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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

悪役令嬢シリーズ

ざまぁと悪役令嬢と猫

作者: Tsuna
掲載日:2020/06/07

{誰かの妄執}


私は王子が嫌いだ。

殺したいくらいに。破滅させてやりたいくらいに。

アイツは私の大切なものを踏みにじった。


切れ味の鈍った刃物で何度も切りつけて、どれだけ悲鳴をあげようと甚振って。

残酷な亡骸を。











-----------------------------

{公爵家令嬢のクリスと馴れ馴れしい侍女ローズ}


「はぁ」

あまりにも大きくため息を吐くとはしたないから出来る限り抑えて。

本当はため息も吐くのもあまりよろしくないのだろうが、流石に笑顔でやり過ごすことは出来なかった。


「それは本当なのかしら?第二王子様が令嬢と仲良くしてるなんて」

もしそれが本当ならコトだ。


「本当ですよー。わたしこの目で見たんです!クリスティーナ様がいながら他の令嬢に鼻を伸ばしていたんですよー信じられますか!?多分他のものに聞いても、噂について知っていると答えると思いますよ」


「私と同格以下の家でよく王子に近づけましたねー。男爵家の娘なんてほとんど平民ですよー」

彼女は饒舌にしゃべる。黙っていれば儚げで美しい容姿だというのに。


思わず呟く。

「あなたも私に対して世間一般的な常識から見れば馴れ馴れしすぎる気もしますがね……」


彼女の態度も馴れ馴れしいとは言ったものの別に彼女の態度を改めさせたいわけではない。

彼女は隙を晒しはしないのだ。主人以外居ないからこそ、こうやって砕けている。

流石に公の場でこんな態度であったのならば問題であろうが、公の場では彼女は見た目通りの貞淑なメイドで通っている。

一応、公爵家のキツイ面接を得て、私の侍従に一年ほど前からなって、交代していないのだから優秀なのだ。


別に権力を笠に暴君になりたいわけではない。

彼女から上の者に対しての態度を説かれると少し笑ってしまいそうになる。


まぁ似ているが彼女からすればきっと別物な態度なのだろう。

自分が私に対する態度と、噂の男爵家令嬢が王子にする態度は。

若しくは同族嫌悪で強く忌避しているか。


「彼女に釘を刺しておきますかー?それとも駄目元で王子に注意か」


「難しいわねぇ。王子に注意して不仲説をことさらに唱えられるのも癪ですし。かといって男爵家の娘に公爵家が釘を刺したらそれはもう、死刑宣告一歩手前でしょう」


あの碌でもない王子のことだ。私が言ったことの逆を嬉々として行いそうな気がする。

故に王子に対しての注意は却下。


かといって、男爵家の少女に公爵家の人間が注意を行ったらそれは事件だ。

責任者探しが起こって物理的に誰かの首が飛ぶ事態が起こりかねない。


「かといって放置も出来そうにないわねぇ」


うーん。なんでこんな面倒事を抱え込まなきゃいけないのかしら。

別に私は王子と結婚したいわけじゃないのに。

まぁ私は――公爵家の人間だ。夢見る少女ではない。

王に忠誠を誓う臣民だ。


それ故求められていることは私情を挟むことではなく、王国にとって利がある行動をすること。


「決めました。ローラ、あなたが少し注意をして様子を見てください」

「権力狙いか単に恋愛脳なのか」


権力狙いだったらまだ良い。一応は計算ができると期待して「オハナシ」が出来る。

流石に王子の気まぐれに縋って公爵家と喧嘩はしたくはないだろう。

しかし恋愛脳だったら――考えるのも恐ろしい。

注意が恋を燃え上がらせるスパイスに成りかねない。


しゅういのひとにとめられてなお、しんじつのあいをつらぬく!

とかなったら最悪だ。


しかも恋愛脳というものは得てして感染してしまうものだ……

王子に感染しても厄介だし、他の人間に感染してもこれまた厄介だ。


「了解です!」

頼れる侍従の力強い返事を聞きながら最悪のシナリオを想像した。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




{幕間で笑う少女}


少女は嗤った。

計画通りに進みだした と。

思う。クリスティーナ様には悪いわね。 


別に彼女に恨みはないけれど――


悲願のために、あなたを使わせてもらうわ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





-----------------------------

{公爵家令嬢と悪化する状況}


男爵令嬢と王子の恋は燃え盛っていた。


はぁ。深くため息。

「どうしてこうなったのかしらねぇ」


「状況を確認したいわ」

「1つ。男爵家令嬢様は恋愛脳。単に権力を狙った強かな女ではなく、王子に助けられたからゾッコン。

権力狙いではないから計算は出来ない、と」



「あなた以外にも聞いてみた所確かに全員が知っていたわね……」


ローラから報告を受けてしばらくした後いろいろな方に聞いたが全員知っていると答えられた。

もみ消しは無理だろう……

知っている人が少ないから、隠蔽は成立するのだ。

聞いた人全員が全員知っているようでは漏れ出す。


「2つ。王子に対する反感が増えている。また、男爵家令嬢様は軽いいじめのような物をされていると。

寧ろそれで悲恋は盛り上がっていると。王子に対する反感も恋を盛り上げるスパイスと…」


「3つ。いじめの首謀者は私になっていると」

ローラは全てに頷いた。


「ありがとう。下がっていいわ」

はぁ。どうしていいのかが全くわからない。状況は考えうる限り、最悪としか言いようがない気がする。


正直彼女に愚痴を零したい気持ちもあるのだが彼女をそこまで信用してはいけないと曖昧な勘が叫ぶ。


彼女には私のぐち、公爵家令嬢の言葉を聞いても他所に漏らさず、原因を解消しようとしない。

そう断言するには彼女と関わった日数は長くない。


ローラを下がらせた後、ひとりぼっちの部屋で誰に聞かせるわけでもない言葉を紡ぐ。

「私の領分を超えているわ。なんだか状況がうまく行き過ぎている気がする」

「まるで後ろに人形遣いがいるみたい」

「このままいくと王子が失脚して、私も地位を相当落とすでしょうが……メリットが有る人間は限られている」


第一王子は名君で何か大きな不祥事がなければ彼が次代の王でほぼ決定だ。

翻って、私の婚約者の王子、第二王子を王様にすることによって甘い汁を吸おうとする人はいるかも知れないが……逆にわざわざ王子を失脚させる理由がわからない。


じゃあ私関連かしら?でも公爵家どうし仲も悪くないのよねぇ

私関連で被りそうな汚名は 王子を止められなかった、婚約を破棄されたあたりかしら。


分からない。しかし手に負えないことは分かる。

一応様々な手を打ってはいた。しかし、全てが逆効果だった。いや、逆効果にされていた。


流石に裏に誰もいないとは考えられない。

あの儚げ男爵令嬢?……それだけの裏工作が出来る身分からしら?


目的が一切分からないずキモチワルイ。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






{夜会 婚約破棄当日 }



パーティーのエスコート役はお兄様にお願いした。第二王子様は男爵家令嬢のエスコートに忙しいはずだ。

お兄様と適当に夜会を楽しんでいる振りでもしていたら第二王子様が絡みに来た。

「誰だその男は!」

誰だその女は。王子の袖をちょこんと握っている令嬢は。


「父上に学園での私の様子を脚色して伝えたな!私の陰口を言って自分は他の男と逢引か!」

逢引の意味、違う。密かに会ってないし…。

お兄様の手は凄くこわばっている。今にも殴りかかってしまいそうだ。

そっと手を添える。


「私は陛下に学園はどうか?と聞かれたので正直に答えただけですし、陛下は私が悪意を持って情報を伝えても自分の情報網で真偽を確かめられると思いますが」


「あぁ言えばこういう!」


が、腹立たしげな顔が、楽しいことを思い出したかのように、変わる。

「まぁいい!今日を持ってこの関係は終わりだ。」


「おっしゃられる意味がよくわかりかねますが……婚約解消ということでしょうか?」

私達の周りに人が集まってきた。

しかしどっちを冷ややかに見ているか?と言われれば私の方だった。


学園での噂は寧ろ悪化していっていた。

私が王子に注意したのも良くなかったのかも知れない。


はぁ。婚約解消。 あなたは私の大切なものを踏みにじる。

どれだけ他の人に迷惑を掛けるか。お母様、お父様、お兄様にどれだけ心労をかけるか。


表情に出ていたらしい。


王子は嗤った。愉快そうに。私の傷つく姿が楽しくて堪らないように。

「あぁそうだ。お前との婚約は破棄する!」


「はぁ。そうですか。では両親と婚約解消について話し合ってきます。話は以上ですか?」

絶対それだけなはずがないのに、希望を持っている自分が嫌だ。


「いーや!この場を以てお前を断罪する!」

わーお。


あまりにも罪状と煽り文句が長すぎたので端的に。

教科書隠す。

水かける。

実家に放火すると脅迫する。

階段から突き落とす。

ドレスを踏みにじる。

etc

などのことを私にされたと男爵家令嬢様は仰っているそうだ。


ちなみに男爵家令嬢様は一言も喋っていない。

袖をちょこんと震える手で持っているだけ。


おかしい点がありすぎる。

しかし噂が広がりすぎたせいで誰も疑わないのだろうか?


「私はまずその方を知りませんが」


「白白しい!惚けおって!」

王子様は口の端を上げながら私に怒鳴る。


「全て証人もおらず……全部その方が言っているだけ。どれだけ信憑性があるのですか?」

もう疲れ果ててきた。


「お前ローザの事を疑うのか!」

あ、はいローザ様というのですね。うちのローラと名前似てますね。

むしろなぜ信じられるというのだ。


「信憑性が低いと言っているだけで」

私の話は耳を傾けてはもらえないのですね。


「お前!」

王子の怒鳴り声。


「もうやめてください!」

それをきっかけとした男爵家令嬢の絶叫のような叫び声。


「アラン様……もうやめましょう……」

そのまま何か語りだした。


「どういう意味だ?」

王子がいぶかしげに男爵家令嬢を見る。


「私はもう限界です。」

そういって彼女はドレスを()()捲った。

露出される傷一つない白い足。

「階段から落ちたのも嘘です。傷一つないです。」


「なんでそんなことを言うんだ!」

王子が信じていたものに裏切られたような顔をしている。うん?

状況が全くわからない。これは誰が書いた筋書きで、私に当てられた役割は何?


「教科書も水掛けも全部全部、そんなことされていません!」

「私はもう限界です!アラン様がクリスティーナ様と婚約破棄出来るように被害者の振りをすることはもう無理です!私に嘘の事を言わせるくらいなら自分ではっきりと言えば良かったじゃないですか!」

「私もあなた様に気に要られたいがために、あなたの言ったとおりクリスティーナ様に虐められていると周りに吹聴しました。私も同罪です!しかしもう戻ってきてはくれませんか!もう人の道を踏み外すのは終わりにしませんか!」


ポカーン。何がなんだか。しかし王子の間抜け面は美味しい。

そんなことを現実逃避的に思った。あぁこのあとどんなことが起こるのかということは考えたくもなかったから。


「私は王子に気に入られたいがために、彼の命令通り被害者の振りをしていました!」

そう、男爵家令嬢ローザは大勢に向けて宣言した。


王子のメンツと立場は地に落ちた。
















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

{蛇足の謎解き}


幾つか疑問点が残っている。

「ねぇローラ。幾つか質問をしていいかしら?」

私はローラに問いかける。

公爵家令嬢として聞いておきたい。


「はい。なんでも聞いてください。」

ローラはいつもの笑顔だった。


「ねぇローラ。私はあなたから虐めは実在していたとの報告を受けていました。」


「調査不足で申し訳ない。」

実在していない筈のいじめをあったと報告しているのだから調査不足だろう。若しくはー


「ねぇローラ。ローザ様の言動少しおかしくなかったかしら?」


「一応辻褄はあっていると思います。」

流石にそんな脳内お花畑はいないと思う。

そして突き飛ばされた傷が袖を少し捲ったところに見えなかったからといってなかったという証明にはならない。


「この件で得をしたのは誰かしら?」


「クリスティーナ様が一番被害を被ったかと。」

ローラははぐらかした。


「少し質問を変えましょう。あなたはこの件で得をしたかしら?」


「特に。寧ろ被害のほうが大きかった気がします」

常識的に考えてそうだ。私は彼女と王子の関わりを知らない。

しかし、何かを生み出さずとも得をすることはある。


例えばー復讐が成功したときのような。


「ねぇ。ローザとローラって名前似ているとは思わない?」

「ありふれた名前です」

確かにありふれてはいる。しかし、姉妹に似た名前を付ける風習がこの国にはある。

年齢が同じ娘がいたらその風習に乗っかるかも知れない。


「ちなみにローラのご実家はたしかロバート家よね」


「はい」

ローラはシンプルに首肯した。


「ローザのご実家はどこかしら?


「確かロバート家の分家だったかと」


「凄い偶然ねぇ」



「それで動機は何かしら?」


「猫です」


「猫?」

急に猫?


彼女は説明を付け足した。

「王子に猫を殺されたんですよ。ローザと一緒に大切に育てていた猫を」


「刃物で何度も切りつけられた猫」


「私がうっかり現場を見ていたとも知らずに」


「お忍びで変装はしていましたがね」

彼女は淡々と言った。何も感情を込めようともせず。しかし激情は伺えた。


「そう。ご冥福をお祈りするわ」

なっていっていいかわからず、出てきたのはこんな言葉だった。


「私のことは出来れば王子やローザと同じように牢屋に入れていただければ」


「彼女ばかりに責任を押し付けるわけに行きません」


思わず呟く。

「王子様の加虐趣味はいろんなところで出ていたのね」


「してはいけないけど感謝を。ありがとう」


あぁやはりこれは復讐だったのか。

二人がかりで。


ローザはバカ王子の籠絡を。

ローラは私に情報を流し、行動を誘導した。


一応事実として虐めはあった。

しかし、夜会では彼女は王子様に「いじめがあったという嘘」を強要されたとデマを流した。

私は単なる名前だけの人。

いじめも行ってはいないし、止められもしなかった。




「騙してごめんなさい。でも、あなたの侍女でしあわせでした」

そう、彼女は儚げに笑った。


夢を見失った彼女達は一人の人間を徹底的に貶め、そしてようやく笑った。

私には分からない。








「ミャー」

どこかで猫が鳴いた気がした。

鳴き声は遠く、喋っていたら聞こえないほどだろう。


しかし私の傍には誰もいない。


読んでくださったことに感謝を

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 明らかに復讐要素あるよね。 [一言] タグに流石に復讐ってタグ付けた方が良いと思いますよ。話は面白かったですよ。気になったのはその位です。
2020/06/08 05:29 退会済み
管理
[一言] だれがどのセリフなのかわからん!
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