幕間 その頃 赤黒の魔竜&暁の大地
私はゼノン・ウィンザルグ。
Bランク冒険者パーティー、赤黒の魔竜のリーダーを務めている。
私は、相方の魔族の女性、悪魔族のイリス・ドルリアーナと私の従魔、水晶竜のスニィと、イリスの従魔のヴァンパイアバットのカミラと共にアルビラ王国のとある家に厄介になって冒険者活動をしている。
その家は、私達がアライアンスを結んでいるパーティー、銀月の翼のユーマ殿とその婚約者のラティ殿のご実家なのだ。
私達は以前、ヴォルスガ王国の武闘大会でユーマ殿達と当たり、イリスはラティ殿と魔法勝負を、私はユーマ殿と一騎打ちの勝負を挑み、結果はそれぞれに敗北した。
だが、その勝負を経て私達は心が通じ合い、大会終了後、同じくユーマ殿達と戦い敗北したAランクパーティのマッハストームの面々とアライアンスを結んだ。
そして初めての共同依頼をこなした後、私達はアルビラ王国へ向かう事を話すと、ユーマ殿とラティ殿がアルビラ王国出身だという事を知り、彼らのご両親の事を聞き、私達は驚愕した。
何と、2人の両親はそれぞれ、あの有名なSランクパーティー、暁の大地のメンバーだという。
同時に我々は納得もした。
2人のあの年齢に会わぬ圧倒的な実力が、暁の大地の方々に鍛えられた物だと思うと、自然と納得したのだ。
そして別れの際、私達はユーマ殿から両親宛の手紙を預かり、私とイリス、カミラはスニィに乗ってアリビラ王国に向かって飛び、到着後すぐに暁の大地の家に向かった。
家に着き挨拶をした際に、自分達がユーマ殿とラティ殿の友人だと名乗ると、ユーマ殿の両親のゲイル殿とサラ殿は快く歓迎してくれて、手紙を渡した後、ゲイル殿、サラ殿、ラティ殿の両親のダンテ殿とエリー殿が自分達の家に宿泊する事を提案してくれて、私達はそのご厚意に甘え、この家を拠点にアルビラ王国で冒険者活動をする様になった。
それからは私達はいくつもの依頼を受けては達成し、着実に実績を積み重ねていった。
そして2ヶ月以上の時が経ち、
「おめでとうございます。只今の依頼完了と共に、ゼノン様、イリス様はAランクに昇格となります」
私達は順調に依頼をこなし、徐々に功績が認められて、そして今遂に私達はAランクの昇格が認められた。
受付のリーゼ殿が私達に笑顔で告げて来る。
このリーゼ殿は聞く所によると、ユーマ殿とラティ殿がまだ仮登録時代の頃から2人の担当をしていた受付嬢なのだそうだ。
その為、私達が最初に2人とアライアンスを結んでいると話すと、彼女はそれ以来積極的に私達の受付をしてくれる様になり、今ではそれなりに親しい相手だ。
受付で昇格の手続きを済ませ、スニィとカミラの元に戻ってきた。
「ご主人、どうかしましたか?」
「ああ、私達のAランクへの昇格が認められた。これで漸くバロン殿達に追いついた」
「そうですか。おめでとうございます」
このままギルドで食事をしながら、この後の計画を立てていた時、ふと周囲から話し声が聞こえた。
「なあ、聞いたか? 先日エリアル王国で起きた、」
「ああ。スタンピードが起こったんだろ? 今冒険者の間じゃ結構話題になってるぜ。多分知らない奴はいないんじゃないかな」
周りの冒険者達は、先日エリアル王国で起きたスタンピードの話題で持ちきりだった。
そういえば、ユーマ殿達はエリアル王国に向かうと言っていたな。
「それでさ、これは新しい情報なんだけど、そのスタンピードでは何と死者なしで乗り越えたらしいぞ」
「おいおい、いくらなんでもそれはないだろ。スタンピードになるとその国全体の冒険者や騎士が一丸になって戦うけど、それでも必ず大規模な死者が出るだろ」
「いや、それがそのスタンピードに参加した冒険者の中から、4人の英雄が現れたらしいんだ。その4人全員がとんでもない実力を持っていて、しかもそのうちの3人はまだ15歳くらいなんだそうだ」
「ブハッ! おいおい、それは絶対にガセネタだろ! そんな成人したばかりの子供がスタンピードで活躍した英雄なんて、絶対にないって!」
聞き手の方はその話が余程ツボに嵌ったのか、語り手に言葉に笑いを上げながら酒を飲んでいる。
「いや。これは確かな筋から聞いた事だから確実に本当だ。それで、その子供達の従魔が、竜神にフェンリル、それにグリフォンなんだそうだ」
ッ!?
今のは聞き違いか!?
今、あの語り手は竜神にフェンリル、グリフォンといった。
イリスもスニィも私と同じ様な表情をしていた。
という事は聞き違いではないという事か。
「すまない。今の話、もう一度よく聞かせて貰えないだろうか?」
気が付くと、私達はその語り手に声を掛けていた。
――――――――――――――――――――
その後、私達はすぐにゲイル殿達の所に戻り、ギルドで聞いた事を話した。
「……という事なのですが、どうでしょうか?」
「間違いない。その子供の冒険者はユーマにラティちゃん、そしてユーマの手紙にもあったクレイルくんの事だ」
「はい、私もそう思います。そして、その英雄は4人で、もう1人はハイエルフの女性で、ティターニアが従魔だそうです」
「そういえば、以前ユーマからの手紙にティターニアを従魔にしたハイエルフとパーティーを組んだとあったが、もし本当なら、ユーマ達はアリア達の存在を公にしたという事だな」
私達は、以前ユーマ殿から届いた手紙で、彼らがティターニアを従魔にしたハイエルフの女性と出会い、今は臨時でパーティーを組んでいる事を知っていた。
故に、その4人の英雄の1人の従魔が竜神様、つまりアリア様だという事から、その英雄がユーマ殿達である事の確信がついた。
それからも、ギルドで聞いた内容を纏めて、その英雄がユーマ殿達だという確信を持った。
まず、その竜神を連れた少年は見た事もない雷魔法をいくつも操り、杖や槍、片手剣、大剣のマジックアイテムで魔物の群れを無双したという。
雷魔法やこの武器の種類から見て、まずユーマ殿で間違いない。
次にグリフォンを連れた少女だが、彼女は魔法使いで、様々な魔法を最上級クラスで操り、全く魔力切れを起こさずに大型の魔物を滅ぼしたという。
無尽蔵の魔力量に、様々な魔法を操るという事で、イリスはその少女がラティ殿と確信した。
フェンリルを連れた少年は狼人族で、両手と両脚に装着した手甲と脚甲による接近戦で目にも止まらぬ神速の速さで魔物の群れを薙ぎ払ったそうだ。
狼人族でガントレットによる肉弾戦と聞く限り、それはクレイル殿で間違いないだろう。
どうやら、ユーマ殿達はスタンピードの脅威に立ち向かう為、アリア様達の存在を公にしてまで被害を少なくする為に戦ったのだろう。
ゲイル殿やサラ殿は聞けば聞く程、驚くよりも喜んでいた。
曰く、自分達の息子がそこまで人の事を思って立ち上がった勇気が誇らしいとの事だ。
ユーマ殿、お主は良い両親に恵まれたな。
それからも、私達は暫くの間、このスタンピード関連で聞いた話で盛り上がった。
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