第82話 里帰り
前回のあらすじ
ギルドで地竜の討伐報告をするユーマ達。
彼らはこの半年でAランクの冒険者となり、それぞれが雷帝、賢者、闘王、聖弓の異名を得ていた。
ギルドに挨拶を済ませて3日経ち、僕達は荷物を纏めて家の外に集まった。
そこには僕達の従魔の姿もある。
皆半年前にその存在が公になったから、隠す必要もなく外に出ている。
アインは元々存在が知られていたから自由だったが、クルスはミニサイズになる事もなく、本来の姿でラティの傍にいる。
ただし、建物の中に入る際はミニサイズになるけどね。
レクスもクレイルの亜空間に入らず外の世界に出ている。
アリアもミニサイズではないが、かといって本来の姿ではない。
ミニサイズ化の力を応用して4メートル半ぐらいの大きさに縮小化している。
人型にもなれるが、実はアリアはこの姿になる事をあまり好んでいなくて、普段はこの大きさかミニサイズで過ごしている。
にしても、アリアのこの大きさは、もし二足歩行だったら完全にオーガ〇イドになりそうだ。
なんか、荷電粒子のブレスといいこの大きさといい、アリアが段々ゾ〇ド化している気がする……。
また、アリアは人化の術ができる様になった頃、頭部に生えていた2本の角に加え、額部に新たに1本の角が生え始めた。
これはアリアによると竜神の証の角であるらしく、成体の竜神になる頃に生え始めるそうだ。
つまり、アリアはここから本当の大人の竜神になるという事で、今はまだコブの様な感じで完全には生えていない。
「じゃあ、皆忘れ物はないわね?」
コレットが確認している。
「大丈夫。必要な物は全部収納魔法の中だよ」
「あたしも大丈夫」
「俺もだ」
「じゃあ、この家とも暫くはお別れね」
コレットは長年住んでいた家を見納めるべく、家を見つめている。
「大丈夫だよコレット。またエリアル王国に行く時はここに戻ってくればいいし、僕の魔法なら何時でも帰ってこれるんだから」
「そうね。ユーマの空間魔法なら簡単に帰れるし」
コレットの言葉に、ラティとクレイルもうんうんと頷いている。
……なんか僕、いずれは皆のタクシーにされそうな予感がする……。
お母さんもこんな気持ちでディメンジョンリングで転移していたのかな。
「と……とにかく、出発しよう。僕に続いて」
僕は空間魔法を発動させて渦を潜った。
出た先はアルビラ王国内にある僕達の家の前だった。
実はロストマジックの修業が完了したら、1度アルビラ王国へ里帰りしようと、予め皆と決めていたのだ。
「ここがユーマ達の家か。お前ら家は隣同士だったのか」
「うん。でも、基本は全員僕の家にいたけどね」
すると、僕の家の扉が「バン!」と勢い良く開き、2つの影が飛び出して僕の上にのしかかった。
「オン!」
「クオン!」
それはお父さんとお母さんの従魔のバルバドスとフラウロスだった。
どうやら、僕の匂いと嗅ぎ取ってきた様だ。
「バルバドス! フラウロス! 久し振り!」
僕は2匹との久しぶりの再会を喜びながら2匹の頭を撫で、2匹も嬉しさを伝える為に頭を摺り寄せたり顔を舐めたりしてきた。
2匹が開けた扉から、更に人が出て来た。
「バルバドス、フラウロス、どうしたんだ? いきなり外に出て……ってユーマか!?」
出て来たのは僕のお父さんのゲイルだった。
「ただいま、お父さん!」
「久し振りです、おじさん!」
「おお、ラティちゃんも! でもどうして……ぐへぇっ!?」
「ユーマにラティちゃんなの!? ねえ、もっとよく顔を見せて!」
そこにお父さんを踏み倒してお母さんのサラが飛び出し、僕とラティに駆け寄ってきた。
「ただいま、お母さん」
「ああ……ユーマ。随分と立派になって……」
お母さんは涙目になりながら、僕を抱きしめてきた。
「おいゲイル、何そんなとこに倒れているんだ?」
「そうね。何だか外が騒がしいみたいだけど」
そこに更に2人の人が出て来た。
「パパ! ママ!」
「「ラティ!!」」
出て来たのは、ラティの両親のダンテさんとエリーさんだった。
「ぶぎゅっ!!」
2人はお父さんを順に踏みつけて駆け出し、ラティは2人に飛び込み2人に同時に抱き締められた。
「ただいま! パパ、ママ!」
ラティは久しぶりに親に会えて、嬉しくてその温もりを堪能している。
「処で、お母さん」
「なあに?」
お母さんは僕の質問に抱きしめたまま返事する。
「お父さんはほっといていいの?」
「「「あっ!」」」
お母さん達は自分が踏みつけたお父さんを見やると、そこには倒れたままのお父さんがいた。
「……っ、……っ!」
しかも、時折震えている。
あれは自分への酷い仕打ちに泣いているな。
その後、全員で何とか立ち直らせ、僕達は改めてお父さん達と向き合った。
「以前から書いていた手紙にも書いてあったと思うけど、改めて紹介するね。この2人は、僕達が旅立ってから出会って銀月の翼に加入した、クレイルとコレット。そして、その2人の従魔のレクスとアインだよ」
僕の紹介で、クレイルとコレットは前に出て挨拶した。
「初めまして。クレイル・クロスフォードです。見ての通り獣人で狼人族です。年はもうすぐ16でユーマ達と同い年です。こっちは俺の従魔の、フェンリルのレクスです」
「ウオン!」
レクスもクレイルの紹介で声を上げて挨拶する。
よく見ると、バルバドスがレクスに敬服の姿勢を取っている。
これは同じ狼の魔物でも、その頂点の存在のフェンリルだから、それで頭を下げているんだ。
フラウロスは狐の魔物だが、もっと根元から言えばイヌ科の魔物だから、同じ様に頭を下げている。
「初めまして。私はコレット・セルジリオン。ハイエルフの冒険者で、このクレイルの婚約者です。こちらは従魔の、ティターニアのアインです」
「初めまして、ティターニアのアインです。アリアとは姉妹のような関係で、彼女からはお姉様と呼ばれています。私もアリアを妹の様に可愛がっていますので、何卒よろしくお願いします」
「ああ、これはこれはご丁寧に」
お父さん達は従魔達の中でアリアの他に唯一喋れるアインの挨拶に、頭を下げながら答える。
そして2人の挨拶が済み、お母さんが僕に質問した。
「それでユーマ、何時エリアル王国を出発したの? 手紙には1年後くらいに1度里帰りするって書いてあったけど、出るんならその時に手紙を送ってくれてもよかったのに」
どうやらお母さんは僕達が知らせもなくエリアル王国を出て、今日ここに到着したんだと思っているんだろう。
実は、お母さん達には僕達がロストマジックの修業をしている事は手紙で教えていて、魔法書を貰った後1年後くらいに一旦里帰りすると書いていたりする。
実際は予定より半年も早まったけどね。
それにまあ、今日到着ってのは間違いじゃないけど。
「出発したのはついさっきだよ。僕の新しい力で、エリアル王国からここまで転移してきたんだよ」
僕の返答に、お母さんは頭に「?」をいくつも浮かべながら聞いてきた。
「ここまで転移ってどういう事? もしかして、私みたいにディメンジョンリングでも手に入れたの?」
「違うよ。むしろそのリングの元祖ともいう魔法で来たんだ。よく見てて」
僕は論よりも証拠という事で、再び空間魔法を発動させ渦を顕現させた。
「これって……まさか!?」
「そう。これが僕が身に着けたロストマジック、空間魔法だよ。この渦に顔だけを入れてみて」
僕の指示に従いお母さんはその渦に顔を突っ込むと、お母さんが見たのはエリアル王国のコレットの家の中だ。
「凄いわユーマ! あなた凄い魔法を身に着けたわね!」
お母さんは渦から顔を出して僕の肩を掴み、前後に揺さぶりながら称賛してくる。
「ユーマくんがロストマジックを覚えたという事は、ラティも使える様になったのか?」
「うん! あたしのは重力魔法といって、とても戦闘向けの魔法なの!」
ラティもダンテさん達に自分のロストマジックの事を話している。
「そういえばお母さん、ゼノンさんとイリスさんは?」
僕はこの国に向かったアラアンスを結んだ仲間、赤黒の魔竜のゼノンさん達の事を思い出し、聞いてみた。
「ああ、あの2人なら……」
「ユーマ殿か!」
お母さんが何か話そうとした所で、聞き覚えのある声がして振り向くと、そこには水晶竜の姿をしたスニィとその背に乗せたカミラを連れた竜人族と魔族の2人組、ゼノンさんとイリスさんがいた。
「やはりユーマ殿か! 久し振りだな!」
「は~い、ラティちゃん。暫くね♪」
「イリスさん!」
ラティはイリスさんの所に走り出し、彼女と抱き合った。
イリスさんは慈愛に満ちた眼差しでラティの頭を撫でている。
「ゼノンさん、お久し振りです」
「ああ。ユーマ殿、そなた達の活躍は耳にしている。かなり精進した様だな。その目を見れば分かるぞ」
僕とゼノンさんは拳を合わせて、再会を喜んだ。
因みに、僕とラティのロストマジックを見せたら、2人はそれはもう驚いていた。
「面白かった」、「続きが気になる」、「更新頑張ってください」と思った方は、ブックマークや評価、感想していただけると励みになります。
評価はどれくらい面白かったか分かりますし、1人1人の10ポイントの評価は大きいので、まだ未評価の方は是非お願いします。
ポイント評価は最新話の広告の下に評価欄があり、そこから評価できます。
感想は、確認し次第返信する方針で行きますので、良かった所、気になった所とかがありましたら、是非感想を送ってみてください。
お待ちしております。
次回予告
久し振りに家族と仲間と再会したユーマ達は、団欒の一時を満喫する。
次回、団欒の一時




