第76話 規格外な魔法
前回のあらすじ
遊撃を繰り返すクレイルとレクスは、途中ハイミノタウロスと遭遇する。
だが、2人の超速の攻撃の前にあっけなく討伐される。
コレットside
クレイル達と別れた私とアインは、エリアル王国騎士団の遊撃に回り、騎士団と連携して魔物と交戦している。
「ブレイズアロー!!」
「フラッシュインパクト!!」
私のユグドラシルから放たれた獄炎の矢と、アインが放った閃光の衝撃がバイコーンやグリーンウルフの群れを蹴散らした。
騎士団も弓や魔法、それぞれの従魔と一緒に攻撃して確実に魔物を倒している。
エルフ族は他の種族と比べると魔力は優れているけど筋力が弱く、剣や槍といった武器で戦闘するのには向いていない。
だから自然と魔法や弓といった遠距離での攻撃手段に限定されてくる。
近接戦も出来なくはないけど、その時は短剣のような軽い武器でないと戦いづらいから、結局エルフの戦いは弓などが基本になってくる。
だがデスペラード騎士団のエルフの場合、弓の技術だけでなく、近接戦の訓練も重ねる為、純粋なエルフと比べると身体強化の練度が高く近接武器での戦闘も可能になってくる。
現に今この騎士団には私の他に、冒険者やデスペラード騎士団から数名が友軍に回って彼らが前衛を担当して戦っている。
それにより、騎士団は冷静に戦況を分析して援護を行う事によって、多少の負傷者は出ているけど、死者は1人も出ていない。
そしてその負傷者も、
「エリアハイヒール!!」
アインの広範囲の上級回復魔法で負傷者を纏めて一瞬で回復させている。
「ありがとう、妖精さん!」
「よっしゃあ! これでまた戦えるぞ!」
「は~い、頑張ってね♪」
こうしてアインが回復魔法をかけている為、こちらは魔力が尽きない限り無限に戦い続ける事が出来ている。
「シャイニングスコール!!」
私が上空に放った光の矢が天空で弾け、それが無数の光の雨となって魔物に降り注いだ。
シャイニングスコール、私のオリジナルの光属性の魔法で、ユグドラシルから放たれる魔力の矢を上空に撃ちだし、それが無数の光の雨となって敵に降り注がれる広範囲の殲滅魔法よ。
私はその範囲を前面だけに集中させたから、味方に当てる事なく敵の魔物だけに当てる事が出来た。
「凄い……やっぱりコレットさんがいると、私達も心強いです」
「コレットさんとアインさんがいれば、私達でもスタンピードを乗り越えられます」
ここにいるのは以前からエリアル王国で活動していた冒険者や長いことこの国にいる騎士達だから、皆私とアインの事を知っている為、私達は何も気にする事なく常に全力で戦う事が出来る。
ちょっと周りに集中してみると、他の戦況もこちらがかなり優勢でその中でも3ヶ所、特に大きな音と衝撃が伝わってきた。
これはあの3人が戦っている場所ね。
ここまではっきり伝わる音の規模からみて、かなりいい調子みたいね。
「どうやら、皆もいい感じの様ね」
「コレットさん?」
「大丈夫よ。こっちの話だから」
私も負けていられないわね。
「アイン、このまま押し切るわよ!」
「オッケーよ、コレット!」
私達も魔物を押していき、このまま殲滅しようとしたその時、奥の方から何か大きな音がしてきた。
「前方より、他より大きな魔力反応を感知しました! 数は5! 規模はBランクです!」
探知魔法を使える騎士が伝えてくれた為、私達は警戒を強めた。
でも、気付くのがちょっと遅かったかしらね。
ユーマくんならもっと早く感知して教えてくれているから。
この2ヶ月間ユーマくんと行動していると、彼の探知魔法がかなり優秀だったのがよく分かるわ。
その時、倒した魔物の死体を踏みつけて現れたのは、オークを超える巨体に手に棍棒を持った肥満体の魔物だった。
「成程。トロールね」
トロールはBランクでも上位に入る魔物。
その外見の通りパワーに優れているけど、1番厄介なのは類稀な再生能力。
こいつは手足を斬り落としても、その再生能力で時間と共に元通り再生してしまう。
しかも迂闊に近づくとその眼から衝撃波を放ち、敵を近づけない為、Bランクの魔物でも攻略が難しい魔物。
それが5体となると結構厳しい状況ね。
敵はこのトロールだけじゃなく他にもまだまだいるんだから。
そうなると、今ここで最も有効な考えは……
「皆さん、ここは私とアインが引き受けます。皆さんはここから移動してください。私達も後から行きますので」
私はこの場を引き受けて、他の人達を他の間所へ移動させる事にした。
ここで全員でトロールに手間取っているよりも、私とアインで速攻で片づけて、その間に騎士団には他の場所で戦って少しでも戦いの効率を上げる事にした。
ちょっと傲慢かもしれないけど、私とティターニアのアインならそれが出来るという自負もある。
「分かりました、コレットさん。ですが、くれぐれも無理はしないでくださいね」
「分かってますよ」
騎士達は私達の実力を信じて、私に指示に従って仲間達を纏めて移動した。
私とアインは5体のトロールと向き合う。
「コレット、トロールは再生能力があるからね。あたしもガチでやっちゃっていい?」
「勿論よ、アイン。この戦いは私達の持てる力を全てぶつけるって、ユーマくんも言ってたしね。だから、私達の本気で一気に片付けるわよ」
「そうね。早く終わらせて、アリアとスイーツを食べたいし。ユーマの作るスイーツ、美味しいからいくらでも食べたい」
腰に下げていたアルテミスに制御魔法をかけて宙に浮かべ、更に周囲に落ちていたゴブリンやコボルトの武器を浮かべて、その周りに配置する。
アインも周囲の魔力を自身の周りに集めている。
「あなた達の再生が厄介なら、その暇がないくらい大きな一撃を与えるか、心臓部の魔石を内部から抜き出せばいいだけ! でも、魔石はお金になるから、大きな一撃で葬ってやるわ! イグニートランス!!」
アインの放った紅蓮の炎の槍が1体のトロールの腹部にヒットし、そのまま大きな爆発を引き起こして、トロールは顔と下半身を残して倒れた。
その横には体が爆散した際に飛び出た、魔石が落ちてる。
再生しようにも心臓の魔石が体内にないから、再生できずそのまま絶命した。
「どう? 魔石はこの程度じゃ消えないから後で回収できるからね」
「本当にちゃっかりしてるわね。でも、私も負けてられないわ!」
私はユグドラシルに魔力を注ぎ、風の矢を形成した。
「行くわよ! タービュランスアロー!」
ユグドラシルから風の矢を放ち、それは世界樹の恩恵を受けて更に加速し、もう1体のトロールの体を頭部と肘と膝から先の四肢を残して吹き飛ばした。
そしてその一撃により、魔石が飛び出た。
タービュランスアロー、ユグドラシルから放てる魔力の矢を使った魔法で、風属性の魔力で生み出された矢をその風の勢いで加速させて敵を貫く魔法よ。
2体が瞬殺されて、トロール達も反撃する為その眼を光らせ、衝撃波を放ってきた。
「無駄よ! アースランパート!」
アインの魔法で地面から巨大な土壁が出現する。
「アースプロテクション!」
それに合わせ、私が土属性の魔力を乗せて壁の強度を増し、3体の衝撃波を防いだ。
「まだまだ! アースクリエイト!」
私はその壁を自身の魔法で操作し、バラバラに分解し無数の土の矢を作った。
更にアルテミスを制御魔法で操作し、自身の魔力を乗せた矢を装填する。
そこに、まだ周囲に落ちていた、これまでに倒したゴブリンやコボルトとかが持っていた武器も制御魔法で操って数を追加して、今の私の周りには100を超える武器や土の矢が漂っている。
「行け」
私のパチンと指を鳴らした合図と共に、土の矢とアルテミスから放たれた魔力の矢、そして操った武器が一斉に掃射され、残るトロールに襲い掛かる。
トロール達の体は無数の矢と武器によって削られるが、この程度の傷ではすぐに再生してしまう。
武器の方も衝撃波や手に持った棍棒で叩き落されている。
「でもこれで、時間は稼いだわ! アイン!」
「安心して。準備はもうできているわ」
そう。この矢での攻撃は、トロール達の動きを止めてアインの止めの魔法で仕留める為の時間稼ぎ。
そしてその準備が終わった為、アインは両手を上にかざした。
「これで終わりよ! カオスイクリプス!!」
アインの放った光と闇の魔力の集合体がトロールに降りかかり、その場一帯が途轍もない魔力に包まれた。
やがて攻撃が終わり、魔法の当たった中部を見てみると、そこにはトロールの頭と全部で5つの魔石が落ちていた。
これがトロールの魔石ね。
トロールの肉体はあの魔法の中再生が追い付かず、魔石を残して本体は消失したって所か。
そして、トロールの討伐証明部位の目玉が取れる様に、頭が残るように調節したって所ね。
「全ての属性を最上級クラスで操れるのがティターニアの特徴だけど、あなたは本当に規格外ね。こんな魔法を片手間で構築してしまうんだから。しかもご丁寧に頭と魔石だけを残すなんて」
「あたしはアリアとレクスと違って、かなりの年月を生きて来たからね。それもエルフの寿命でも足元にも及ばないくらいにね。だから魔力操作にはかなりの自信があるし、あの程度の魔法も数秒あれば簡単に構築できるのよ」
あんな凄い魔法を「あの程度」で片付けられるなんて、私の従魔は本当に色んな意味で規格外ね。
「とにかく、魔石を残しておいたのはありがたいわ。トロールの魔石なら結構な額で売れるからね」
私はトロールの魔石を回収して収納魔法に入れておいた。
「さあ、面倒なトロールは片付いたわ。すぐに移動した騎士団と合流しましょう」
「そうね」
私達はすぐに騎士団の後を追った。
残る魔物はそんなに強いのは残っていないと思うけど、クレイル、ユーマくん、ラティちゃん、無事に戻ってくるのよ。
だからレクス、アリア、クルス、あの子達を守ってね。
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魔物情報
トロール
Bランクの魔物の中でも上位に入る鬼人種の魔物。オークを超える3メートルの巨体を誇り、その外見に相応しいパワーを持つ。普段は洞窟などに生息し、湿気の多い環境を好むが、スタンピードなどでは外で発生する事もある。両目からはサイクロプスと同様に衝撃波を放てる為、パワーだけに気を付けて戦おうとすると痛い目に合う冒険者も少なくない。その体は驚異的な再生力を持ち、例え四肢を切り落とされても心臓の魔石が無事だったら、瞬く間に再生してしまう。討伐証明部位は眼球。
次回予告
スタンピードで発生した中で最強の魔物と遭遇したユーマとアリア。
だが、アリアはそんな相手に畏れる事なく、その相手に怒りを覚え全力で戦う。
次回、竜神vs古竜




