表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/125

第42話 衰弱


 朝。


 目覚めると、やまいあけのように体がおもく、自由がきかなかった。つねに精気をすわれ続けているようだ。


 しかし、無益な戦いは好まないとのソフィアの言葉は本気だったらしく、ブガンと会って話をするだけで、連日死闘がくりひろげられるなどということはなかった。


「本当に変わった方ですな」

 ふしぎそうにブガンが出迎える。「これで何日目でしょうか。道をあけよと、ただ説得するだけではありませんか。それ以外には、くだらない雑談とお茶の相手をしてくださる」


「わたしは平和主義者なのです。あなたも力を抑えていますよね。なぜです?」


「ただの気まぐれですよ」


「アーちゃんを手元にとどめているように?」


「その子は勝手に生き残っただけです。あなたがたの世界からつまはじきにされ、ここへ送りこまれた。ほこらと称する牢獄で育てられた野良魔女だったとか。ここで暮らしていても死なずに生きているからそのままにしているだけです。思い入れなどありませんよ」


「そんなことは聞いてませんけどね!」


わたくしと同じ、塵芥ちりあくた、無用な存在なのです」


 言葉に怒りがこもり、すわった人のかたちをとっていたブガンが立ちあがった。ざらざらとちりかたまりが揺らぐ。


れられたくないところでしたか。いつも悪気わるぎはないのに人を怒らせてしまいます。わたしには争う気はありませんよ?」


「そんな悠長ゆうちょうなことを言っている場合ではないでしょう。わたくしに、その気がなくても、あなた自身が大丈夫でも、おつれの方たちは衰弱していくでしょうな。その兄妹と黒猫とはね」


 ブガンがいうとおり、みんな衰弱が隠せないほどになってきていた。


「おつれの方たちのために、そろそろ決めてはどうですかな。わたくしと戦うと」


「やめておきます。わたしでは勝てません!」


「言い切りますな。では、どうするつもりなのです?」


「どうもしません。期限を切られているのは、あなたのほうですよ。どうするべきか、よく考えることをお勧めします。アーちゃんのためにも、ね?」


「なにか思い違いをしているようです。そして、そちらの期限はもうすぐでしょう」


 ちりかたまりが笑ったように思え、その途端、俺はその場にくずれ落ちた。ずっと精気をすいとられ続けてきたのだ。そのまま、重いやまいとこにあるかのように、寝台から起きあがれなくなった。


 みなで看病してくれたが良くはならず、だんだんと体が弱っていった。心配するな、大丈夫だなどと言う黒猫も寝床で丸まっていて、その姿をみていると、不安がつのってくる。


 そんななか、敗北あるいは勝利をつげる使いがやってきた。


 寝台で横になっているとき、部屋ではレナとアーがささやくように言葉をかわしていた。ふたりは年齢もちかく、いつのまにか仲良くなっていたらしい。体が弱るにつれて、逆に感覚は鋭くなってきているのか、その話し声が聞くともなくきこえてきた。


「アーちゃんは、いつから屋敷にいるの?」


「よ、よく、わかりません。い、いつのまにか、こ、こここ、ここにいました」


「でも、ながくいたら死んじゃうんでしょ?」


「ア、アア、ア、アーちゃんは、し、死にません。の、野良魔女デスから」


「野良魔女って?」


「う、うまれつき、ま、魔力をもった子どもデス。そ、そ、そ、それも、く、黒魔術の、ち、力をもつ、こ、こ、子ども、で、デス」


「アーちゃんは、どんな力をもってるの?」


「ネ、ネ、死霊魔術ネクロマンシーで、デス。はい。し、死体をあやつる、ま、魔術なのデス。はい。ブ、ブブ、ブガンさまが、ほ、ほめてくれマス。はい」


「ねぇ、もしかして、アーちゃんは〈ちりの王〉のことを……」


 言いかけたレナがアーにおおいかぶさるのと、部屋に何かが飛びこんでくるのと、ほとんど同時だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ