第80話 あれから半年
前回のあらすじ
スタンピードを防ぎ、ロンドベル国王に後ろ盾になって貰ったユーマ達はコレットの家で休息をとる。
そしてコレットはロストマジックの魔法書をユーマとラティに渡し、2人はロストマジック習得の修行を始めた。
エリアル王国を襲ったあのスタンピードを防いでから、約半年の時が流れた。
この半年で、僕達に様々な人が訪れた。
主に、ドラグニティ王国からの竜人族の訪問者、各国の貴族、高ランクの冒険者から低ランクの冒険者、欲深そうな商人だ。
竜人族は、あの戦いでアリアの存在が世界中に公になった事で、竜神のアリアを拝む為に訪れたり、中にはアリアをドラグニティ王国に連れて行こうとする者もいた。
貴族は、スタンピードで最も多くの戦果を挙げ、更にその過程で死者を出さなかった僕達の活躍を聞きつけ、その僕達を囲い自分の勢力を上げようとした者ばかりだった。
冒険者は、僕達の活躍を聞きつけた事で、高ランクは僕達銀月の翼を吸収して、低ランクは銀月の翼に加入する事で、又はアライアンスを結ぶ事でそれぞれ旨い汁を吸おうとした者だった。
商人は僕達の使うマジックアイテムに価値を見出し、それを譲って貰おうとしたり、アリア、クルス、レクス、アインを譲って貰おうという者達だった。
竜人族と冒険者は自力で引き下がらせたが、その他はしつこく食い下がって来たので、最終手段として2国の王家のメダルをさりげなく見せると、皆青い顔して引き下がった。
やっぱ自分達の下らない欲望で2つの国に喧嘩を売ると不味いからね。
下手をすると国際問題になって、お家取り潰しやその国に出入りできなくなったりして、結局自分達が損してしまうから。
他にもクレイルとコレットがロストマジックを使えるという事と僕とラティが習得中だという事も知れ渡り、それに関しても貴族が殺到したが、やはり王家のメダルで黙らせ、身の安全を確保したりした。
そして僕達はというと、僕とラティはクレイルとコレットからロストマジック習得の修業を冒険者活動を通して行っていた。
2人が言うには、僕達のロストマジックは実戦を積んだ方が習得が速そうだというので、僕達は魔物や盗賊を討伐をする事で、そのロストマジックの修業を積んだ。
この半年で、僕達4人の関係にもいくつかの変化があった。
まずはコレットが正式に銀月の翼に加入した事で、彼女の希望で呼び捨てで呼ぶ様になった。
最初は2か月以上もさん付けや敬語で話していたから上手く呼べなかったけど、この半年で今では普通に呼び捨てとため口で話せるようになった。
ラティは呼び名だけはさん付けで、その他は普通に話せる様になった。
次に、クレイルとコレットが正式に恋人同士になった。
元々2人は以前から惹かれ合っていた様で、あの半年前のレイザード絡みの騒動で、クレイルは後にコレットへの恋慕を自覚してコレットに告白。
コレットもクレイルが冒険者の修業をしていた頃からクレイルの事が気になっていた様で、クレイルからの告白を境にクレイルへの想いに気付き、2人は恋人同士になり、3か月前にクレイルはコレットにプロポーズして、今では婚約者となった。
後、コレットにも僕の前世の事を話した。
正式にパーティーに加入した以上、彼女も僕らの家族になったのだから隠し事せずに打ち明けるという、パーティーのモットーに従った結果だった。
彼女は僕が転生者だという事に驚いていたがすぐに受け入れた。
しかも彼女はハイエルフ故の長く生きてきた勘と冒険者の直感から、結構前から僕の正体にうすうす気づいていた様で、僕の告白を聞いても自分の勘が当たっていた事に驚いただけですぐに受け入れた。
また、従魔達の間には明確な上下関係が生まれた。
アインは僕達の中で最も長く生きていて、加えてアリアの姉的存在でもある事も相まって、従魔の中で最も立場が強い。
アリアはアインと姉妹同然の仲で、パーティーリーダーの僕の従魔であるという事から2番目に立場が強い。
クルスは空気の流れに臨機応変に従い、常に賢い判断をする為3番目に立場が強い。
レクスはその性格がよく言えば素直、悪く言えば馬鹿正直で、戦闘中は常に闘争心が優先され、時には軽はずみな行動をしがちでその度にアリアとアインに怒られており、結果従魔組では最も立場が弱い。
以上が、この半年での僕達の関係の進展具合だ。
そして今僕達は、とある依頼である魔物の討伐に来ている。
戦うのは僕とラティだけで、クレイル達は離れた場所で見守っている。
また、クレイル達の傍に5歳ぐらいの青白い銀髪の美幼女がいるが、これは人化の術で人の姿になったアリアだ。
アリアはこの半年で人化の術が出来る様になり、その姿はその竜の現時点の年齢を人間的年齢に換算した姿となる。
つまり、この人化の術は人間で言うと魔力が安定した事でできる様になったという事だ。
その姿はまるで人形の様で、見ていると思わず愛でたくなる可愛らしい姿だ。
また髪の色が似ている事から、ラティと並ぶとまるで姉妹や母娘の様にも見えた。
でもそれよりも驚きなのは、いつもお姉さん的な存在だったアリアが、人間的年齢で言うと僕達よりも年下だったという事だ。
でも実際の年齢は僕達よりも年上だから、どこぞの小学生になった高校生探偵よりも常識を超えた話だ。
しかもよく考えると、アリアはまだ5歳――人間で言うと――でデビルスコーピオンを圧倒したり、古竜を赤子の様にねじ伏せたという事だから、これからの成長でアリアはもっと強くなるだろう。
さて、詳しい話はここまでにして、目の前の魔物に意識を向けよう。
「ロックオン! ライトニングジャッジメント!!」
僕が上空から落とした雷が正面の巨大な魔物に炸裂する。
すると、その爆煙の中から攻撃を受けた魔物がなおも突進してきた。
「やはり、地竜にはこの程度は致命傷にはならないみたいだな」
僕達が対峙しているのは、依頼の討伐対象の魔物、上級竜種の地竜だ。
地竜は上級竜種の中でも古竜種に匹敵する防御力を持ち、翼はないがその防御力を活かした突進による攻撃を得意とする。
全身が岩盤の様な硬い鱗に覆われ、その外見は前世のコモドオオトカゲを15メートル程に巨大化させたような外見だ。
「これは確かに討伐は困難だろうね。でも、ラティ」
「オッケー、任せて。この半年の修業の成果、見せてやるわ!」
隣のラティはエンシェントロッドに魔力を集め、その魔力の流れが突進してくる地竜の周囲にも表れた。
「行くわよ!!」
ラティの魔法発動と共に、地竜の体が突然地面に縫い付けられたかの様に止まり、そして地竜はそのまま地面に押し付けられた。
これがラティが身に着けたロストマジック、重力魔法だ。
重力魔法はその名の通り、重力を自在に操る事ができ、物体を押し付けたり無重力で浮かせたりと利用できたり、重力エネルギーを圧縮して重力球を生成してダメージを与えたりと、攻撃や防御に優れた強力なロストマジックだ。
これは無属性魔法の中でも数少ない単体で攻撃に使える魔法だからその分制御が難しいけど、ラティはその天才的な魔力制御の技術により、重力魔法をまるで小さい頃から使って来た様に使いこなす事が出来る様になった。
地竜はその強い重力に押し潰され、次第にその鱗に罅が入りだす。
「よし、動きを封じれば、こっちの物だ! どんなに硬い体でも、口内からの攻撃なら致命傷を与えられる!」
僕は雷の魔力を集中させ、ラティはそれに合わせて地竜の頭部の部分だけ重力を戻し、奴の口を開かせた。
「今だ! カオスボルテックス!!」
僕の放った黒い雷が地竜の口の中に決まり、地竜は体内から感電して地に倒れ伏して動かなくなった。
「討伐完了だね」
「やったね!」
僕達はハイタッチを交わし、クレイル達が駆けよってきた。
こうして見ると、僕達はこの半年で結構成長したな。
僕とクレイルはまた背が伸びたけど、身長差はやはり頭半分くらいでクレイルが上だ。
それに、日々の冒険者活動の成果で、一段と鍛えられた体つきになった。
ラティはまた更に体の発育が進んだ。
たった半年で胸はまた一段と大きく膨らみ、既にIはありそうだ。
加えて段々と大人っぽくなり僕の予想通り、他に例え様のない絶世の美少女へと成長している。
コレットはハイエルフな為、歳は取っても半年では外見に変化は全く見られなかった。
「2人とも見事だったわ。ラティの重力魔法は完璧ね。これならもう十分戦闘でも問題なく使用できるわ」
「ありがとう、コレット」
「後はユーマだが、まずはあの地竜だな」
「うん。今回収するから、ちょっと待ってて」
僕は地竜の死体を収納して、皆の所に戻った。
「じゃあ、帰るよ。今度は僕の力で!」
僕は前に手をかざし、魔力を集中させた。
すると目の前に直径2メートル半くらいの青白く輝く渦が現れ、くぐるとそこはコレットの家の前だった。
これが僕の身に着けたロストマジック、空間魔法だ。
これは空間に干渉する効果の魔法で、術者がイメージした場所に転移する事が出来る。
ただし、場所は術者が過去に1度でも行った事のある場所に限定される。
また、転移は2種類あり、1つは今僕がやった渦を潜る事による移動、2つ目がディメンジョンリングみたいな術者と触れている者を纏めて一瞬で移動させる転移の2種類だ。
これは余談だが、この魔法を初めて使った時、あの国民アニメの某ネコ型ロボットの何処へでも行けるドアや壁を通り抜けるフープを思い出してしまったのは僕だけの秘密だったりする。
因みに、この魔法の技術を元に、従魔召喚の魔法陣やお母さんが使うディメンジョンリングが作られたという。
それに今回は移動に使ったけど、僕はこの空間魔法に原理を知った時、いくつかのアイディアが浮かんだ。
それは戦闘でも使える事だが、中でもラティの重力魔法と組み合わせると、とんでもない事が出来る事が分かった。
まあ、それは今後のお楽しみという事で。
また、この魔法はかなり便利で、それこそ昔の様な検問所が閉まる時間に関係なく街には入れるなどと、色々と面倒な事になりそうだが、冒険者の中にはお母さんの様な空間転移型のマジックアイテムを使う人も稀にいるそうで、僕のこの魔法はそれらの根幹的な物なので、転移してもとりあえずは大丈夫だそうだ。
「うん。ユーマの空間魔法も完璧ね。最初は1年は掛かると思ってたけど、僅か半年でここまで使える様になるなんて。これはもう私達が教える事はないわね」
「それじゃあ!」
「ええ、2人の修業はこれで完了よ。おめでとう2人とも」
「やったあ!」
ラティは嬉しくて飛び跳ねる。
それにより服を押し上げる豊かな双丘がプルンプルンと弾む。
「ありがとう、コレット、クレイル」
僕がお礼を言うと、クレイルが僕の胸に拳を置いた。
「やったなユーマ。お前達がここまで来れたのは、俺達の指導に耐えてここまで頑張れたお前達の力だ。だから胸を張りな」
「ありがとう、クレイル。君のお陰で、僕達はここまで来れたよ」
僕は親友と拳を合わせて、僕達の修業は終わりを迎えた。
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アリアの凄すぎる所
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その13、まだ5歳児――人間的年齢で――で第一級危険生物や古竜をぶっ飛ばしていた。
魔物情報
地竜
土属性に特化した上級竜種。Bランクだが、その鱗は岩盤のように硬く加えて魔力耐性もある為、討伐にはAランクの冒険者が動く事もある。翼がないから空は飛べないが、巨体の分走る速度があり、その勢いで突進すると城壁を破壊してしまう事もある。常に走って移動している分、その鱗の内側にある肉は引き締まっていて美味である。討伐証明部位は逆鱗。
次回予告
地竜の討伐報告をする為にギルドを訪れたユーマ達。
そこで彼らの半年の成長が現れる。
次回、半年間の成長




