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第69話 迫りくる脅威

前回のあらすじ

コレットの前に現れたのは、ハイエルフ至上主義のレイザード侯爵だった。

彼はコレットを妻に娶りアインを手中にする事を目的にしていたが、コレットに一蹴され一旦引く。

ユーマ達は今後の彼に対する対策を考え、今の事路は互いに手を出さない現状維持となる。

 レイザード侯爵への対策を考えている間、コレットさんの家に厄介になりながら警戒していたが、それからは意外にも平穏な日々が過ぎていった。

 何故なら、あの侯爵があれ以来姿を現さないのだ。


 それでも、僕達は警戒を怠る事なく、日々狩りや依頼をこなして冒険者としてコレットさんの家を拠点にして過ごしていた。


 暫くはこの国に滞在する事が決まった為、僕達はお父さん達に手紙でその事を伝え、その間は手紙のやり取りが出来る様になった。


 この前お父さん達から届いた手紙を読んでみると、僕達がヴォルスガ王国を発った後、ゼノンさんとイリスさんは無事アルビラ王国に着き、現在は僕達の実家にお世話になりながらアルビラ王国で冒険者の活動をしているらしい。

 滞在期間は決めていない様だけど、竜人族と魔族は人族より長寿な種族だから、1年や2年いてもどうって事はない様だ。

 つまり、僕はお父さん達からの返事の手紙に加え、ゼノンさん達からの手紙も来る事が楽しみになっているのだ。


 そうしている内に、僕達がエリアル王国に来て2ヶ月近くが経った。

 僕達は様々な依頼を受けて、徐々に実績を積みながら冒険者として成長している。


 ある時はとある街までの商人の護衛や、またある時は盗賊の討伐などといった、以前夜明けの風のワッケンさんが言っていた様な一人前の冒険者の依頼も受けていた。


 そうした依頼を受けて、僕達は着実に実績を積み、同時にコレットさんからロストマジックの魔法書を貰えるくらいの実力を目指して活動している。


 そして現在、僕達はというと……


「アリア、右の方に向かってストームブレスだ!!」


『承知しました!!』


 目の前でコボルトの集団を相手に無双中だ。


 僕達は依頼で、王都から馬車で数日の場所にあるとある洞窟に住処を構えたコボルトの群れの討伐に来ている。

 その洞窟はかなり幅が広く、狭い通路などでは使用が難しい風の魔法も問題なく使える程だ。

 そして今、アリアが風のブレスでハイコボルトやコボルトを蹴散らした所だ。


「クレイル、コレットさん、こっちは終わった!!」


「よし! 後はこいつだけだな!!」


「ユーマくんもこっちに加わって! 流石に手強い相手だから!」


 2人に呼ばれて、僕は2人が相手をしている、3メートルはありそうな巨大なコボルトの前に出た。


 因みに、ラティとクルス、レクス、アインはこの1本道しかない洞窟の出口から逃亡するコボルト達を出さない為に、入り口に配置している。


 そして、僕達が残す相手は、コボルトを統率するコボルトの王、コボルトキングだった。


 コボルトやゴブリン、オークなどの魔物の中には、上位種と呼ばれる個体が存在する。


 その上位種の中には、魔力や知能が発達して、通常の個体では使わない弓や杖などを使う、「アーチャー」や「メイジ」の名を持つ種などが存在し、そのまた上位にランクが1つ上でその下の種を纏める指揮官のジェネラルクラス、そして、その更に上にその種類の魔物を統率するキングクラスが存在する。


 コボルトの場合、通常のコボルトがEランク、弓を扱うコボルトアーチャー、杖で魔法を使うコボルトメイジ、その上位のハイコボルトがDランク、コボルトジェネラルがCランク、そしてコボルトキングがBランクになる。


 僕達は最初の時点で、ジェネラルクラスから積極的に倒し、その後クレイルとコレットさんがキングを引き付けてる間に、僕とアリアが残った下っ端達を蹴散らしていた。

 アリアはこの洞窟の中ではいつものミニサイズのままだが、元々の魔力量は変わっていない為、ブレスだけで十分だった。


 そして、クレイルとコレットさんとアインがキングを抑えている間に、部下のコボルトを僕とアリアが全て倒した今、僕達は残るコボルトキングと対峙している。


 コボルトキングは先手を打ち、右手に持った自分の身の丈はありそうな巨大な大剣を振りかざし、コレットさんに向かって振り下ろした。


「そうはさせないぜ!!」


 クレイルは加速魔法で壁を駆け上って一瞬でコボルトキングの目の前に移動し、その大きな顔に目掛けて装備したメルクリウスによる空中後ろ回し蹴りをかまして、コボルトキングは大きく仰け反った。


「グアアアァァァァ!!」


 コボルトキングは王者である自分の顔を攻撃された怒りか、凄まじい怒気を孕んだ雄叫びを上げたが、その右目に1本の矢が刺さった。

 コレットさんの放った矢だ。


「吠えている暇があったら掛かって来なさい。大きな犬顔さん」


 コレットさんのあからさまな挑発に、片目となったコボルトキングは怒り狂いながら突進してきた。


「フラッシュ!! シャドウバインド!!」


 僕は閃光の魔法で目晦ましをし、更にその光でできたコボルトキングの影を操り下半身を拘束した。


「ライトニングエンチャント!!」


 続けて僕は十八番の雷の複合強化をかけ、手に持ったジルドラスを両手で構え、そのスピードでコボルトキングの体を駆け上り、


「雷竜牙撃!!」


 右肩に目掛けて雷を纏った刺突を繰り出した。


「グギャアアァァァァァァ!!!」


 その結果、コボルトキングは肩を貫かれた痛みで手に持っていた剣を落とし、左手で傷口を抑えた。


「倒れるのはまだまだ早いぜ!!」


 そこに壁を駆け上って上をとったクレイルが落下してきて、勢いを付けた踵落としをコボルトキングの脳天に決めた。


 その強烈な一撃を受けたコボルトキングは脳震盪を起こし、白目をむきながらよろめいた。


「そのもう1つの目も頂くわ!」


 コレットさんも制御魔法で操作したクロスボウをコボルトキングの目の前まで移動させ、残った左目に目掛けて矢を放った。


「グギャアアァァァァァァ!!!?」


 両目を失い、混乱するコボルトキングを前にして、僕は魔力を練り上げた。


「これで終わりだ! カオスボルテックス!!」


 僕がジルドラスで与えた傷に向かって黒い雷が放たれ、その瞬間コボルトキングが黒い雷に包まれた。


 カオスボルテックス、闇属性を加えた雷属性の複合魔法で、以前デビルスコーピオンを倒した時に使ったカオスインフェルノに類似した魔法だ。

 浸食性の強い闇属性を加えた雷は相手の体を内側と外側を同時に感電させるため、炎と比べると即効性が強く強い魔物を相手に使われる事が多い、僕の切り札的な魔法だ。


 そして、コボルトキングの体は黒焦げの死体となって、ドシーンという音と共に地に倒れた。


「倒したか?」


「うん。闇属性の複合魔法は相手が生きている限り続くから、その効力が消えればその魔物は死んだ事を意味するから、安心して」


 戦闘が終わった事で、僕とクレイルはその場に座り込んだ。

 そこに、ラティが走ってやってきた。


「ねえ! 奥から凄い音が聞こえて来たけど、いったい何があったの?」


 ラティはコボルトキングの倒れた音を聞いて、駆け付けて来た様だ。

 その際、発育が進んだ胸が激しく揺れて、僕一瞬目を奪われ、クレイルは思わず目を逸らした。


「大丈夫。もう戦闘は終わったから。それよりラティ、入り口はどうしたの?」


「そっちは大丈夫。クルスとレクスとアインを残してきたから、逃亡するコボルトも出ないわ」


 ラティは天然な様で、そういう所はしっかりとしているから、僕も信頼できる。


「にしてもさ、ここ最近、やけに上位種が出てねえか? キング種に関しては、今回でもう5回目だぜ?」


 そう、実は、半月ちょっと前からエリアル王国の近辺で、コボルトやゴブリン、オークなどの魔物の集落があちこちにできる様になった。

 そして、今回のコボルト種の様な、キング種のいる集落や住処は僕達が行っただけで2回、全体だと今回で5回目に達している。


「うん。いくらなんでも、これはちょっと異常な数だよ」


「そうね。こんなにキング種のいる所があると、かなり不安だわ」


 僕達が会話している間、コレットさんとアリアは何だか深刻そうな顔をしていた。


「コレットさん、アリア、どうしたの?」


「うん、ちょっとね。このキング種の発生率が気になってね、ひとまず、コボルト達に解体を済ませて、ギルドへ戻りましょう。もしかしたら、何か分かるかもしれないわ」


 僕達は手分けしてコボルトの解体作業を行い、最後に4人でキングの解体を行い、魔石や素材になりそうな毛皮の部分を取り出して、死体を1ヶ所に纏めてから洞窟の外に出た後、ラティの火の魔法で洞窟ごと焼き払う事で焼却処分した。


 そして、僕達はこの後に知る事になる。


 それは、僕がこのアスタリスクに転生して、初めて対面する途轍もない脅威だという事に。

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魔物情報


コボルトキング

全てのコボルトを統率する能力を持つBランクの魔物。その大きさは3メートルに達し、自身の丈に合った剣などを武器にしている。知性もかなり発達しており、人間の言葉を完璧に理解した事例もある。雄叫びのパターンを使い分け、配下のコボルトに的確な指示を出せる。ランクはBだが、キング種がいるとかなりの数のコボルト、ハイコボルト、アーチャー、メイジ、ジェネラルがいる為、キングの討伐にはAランクの冒険者が動く事もある。討伐証明部位は右手首。


コボルトアーチャー

知性が発達し、弓を得物にしたコボルト。知性が発達している分ランクが上がりDランクとなる。武器が違う以外は普通のコボルトと違いがない為、コボルトの群れの中に紛れ込んでいると、突然の矢による不意打ちを受ける事がある為、注意が必要。討伐証明部位は右手首、武器付き。


コボルトメイジ

コボルトの知性と魔力が発達し、魔法が使えるようになったコボルト。アーチャーと同様Dランク。知性はある程度の発達な為、魔法は簡単な魔法しか使えないが、従魔として適合したコボルトメイジの中には厳しい訓練を経て上級魔法を会得した事例も存在する。討伐証明部位は右手首、武器付き。


コボルトジェネラル

ハイコボルトよりも一回り大きい、Cランクのコボルト。ハイコボルト以下のコボルトを指揮する能力を持ち、自身もそれ相応の戦闘力を持つ。コボルトの地位的にはキング種の側近的な立場な為、彼らの指示はキングの指示と言っても過言ではない。討伐証明部位は右手首。


次回予告

ギルドへ帰還したユーマ達はラーゼにキング種がいた事を報告する。

その時、ギルドにある報告が舞い込んでくる。

それは……。


次回、スタンピード

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