消費税の軽減税率制度が何故ダメな制度なのか知っていますか?
消費税の軽減税率に対する批判は多い。
けれど本質的な批判は少ないと感じている。
ここで最も本質的な批判について述べたいと思う。
まずは制度概要について
知ってのとおり消費税率を10%にしたとき、食料品などの一部を8%にする制度である。
ここで8%になる線引きで不合理が生まれている。例えば、外食10%だから立ち食い蕎麦や牛丼屋は10%、すし屋の出前は持ち帰り扱いで8%とか。水道水飲んでも10%で、ミネラルウオーター8%とか。新聞が何故か8%とか。
後はコンビニのイートインが10%だけど、本人が定員に申告しない限り8%でいけてしまう、とか。
線引きが不合理、混乱を呼ぶ制度として批判されているのを聞いたことがあるのではないだろうか?
さらには、経理の手間がかかり面倒。軽減税率の対象品目をめぐって政治家への陳情合戦がおこり、利権化する、等の批判がある。
上記の批判は妥当なものではあるが、本質的なものではない。
「じゃあ、本質的な批判って何?」
突然の会話形式だが、作者の想定する読者の声である。この形式で話を進める。
本質的な批判は、そもそも効果がない、というものだ。
「食料品は税率が安くなるんだし、効果があるんじゃ?」
そう思ってしまうところが、トラップになっている。確かに君は若干の得をする。しかし金持ちはもっと得をする。
「ん?」
考えてみれば簡単な話だ。高級食材も8%なのだから。金持ちの方が食費は高い。より得をするのは金持ちだ。
低所得者に小さな得を、高所得者に大きな得をさせる制度だ。
「えーと、エンゲル係数の関係で、比率的には貧困層が得をするとか聞いた気が……」
正直、庶民の計算能力をバカにした説明だと思う。
例え話をしよう。年収200万円の低所得者と年収2000万円の高所得者がいるとする。
低所得者に4千円を、高所得者には8千円を配ります。低所得者にとって4千円は貴重だから喜ぶでしょう。高所得者にとって8千円はあまり喜ばない。
得した気がするでしょう、と言われて納得できますか?
「……できない」
比率で得をするというのは、実は金額ベースで損をする話である。
年収比率で低所得者が0.2%、高所得者が0.04%なので、低所得者の方が5倍も得した気になれますって、意味がない数値のマジックだ。実際には、4千円ほど高所得者の方が得をしている。
本来、食料品を軽減税率の対象にするのは、生活必需品であり、低所得者に配慮したのが理由だったはずだ。
高所得者の方が得な制度を採用した時点で、そもそも政策として効果がない、と言える。
「何でこんな制度を導入するだろう?」
いろいろ理由があるが、一つはバラマキと批判されないためだ。
「バラマキ?」
低所得者が4千円得をし、高所得者が8千円得をする制度より、全員に5千円配る制度の方が、政策の効果が高い。
「全員に一定額を配るって、なんかバカっぽい気がする」
残念ながら軽減税率の効果は、そのバカっぽい政策に負ける。
ただし、利点もある。バラマキ批判をされないことだ。
そのために、より複雑で、より面倒で、より効果がない制度を採用した。
それが、消費税の軽減税率制度だ。
「うわー、これはバカじゃない」
バカだと思うだろう。
ただ、バカにされているのは国民だ。
効果のない、イメージだけの政策を推進して、票が取れると判断されたのだから。
「効果がないと分かっていて採用したの?」
イエスだ。
導入推進した公明党と政府は、次の理由を軽減税率の導入目的としてあげている。
負担感の緩和
「負担感?」
注目すべきは、負担の緩和ではなく、負担感の緩和であるところだ。
効果がないのが分かっているので、自ら負担感と言い、イメージ政策であることを認めている。
「イメージだけの政策ってことか〜」
もっと言うなら、そもそも軽減税率という名称自体がイメージ戦略でつけられている。
8%を維持するだけで、軽減って。
本当は複数税率制度と呼ぶべき政策である。
もう一度結論を述べておこう。
消費税の軽減税率制度は、そもそも効果がない。
「なるほどね〜」
効果がないだけでなく、最初に上げたような様々な弊害がある。
もうこの制度は、社会にとって害であると言って良いだろう。
「おしまいかな?」
最後は個人的な感情で終わらせたいと思う。
私は公明党が嫌いだ。
「いいの? その締め」
いい。