さまの望みどおり、ラキは王都に留まることとなった。ただし、そこに悪意のひとしずく。ひそかにソフィアに好意をよせていたグレゴは、決して姫さまの想いが成就することのないように重ねて呪いをかけていた。
黒いナイフは、こうして生まれた。
その持ち手は、ソフィアを……のちには、ときの王家の姫さまを……命を賭して守ることになる。けれど、ラキはソフィアのもとに留まりつつも、臣下としての分を越えず、姫さまの想いに応えることもなかった。
想い人を身近におきながらも、その心が報われない苦しさは、いかほどだろうか。それ自体が魔女によって歪められたものであり、双方を不幸にしたのかも知れなかった。
所詮はネコの言うことだが、魔剣、魔女、魔術、二重三重にもつれた呪いの連鎖を断ち切り、黒いナイフの呪いを解くためには、関係する出来事をなぞる必要があると。
双剣であるはずの魔剣が、なぜ片割れとなり、なぜ剣ではなくナイフとなったのか、体に流れこむ力の源はなんなのか、疑問はつきず、もっと黒猫をしめあげたいところ、加速的にネコ化がすすむ大魔法使いさまがチョウチョを追ってどこかへ行ってしまったため、とりあえずここまでとなった。
だが、まあいいだろう。
クロ《=大魔法使い黒猫ver》がいうには、これから俺たちは過去をなぞりながら、さまざまな出来事を体験していくらしい。
なにが起きるか、すこし楽しみでもある。
そんなふうに思うあたり、この世界になじんできていたのだろうし、大魔法使いさまの庇護のもと、帝国の手が届かない異界で安心しきっていたのかもしれない。
『ここで死ねば、もとの世界でも死ぬ』
との警告を、なかば忘れかけていた。ある意味では、狩人として過ごした日々とおなじように心地よい旅だったのだ。
姫君、狂戦士、暗黒神官、死霊魔術師、いずれも個性ゆたかな良い道づれであり、愛すべき友になりえただろう。ここちよい振動を感じながら、馬車にゆられていく。
しかし、魔女の領域に入るや、物思いにふけるのを妨げるように、およそ人の発するものとは思えない笑い声が響いてきた。




