表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/125

第102話 迷宮8


 アーとグレゴの関係がどういうものだったのか、二人がってしまった以上、はっきりとはわからない。ただ、離れていても寄り添うような関係であり、どちらか一方が欠けてもダメだったのだろう。


 〈増殖する迷宮〉は、そのあるじを失っても崩壊せず、そこにあった。グレゴが残していってくれた物をそのままに。


 王女さまは神聖魔法として、〈守護〉と〈治癒〉を身につけたし、ウーシスとオルフェも、それぞれ魔法の武器を受けとった。ながい時をすごす暇つぶしに、グレゴは魔法の武具をつくっては壊し、つくっては壊し、としてきたらしい。気に入って残していたのは二つだけで、ウーシスが受けとったのは〈魔女の鉄槌〉、オルフェが受けとったのは〈慈悲の剣〉である。


 鉄槌は重厚な見ために反して、ほとんど重さを感じさせないほど軽く、女の細腕でも軽々と振りまわせ、かつその一撃は重い。それも、魔力を込めれば込めるほど重くなるという。


 また、オルフェが受けとったのは、何者をも眠らせるように殺す慈悲の剣。痛みをもたらすことなく、死を贈る。


 残念ながら、俺には何もなかった。


「おまえには〈餓狼がろう〉があるだろう。あまり欲張るな」


 そう言いつつも、不満げな俺の様子をみて、グレゴは苦笑しながら言葉を続けた。


「だが、人間とは欲望そのものであり、生きることは欲することでもある。暗黒神官ダークプリーストの有り難い言葉をくれてやろう。おまえは〈餓狼がろう〉を振りまわし、それでそいつを使っている気になっているようだが、本来の使い方とは違うのだ。

 魔剣は呪いであり、一方で祝福でもある。もともと、〈餓狼がろう〉は、他人の生命力を奪いとり、己の物にするための祭具としてつくられた。形状は武器だが、振りまわして使うような物ではない。

 性質としては暗黒魔法に近い代物しろものでな。栄華を極めた王侯貴族が最後にもとめるものはいつの時代も同じよ。すなわち、永遠の命を。そんな願いのもとにつくられた祭具だったのだ。対になる一方の剣を、神でも魔物でも英雄でも、なんでもいい、生命力にあふれたものに突き刺し、もう一方を己の心臓に突き刺すことで、その力をものにするのだ。腕力も、若さも、魔力も、なにもかも」


 そこまで聞いて、俺は、かつてゲドウと対峙し、投げつけられた〈餓狼がろう〉が自分の胸にもぐりこむように突き刺さったときのことを思いだした。


「ふん、すでに心あたりがあるようだな。アーの弟子らしいし、一応、忠告はしておいてやる。その力は祝福であると同時に、やはり呪いでもあるのだ。そうだな、治癒の奇跡と言いつつ強制回復でもあるといったところか。大きな力を得るかわりに、安易に何度も使えば魂が壊れてしまうだろう。一度、使っているのであれば、使えてあと一度。それも、使ったあと、どんな影響が出るか、命の保障はない」


 まあ、使わないに越したことはない。


 そう言って、不意に、暗黒神官グレゴは俺を引きよせて抱きしめるようにした。


「おまえを一目ひとめみて、どこかで会ったことがあるように思えて不思議だったが、どうやら、アーのお茶旅で出会っていたようだな。おまえの頭をさぐったときにわかったよ。それに、妹の件も。いまは王女と従者と言ったところか。あわれなものだが、まあ、がんばれ。他人事とは思えんのでな」


 とにかく、正直になることだ。


 つぶやくように言って、うつろな眼窩がんかをこちらに向けてくる。


「正直に、ね。なんのことだかわからんな」


 半分は本音ほんね、半分はうそをまじえて応えると、グレゴは、にっと笑って……骸骨がいこつなので表情などあるわけもないのにそう感じたのだ……言った。


 変化を恐れるな、と。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ