第81話 半年間の成長
前回のあらすじ
スタンピードを防いでから半年が経ち、ユーマとラティはロストマジックの修行をしていた。
そしてクレイルとコレットの1年という予想を上回り、半年で習得してしまう。
その翌日、僕達は地竜の討伐依頼の完了を報告する為、ギルドに来た。
今回、従魔組はお留守番だ。
「はい、依頼にありました地竜の討伐証明の地竜の牙、確かに確認しました。これで依頼は完了です。こちらは報酬の金貨50枚です」
僕はこの半年ですっかり親しくなった、リーゼさんの姉のラーゼさんから金貨が入った袋を受け取り、その中身を確認した。
「すげえ、地竜をたった4人で倒したのか」
「地竜っていえば、普通はAランクの冒険者無しの場合はBランクの冒険者が数十人は必要な程の魔物なのに、やっぱAランクは違うな」
周りの冒険者達は僕達がたった4人で地竜を討伐した事に驚愕している。
まあ、倒したのは僕とラティの2人だけなんだけど。
そして、今冒険者達が言った通り、僕、ラティ、クレイルはAランクになっている。
あのスタンピードでの戦いで、僕達はそれぞれ単独で高ランクの魔物を討伐した事と、防衛線での活躍による実績で、特例でBランクを素っ飛ばしてCランクから一気にAランクへと昇格したのだ。
実は、この昇格が多くの冒険者が殺到してきた要因の1つだったりする。
コレットも同時にSランクへ昇格も出来る様になったが、Sランクになる時は僕達と一緒の時だというので現在は保留となっている。
それから、僕達がAランクになった時、僕達が最年少だと言われた。
過去に最年少だったのはお父さん達暁の大地だそうで、その時は18歳だったそうで、僕達はその記録を塗り替えしてしまったそうだ。
「それにしても、これ程の魔物を4人で討伐とは、流石は『雷帝』、『賢者』、『闘王』、『聖弓』の4人ですね」
ラーゼさんも周りに賛同して、僕達を称賛する。
今彼女が言った『雷帝』や『賢者』とかは、僕達の異名だ。
冒険者や騎士は一定以上に有名になると、その特徴などに見合った異名が贈られる様になる。
コレットの場合は元々『聖弓』の異名があったが、僕達はあのスタンピードでの活躍を機に異名が付いた。
僕は雷龍や荷電粒子砲などの幾多のオリジナルの雷魔法やライトニングエンチャントで多くの魔物を討伐した事から、雷属性特化型の魔法戦士という事で『雷帝』の異名が付いた。
ラティは最初の八岐大蛇を始めとし、様々な複合魔法や上級魔法を操り、更にキング種を倒した後も負傷者の回復を並行して戦闘を行い、それでいて無属性の貯蔵魔法によって全く魔力切れを起こさなかった事から、魔法の天才という事で『賢者』の異名が付いた。
クレイルは身体強化と無属性魔法の加速魔法の同時発動での近接格闘戦で多くの魔物を倒した事から、格闘戦の王という事で『闘王』の異名が付いた。
しかも、あの防衛戦にはヴォルスガ王国の武闘大会での僕達の活躍を見ていた人なども参加していたらしく、その人達や話を聞いた吟遊詩人とかの拡張もあってかなり早い段階で僕達の異名が定着した。
「ありがとうございます。それから、僕達銀月の翼は近々この国を旅立とうと思います」
「あら、それはまたどうしてですか?」
ラーゼさんが少し目を見開いて尋ねる。
「元々、僕達は世界を回る旅をしていたんです。この国にはある目的があって来て、それがこの度目的が達成されたのでそろそろ本来の旅に戻ろうと思うんです」
その目的とはロストマジックの事で、今ここで僕とラティが習得したと言ってもいいが、ここを発つと決めた以上無駄な騒動は控えたいから、今は言うまい。
「そうですか。それだと暫くは寂しくなりますね。皆さんはこのギルドではトップの稼ぎを誇っていましたから、それにあてられて他の冒険者の人達もかなり力を入れていたんです。ですから、皆さんがいなくなると暫くはギルドも静かになりそうだと思いまして」
それは知らなかった。
僕達の存在は、このギルドの人達の起爆剤になっていたんだ。
それにしてもトップの稼ぎね。
今思うと、僕達の現時点での全財産はかなりの額だと思う。
お父さん達の下で修業を積んでいた頃、魔物との戦闘訓練を通して稼いだ資金がまだ残っていて、旅立ってから依頼や道中で討伐した魔物を換金して稼いだお金、ヴォルスガ王国の武闘大会の優勝賞金、スタンピードによる緊急依頼での報奨金とそれと別の討伐した魔物の賞金、クレイルとコレットがそれぞれ加入した際の2人の所持金を統合した分のお金。
それらを全部合わせると軽く数百年は遊んで暮らせるくらいはあると思う。
確かにそう言われるのも頷けるな。
「それで、今日はその挨拶もしておこうと思いまして。これまでお世話になりました。」
僕達はギルドに挨拶を済ませて、アリア達が待つコレットの家へと向かった。
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次回予告
荷物を纏めて、ユーマ達は空間魔法である場所へ転移する。
そこはユーマとラティの大切な場所だった。
次回、里帰り




