表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/125

第35話 対話


 レナの寝顔をみながら、大魔法使いが、よく似ているとつぶやいた。いったい誰に似ているのか尋ねてみたが、


「いや、古い知り合いに似ていてね」


と、はぐらかされた。さらに、その話は終わりとばかりに、大魔法使いが宙に文字を書くような仕草をしてみせる。


 すると、レナが目をひらき、俺がいることに気付いて嬉しそうに駆け寄ってきた。


 慣れない服と靴につまずきながらだが、勢いよく突撃してくるところは昔と変わらない。ただ、やわらかな曲線を描く衣装が、もう子どもじゃないと訴えかけてくるようだ。


 安堵の表情で、レナが抱きしめてくる。


 その温かな体を、そっと抱きしめ返しながら思う。王女と屍肉しにくあさりか。そろそろ離れる時が来たのかもしれない。


 子どもの頃のように頭をなでてやると、レナは胸もとからこちらを見上げながら、あー、うー、と言葉にならない声を発した。その様子をみた大魔法使いは、


「王女さまは話せないようだな。自分の力で人を傷つけることを恐れているのだ」


と言うと、ゆっくり手を伸ばし、俺がしていたように、レナの頭をなでるのだった。


「よしよし、いい子だ」


 ネコかなにかをなでるように、ひとしきりなでて満足したらしい。さて、とマジメな顔で話しはじめた。


「さて、レナの言葉と、おまえの呪いと、まとめてなんとかしてやろう」


「できるのか」


「できるさ。そこは、『どうして、そこまでしてくださるのですか、偉大なる大魔法使いさま』と言うべきだな」


「どうして、そこまでしてくださるのですか、偉大なる大魔法使いさま」


「バカにされておるような気もするが、まあいいだろう。そうだな、思い出のためにとでも言っておくか。だが、なにごとにも理由をもとめるなど、愚かなことだぞ」


「あんたが言わせたんだろうが」


「人のせいにするな。れ者め」


 理不尽りふじんな言葉をあびせられ、つづけて黒いナイフを取りあげられた。呪いを解くための準備に必要なのだという。


 しかし、本当にそれだけだったのか。


 その夜、風に当たろうと、用意された部屋をぬけだしたとき、バルコニーから声がきこえてきた。独り言のような、話し声のような。

 そっと覗いてみると、月灯りのしたに大魔法使いが立っており、目のまえには黒いナイフが浮かんでいた。


 声をかけようかと思い、やめた。


 大魔法使いが、涙を流しながら黒いナイフと語らっているようにみえたからだ。懐かしいけれど、もう自由にしてあげる。そんな声がきこえたような気がした。

 

 さて、翌朝である。


 まだ寝ていた俺をたたき起こし、大魔法使いは、おはようもなく、いきなり、立ってみろと命じてきた。その傲岸不遜ごうがんふそんな調子には一点の曇りもなく、前夜のあれは、夢だったのかもしれないと思えた。


 さらに寝台から放り出され、あまりに扱いがひどいと文句を言いかけて、やっと自分が立っていることに気付いた。両足とも、銀色にかがやく金属と化している。


「よし、立てたな。約束の義足だ。魔除けの銀細工がほどこされた逸品だぞ。バランスが悪いから、右足もぶったぎって、両足とも義足にしておいたからな」


「うそだしょ?」


「どこの方言だ?」


「いや、ちがう。うそだろ? なくしたのは左足だけだぞ」


「はっ、知っとるわ。冗談に決まっとるだろう。わざわざ健康な足を切ったりせんわ。寝起きの軽いジョークだ」


「軽くない! 面白くない!」


「やれやれ、エスプリを解さない田舎者いなかものはこれだから……」


「あんたなら、やりかねないんだよ!」


 そんなことはどうでもいい、と一方的に話を終えて、大魔法使いさまは、さあ、お茶を飲みながら旅にでようか、と、よくわからないことをのたまうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ