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ファニーエイプ  作者: NEOki
第二章
145/156

第十九話 公認ヒーロー認定式⑥

ドオ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”ンッ!!!!


 今までバルハルトが敵の機動力を削ぐ為に放ってきた物がそよ風に思える程巨大な衝撃波が弾け、視界一杯を覆っていた爆煙が一片残さず吹飛ばされる。そしてたった一瞬で様変わりしてしまった戦場の光景を彼らの目に映させたのだった。

 まるで戦闘機による絨毯爆撃でも通ったかの様に痛々しく抉られ依然炎が燻っている灼熱の大地。焦げ臭く呼吸がしづらい酸素が燃やし尽くされた大気。そしてギリギリで危機を察知したのか直撃は免れ、しかし余波で会場の端まで飛ばされたフラットの姿。爆炎により地獄が権限した様になった半面とそれまでと何も変わらない半面、その丁度境界線に立つ余りのエネルギーが蒼雷として周囲に漏れ出すバルハルトの姿。


 バルハルトが以前に時間稼ぎを選択した二つ目の理由、それは今回史上初の市長とヒーローのパートナーシップを結ぶに当たって幾つかの制限と責任が課される事と成ったから。その制限の一つが不意の事故で無関係な人間を巻き込んでしまう事を避ける為、周囲が完全に無人となった事が確認出来るまでは使用する兵器を限定するという物。そしてその制限の結果、バルハルトは今この瞬間まで不意に巻き込んでしまったとしても一般人を殺傷してしまう可能性が低い衝撃波を発生させる兵器のみを使用せざるを得なかったのだ。

 だがしかしたった今仲間のヒーローより連絡が入り、会場内部が完全に無人となった事が確認された。そう成ればもう態々非殺傷の攻撃に拘っている必要はない。



ドゥッオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!



 バルハルトは視界が開けた途端間髪入れずフラット目掛け両掌よりプラズマ砲を放つ。又もや放たれた新手の凄まじい殺傷能力を秘めた攻撃。しかしフラットはその血も涙も無い超火力を前に一切の動揺を見せず、冷静に加速装置を起動させ自らの身体をイカれた攻撃範囲より逃す。

 そして如何なる攻撃も当たらなければ意味が無いと言わんばかりに、返す超音速の刃で標的の首を狙った。


ッドオ”オ”オ”オ”オ”ン!! ドオ”オ”オ”オ”オ”ン!! ドオ”オ”オ”オ”オ”ン!! ドオ”オ”オ”オ”オ”ン!! ドオ”オ”オ”オ”オ”ン!! ドオ”オ”オ”オ”オ”ン!! ド”オ”オ”オ”オ”オ”ン!! ドオ”オ”オ”オ”オ”ン!! ドオ”オ”オ”オ”オ”ン!! ド”オ”オ”オ”オ”オ”ン!! ドオ”オ”オ”…………


 しかしそのアクションは既にバルハルトの前で使い古されている。彼は此れまでの戦いで編み出した対抗策をそのまま強化し、威力と連射速度を単純に倍増させた衝撃波を解き放った。

 そして更にその上対狙撃用センサーで敵影を捉えた方向へとまるで種籾でも蒔く様な軽い調子で絶大な破壊力を封じ込めたエネルギー弾を放り、それが一瞬で会場の三分の一程度を焼き尽くす。だがそれでも敵の反応は消えない。唯立っているだけで地面が割れていく程の衝撃波が繰り返し押寄せる環境下でフラットはバルハルトの攻撃を掻い潜れるだけの速度を保ち、爆撃の効果範囲から逃れていく。


 その行動、そしてそれに対する対応でこの戦いのゲームルールが決まる。フラットは彼の武器であるスピードであらゆる攻撃を掻い潜り敵の元へと辿り着いて一撃を急所へ叩き込めば勝ち。対するバルハルトは敢えて立ち位置を動かさず一点に留まったまま周囲へ攻撃を放ち、凶刃が自らの首を捉える前に圧倒的な攻撃範囲で敵を呑み込めれば勝ち。

 ルールはもっと複雑にしようと思えば出来た。しかしそれでも、敢えて互いにたった二つの命を駒にしてどちらの生がより優れているのかを比べるのに余計な物は排除したのである。



 バルハルトが放った爆炎を回避し、爆風の脇を突き抜けたフラットは横から回り込む様な形で敵を自らの間合いへ入れようとする。しかしその行動を予期したバルハルトが左腕を高速で三度振るい、そこへ装着されたエネルギー変換装置により斬撃状へ形を変えたエネルギーがレーダーシステムの示した方向へ向け放たれた。

 対するフラットは爆煙を斬り裂きながら現われたその巨大な光刃に対し自らも刃を抜き去り迎え撃つ。そして光刃と刀が衝突して相殺し合いフラットは歩を更に前へと進めたのだが、その進路を巨大な蒼光の塊が塗り潰していく。


ドゥオ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”ン!!


 互いを結ぶ最短距離を特大のプラズマ砲に潰され、フラットは直撃を貰う寸前で何とか身を横に投げ出し地面の上を転がった。回避というよりも横転に近い形と成った訳だが、そんな事情など敵が汲んでくれる筈が無い。桁違いな熱が空気を膨張させて生み出した爆音の余韻まだ残る中、次の爆発がフラットへ向け放たれる。


ドドドドドドドドドドドォォォォォォォォンッ!!!!!!


 再び小さな蒼い球体が広範囲へとばら撒かれ、突如その爆撃予測範囲へと放り込まれたフラットは二本足で立つ事すらままならない状態のまま更なる回避を余儀なくされた。背後から聞こえる爆音を背負ってその黒一色の暗殺者は四這いの状態で獣が如く動き、自らを焼き焦さんと迫る熱より逃げる。更にその中で人間離れバランス感覚を筋力を用い四這いから超低姿勢の二足歩行へと移り、会場の実に半分を埋める程の爆撃範囲より脱した。 そして進行方向を左へ直角九十度曲げ、更に標的との距離を詰めていく。


…ドォンッ、バリ”リ”リ”リ”リ”リ”リ”リ”リ”リ”リ”リ”リ”リ”リ”リ”ィッ!!!!


 しかしそうして漸く攻勢のチャンスを得たフラットであるが、敵の持つ無限の手数という壁は更に高く彼の前へ立ち塞がる。 

 バルハルトは相手のアクションに対応し更なる理不尽を解き放った。彼はフラットの接近を感知し即座に右掌の中へ稲妻状にしたエネルギーを纏めて槍を作り、それを敵が効果範囲内に入った瞬間地面へと突き立てたのだ。そうして地面に触れた槍より雷撃が拡散、彼を中心として半径三十メートルを踏み込んだあらゆる生命体を即死させる死地へと変える。

 これでフラットが彼の元へと到達する事は不可能となる、そう思われた。


ブゥオンッ………


 だがそのバルハルトが生み出した稲妻の槍が地面へ突き立てられ、電撃が地面を伝い拡散していくのを感知したフラットは宙へと跳躍。更に直後迫ってきた衝撃波もクレーター型加速装置をフルパワーで起動し突き破り、地上を覆う蒼白のスパークを当意即妙に飛び越えバルハルトの右斜め上方へと爆煙の中より姿を現す。

 そして漸く辿り着いた敵の首へと、全身全霊を乗せた一撃を振り下ろした。


 しかしその刃が首に触れる寸前、フラットの紫光で描かれた瞳の様な模様と鎧の内側で見開かれたバルハルトの瞳がピタリと重なる。



ッドオ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”

オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”ンッ!!!!!!!!



 それは凄まじい攻撃範囲と殺傷能力の脇を擦り抜け何とか辿り着いた勇者に対する余りに理不尽極まる神の仕打ち。碁盤を引っ繰り返し全ての努力を無に帰されたかの如き理不尽。

 数え切れない程人間の血を吸ってきたフラットの黒刀がその首に触れる寸前、バルハルトの身体がまるで今までの攻撃全てがお遊びだったかの様に見えてしまう程の爆発を発したのである。全体重をその刀に乗せた状態。互いの殺意に満ちた息遣いが聞こえそうな程の距離。そんな詰み状況へと知らず知らずの内に誘い込まれていたフラットがその常識の範疇から逸脱した超火力より逃れる術は最早残されていなかった。


 フラットの真っ黒なシルエットが太陽を思わせる程の閃光に呑み込まれ、勝負が決したのである。





「………………お前は、一体何なんだ?」


 しかし、そうして結果だけ見れば一歩も動かず圧倒的勝利を掴んだ男が爆発の残響消えた直後に発した言葉へ付けていたのは疑問符であった。

 それは余りに異常だったのである。周囲を包んでいた黒煙を吹き飛ばし、その中から出てきた敵の姿が。


 爆発の直撃を受け出てきたフラットの身体はパワードスーツの全体に亀裂が走っており、その割れ目から煙が噴き出していた。そしてまるで苦悶の音か何かの様にギギ、ギギィィッと謎の摩擦音が体内から溢れている。

 何かホラー映画に出てくる怪物の如くになってしまった外見、しかしバルハルトが強く異常を感じたのは内面の方。これ程完膚なきまでまでに打ちのめされ多大なダメージを負ってもなお躊躇無く立ち上がり、何事も無かったかの如く既に刀を振り上げているその精神性の方であった。


 奴の顔はパワードスーツのヘルムに隠されて見えない。だがその漆黒のスーツに隠された奴の両目は、間違いなく一切衰えの無い殺意の炎で自らを睨んでいるのだ。


「…………………………良いだろう、決着を付けてやる」


まだ決着は付いていない、そう確信した。

 其処でバルハルトは依然刀を振り上げたまま此方を見据えるフラットへ右手を向ける。奴の身体は現在の体勢を保っているだけで小さく振れており、加速装置の紫光も何時の間にかかなり弱くなっていた。恐らく奴のスピードを生み出しているエネルギーは即産即消されている訳ではなく、何かバッテリの様な物へ蓄えられそれを切り崩して加速を実現しているのだろう。だとするのなら、このまま時間を掛け耐久戦へと持ち込めば無限のエネルギー源を持つバルハルトが確実に勝利出来る。

 だが、そう腹の中で零し彼はその必勝方を押し退けた。物理的な勝利では奴を本当の意味で倒す事は出来ないのである、精神的な意味でも完膚無きまでの完全勝利を叩き付けない限り目の前の男は何度でもゾンビの如く蘇り自らの前へ立ち塞がる気がしていたのだ。


 そしてその完膚無きまでの完全勝利の為、バルハルトは敢えて逃げも隠れもせず次の一撃で全てのケリを付ける覚悟を決める。


ウウウウウウゥゥゥゥゥ……………………ブゥオンッ


 短い獣の唸り声の様なチャージ音の直後、クレーター型加速装置の起動音と共にフラットの身体が音速の壁を越える。そして放たれた標的の首へ繋がる最短距離を一直線になぞる乾坤一擲の突き。

 それに対しバルハルトは己の内で無限に湧き出るエネルギーを右腕一本へ集めこの戦いの集大成とも呼べるフル出力の衝撃波で迎え撃った。

 

 そして二つのエネルギーが正面衝突。正反対のベクトルを持つ巨大な力の衝突は一瞬空間の歪みすらも発生させ、その一瞬が過ぎ去った後に残るのは誰にも文句の付けようが無い決着のみであった。



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