神と悪夢の再会
「‥‥私は幻想から離れたくないです…貴方が好きなのです…
悪夢は止められないのですが…傍に居させていただけないでしょうか…?」
彼はしばらく私を見つめ泣き出しそうな顔をしながらそう言った。
とても申し訳なさそうに言う彼を見てなぜか私も悲しいと感じた。
「…貴方は私を幸せな気持ちにさせます‥
何故か懐かしさ覚え、貴方を悲しませたくないです…
悪夢を見続けてもいいので私も一緒に居たいです…」
言い終えた途端、嬉しそうな顔の彼に抱きしめられた。夢の中でもいつも悲しい表情をしていた彼の初めて見る喜んだ顔は普段の何倍も綺麗でとても幻想的だった。
「無事転移できたようじゃな。ふぉっふぉ」
気づくとそこには白いペガサスに乗ったおじいさんが居た。
私の前に悪夢が立ち私を背中に隠した。
「心配せずとも人間なんぞ興味もない。わしの仕事をしてくれればそれでいい」
「お久しぶりです、創造神様。お元気そうですね」
「お前が勝手にいなくなって仕事が増えて迷惑しとるわ」
「それはそれはご迷惑をおかけいたしました。」
「観察者について早くお話ください。私は貴方様を捨てそんな人間を愛した汚れた馬と少しでも一緒に居たくありません。」
悪夢と創造神の話を遮って神を乗せているペガサスが言い放った。
悪夢は気にならないらしく私に見つめられていることに気づき嬉しそうに抱きしめてきた。
「そうじゃな。さっさと退散するとしよう」
まとめると観察者としてこの世界にいて、指示する通り仕事をしてくれとのことだった。
主な仕事は重要な存在の保護や不要な異分子を排除。
現世で生活をする観察者は誰もやりたがらないので、勝手に降りて行った奴と少女にやらせることにした。お互い認識できるようにしてやったのだから感謝して仕事をしろとも言っていた。
「わしに感謝し真面目に働くがいい」
神様の話が終わった途端、私たちの返事も待たずに神を乗せた神馬はさっさと行ってしまった。
居なくなったのを見届けて私は今後の相談をすることにした。
「あれ神様なんでしょうか…?
ナイトメアさんはこれからどうしましょう?」
「あんな感じですが神の一柱です。
リナリア、私のことはメアと呼んでください。
私は貴方と一緒に居れるのならどこへでも着いていきます」
「…メア…私は夢姫として生きてきました。
貴方からはリナリア…リアと言われるとどこか懐かしく感じます。」
「リア…私もどこか懐かしいです…」
「なんででしょうね…
…とりあえずここから出ましょうか。
でもカギをかけられてしまったようですし、大きな音を立てたら捕まってしまいそうですね…」
「その点はお任せください」
メアが指を鳴らすとあの黒い煙がどこからか現れた。
黒い煙はどんどん増えていき部屋のみではなく扉を開けて部屋の外にも影響しているようだ。
「では行きましょうか?」
そう言うと私はメアにお姫様のように抱えられ部屋から出る。
部屋を出ると城の守り手であろう騎士やメイド、執事、貴族の格好をした人が苦しそうな顔をして寝ていた。黒い煙の影響か床は黒い粉のようなものがたくさん落ちている。
あの煙を吸い込んだことにより悪夢を見ているようだ。
「彼らには申し訳ないですが、僕の悪夢でお休みいただいております」
「抱えて頂きありがとうございます。皆さん素敵なメアの悪夢で眠っているのですね。」
私たちは寝ている人や遊んでいる生き物たちを横目に出口を探して歩いていく。