サマーガールの恩返し
昔々あるところに、一人の青年が住んでおりました。
晴れの日には畑を耕し、雨の日には草鞋を編んで生活をしていた青年は、決して裕福ではありませんでしたが、充実した毎日を送っておりました。
ある日、青年が畑へ向かう途中、ビキニを着た夏真っ盛りなサマーガールとアヒルが罠にかかっておりました。
「助けて下さいまし」
サマーガールは上目遣いで指をくわえており、青年的には『さもありなん』と言う感じでしたので、すぐに罠を外してやると、サマーガールとアヒルはあっと合う間に海岸へと消えていきました。
青年は『写真くらい撮っておけば良かったなぁ』と軽く後悔しました。
──その夜、青年の家にサマーガールとアヒルがやってきました。
「恩返しに来ました。どうか家に置いて下さいませ」
青年は迷わずサマーガールとアヒルを受け入れました。青年の好きなオフショルダービキニだったとか、実り豊かなたわわな果実だったとか、そういう事ではありません。
一期一会をモットーに、青年は様々な人々に救いの手を差し伸べる素敵な人だったからです。
「こちらの部屋をどうぞ」
「一つお願いが御座います。部屋を覗かぬよう……どうか」
青年はサマーガールとアヒルの願いを快く承諾し、その日は眠りにつきました。
翌日、青年が目を覚ますと、織物とビキニのトップが青年の枕元に置いてありました。
「?」
青年が不思議に思いふすま越しにサマーガールとアヒルを呼ぶと、部屋へ入るよう返事がありました。
青年がふすまを開けると、そこにはうつ伏せのサマーガールと羽のないアヒルがおりました。
「オイルを塗って頂けませんか?」
トップを失ったサマーガールの、実り豊かなたわわな果実がうつ伏せで大変な事になっておりましたので、青年は無我で正面へと回り込み写真を撮ってしまいました。
「私でよろしければ」
青年はサマーガールへオイルを塗りました。
これは所謂一つのドッキリではないのかと、疑いの眼差しを軽く向けましたが、まあいいやと目の前の絶景に喜びオイルをガンガンに塗り始めました。
「オイルを塗っていただけませんか?」
羽を失ったアヒルもオイルを願い出たので、青年は熱々のサラダ油をかけてやりました。
こんがりと焼けていい感じの北京ダックが出来上がりました。
「いただきます」
二人は肩を並べ、北京ダックを食べました。
あまりにも二人の距離が近すぎたので、青年の服もオイルでベトベトになりましたが、どうせこの後もっとベトベトになるのだから、どうでも良いことなのです。
北京ダックをいたく気に入った二人は、それからちょくちょく北京ダックを食べて暮らしました。
──しかし、その幸せは長くは続きませんでした。
サマーガールは北京ダックの食べ過ぎで体型が崩れてしまい、ビキニが着れなくなってしまったのです。
「今までお世話になりました」
サマーガールはビキニのボトムをそっと置いて、青年の家を飛び出しました。
「…………」
──あれから三十年。
青年は今でも時折、残されたボトムをそっと握りしめ、畑仕事にせいを出しておりました。