表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファニーエイプ  作者: NEOki
第一章
44/156

第十六話 正義の怪物①

 幼いある日、少年は偶々本棚より飛び出していた一冊の絵本を手に取った。それは皆と友達に成りたい心優しい怪物が良かれと思ってやった事が空回りし、最後は居場所が無くなり入水自殺を遂げるという悲しいストーリー。

 その絵本を読み終えた少年は思った、これは自分の物語であると。人より力が強くて、走るのも速くて、大怪我も直ぐに治って、空だって飛べる自分は正しく絵本の中の醜い怪物。

 そして同時に恐ろしくも成った。この世界の皆から嫌われて何処にも居場所が無くなり入水自殺を遂げる、そんな未来が自分にも待っているのではないかと考えてしまったのである。


『一人は嫌だ寂しいもん。誰でも良い、誰でも良いから僕の側に居て欲しい』


 恐怖に駆られた少年は逃げ道を探す。こんな醜く欠けた自分でもどうにかして幸福と人々の笑顔に溢れた最後を迎える方法は無いかと。

 そしてその答えは又しても絵本の中に見つかった。その存在は彼と同じ様に空だって飛べて、トロールの様な怪力だって持っているのに何時も人の輪の中心で笑っている。

 少年が憧れた存在の名、それはヒーロー。自分の生まれ持った力で人々を守りその代償として愛を貰う仕事。


 沢山調べたが怪物の選べる道はヒーローと成って人々を守る、若しくは悪者として倒されるの二つしかないらしい。

 少年はどうしてもヒーローに成りたかった。だがヒーローの席は限られていて、何より少年は臆病で人の心が分からなかったのである。

 だから作ったのだ、社会の為に自らを犠牲にし正義のみに従う皆の理想をそのまま書き写した偽りのヒーローとしての人格を。そして只管人々が望むまま敵を倒し、決められた定型文のみを喋る事で人々と心で繋がる事を避けた。誰かを悪にして、偽りと暴力によって自らの居場所を作ったのである。


 その日から始まったのだ、非難や敵意に怯え化けの皮が剥がれる事に震えながら生きる毎日が。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ