幕間 その頃の赤黒の魔竜
時期的には、ユーマ達がバイコーンの討伐依頼を受けた頃です。
私はゼノン・ウィンザルグ、冒険者パーティー、赤黒の魔竜のリーダーの竜人族だ。
私と相方の魔族のイリスはヴォルスガ王国で出会った友、ユーマ殿とラティ殿とパーティーの同盟、アライアンスを結び、彼らと別れた後、2人の故郷、アルビラ王国の王都へとやってきた。
現在は彼らの両親の暁の大地の方々の家に厄介になり、そこを拠点にして冒険者活動をしつつ鍛練の日々を送っている。
そんな私達は今、
「降竜烈火脚!!」
ある魔物の討伐依頼を受け、イリス、私の従魔の水晶竜のスニィ、イリスの従魔のヴァンパイアバットのカミラと共に討伐対象のリビングメイルと戦っている。
そして今、私の竜化魔法による上空からの炎の踵落としが、奴の肩へと炸裂した所だ。
このリビングメイルの討伐依頼はAランクで、私とイリスのランクはBランクだが、依頼を受ける際は1つ上のランクまでの依頼を受けられるギルドのシステムにより、こうしてAランクの依頼を受ける事が出来ている。
私はリビングメイルに攻撃を決めたと同時に、奴の体を蹴り、距離を空けた。
『クリスタルブレス!!』
そこに竜の姿のスニィが上空から放った、細やかな水晶に欠片を含んだブレスがリビングメイルに決まる。
水晶の欠片以外はスニィの氷属性の魔力を含んだブレスだけだが、巨大な竜の姿から放ったスニィのブレスはそれだけでも凄まじい風圧を誇っている。
加えて凍てつく様な寒さとクリスタルの欠片による痛みで、並の者なら一溜りもないだろう。
しかし、中身がない鎧だけのリビングメイルには、その暴風の中で吹き荒れる水晶の欠片で切り刻まれても、暴風の風圧に潰されても、体内の魔石が無事である限りは無駄な攻撃だった。
結果奴は何ともない様子で立ち上がってきた。
「ゼノンとスニィの攻撃をもろに喰らっても倒れないなんて、結構厄介な相手ね」
イリスはそう言いつつ手に持った杖に魔力を溜めている。
「打撃や外側への攻撃が効かなくても、鎧全体を伝う攻撃ならどうかしらね! ライトニングストライク!!」
イリスの放った雷魔法が直撃した。
上手い。
金属でできた鎧の体なら、通しやすい電撃の魔法で攻撃すれば、内部にもダメージを与えられ、上手くいけば魔石を破壊できる。
魔石を破壊するのは惜しいが、リビングメイルはそれくらいの覚悟がなければ討伐が困難な魔物だ。
尤も、魔石を壊すほどの一撃となると、私の奥義かイリスの全力の魔法、竜の形態のスニィの全力一撃でやっと可能というレベルだがな。
イリスもこの威力の魔法では魔石を破壊できるとは思っていない様だ。
実際に、イリスの電撃の直撃を受けながらも、奴はまだ動きイリスに向かってその手に持った剣を振り上げた。
だがそこにカミラが飛び込み、その背中に体当たりを決めた。
リビングメイルはそれに反応し、背後を向きながらその剣を振り下ろしたが、カミラはその特殊能力の分離により、自身を無数の蝙蝠に変えて回避した。
「分かってはいたけど、驚いたわね。雷魔法の直撃を受けても、魔石が無事だったら平気で動けるなんて」
「全くだ。それにしても、これ程のものとは、ダグリス殿のジオン殿もこんな感じだとすると、彼等マッハストームの戦力が如何に凄いか伝わって来るな」
「同感よ」
そう。私達がアライアンスを結んでいるパーティーはもう1つある。
ヴォルスガ王国でユーマ殿達と共に知り合い、親交を結んだAランクパーティーのマッハストーム、そのメンバーの魔族のダグリス殿の従魔が、今私達が対峙しているリビングメイルなのだ。
魔石が無事な限り何度倒れても立ち上がって攻撃してくるその姿、ジオン殿に重ねるとどれ程心強いか。
「だが、今目の前のリビングメイルは野生の魔物。つまり敵だ。今は目の前の敵の集中しよう」
「そうね。でもどうする? これはいよいよ、中の魔石を壊す事を視野に入れないといけないかもよ?」
「私に考えがある。イリス、氷の魔法で奴の動きを封じてくれぬか? それが出来れば、私が奴の体を粉々に打ち砕く」
「分かったわ。でもあいつの魔力に勝てる程の魔力を溜めるには、少しだけ時間を貰うわ」
「承知した」
私は相手を牽制しているスニィとカミラに声を上げて伝えた。
「スニィ、カミラ! イリスの魔法が完成する数秒間、私達で足を止めるぞ!」
『分かりました、ご主人!』
カミラも頷いて答えてくれた。
私は両手両足を竜化させ、リビングメイルの懐に飛び込んだ。
カミラは自身を無数の蝙蝠に分離させ、奴の周囲を飛び回って撹乱させた。
リビングメイルはその無数の蝙蝠に惑わされ、闇雲に剣をふるっている。
「隙あり!」
その隙を狙い、私はリビングメイルの胴体に回し蹴り、1回転しての後ろ回し蹴りの2連打を決め、奴を吹っ飛ばした。
『喰らいなさい! クリスタルブレス!!』
スニィが再び上空からブレスを放ち、その風圧で横倒れたリビングメイルの動きを封じる事に成功した。
「準備出来たわ! ゼノン、カミラ、離れて!」
イリスの合図に、私とカミラはその射線上から離脱した。
同時にスニィもブレスを止め、リビングメイルは一瞬だけ自由になったが、その前にイリスの魔法が放たれるのが早かった。
「コキュートスフロスト!!」
イリスの放った氷の魔力波が決まり、リビングメイルの首から下が凍り付き、奴は完全に身動きが取れなくなった。
スニィの氷の魔力が相乗効果を生み、より強力な凍結となり、流石のリビングメイルもその氷の拘束からは簡単には抜け出せなくなった。
「よくやったぞ、イリス! 後は私に任せろ!」
私は止めを刺すべく、両腕を竜化させ、それぞれの魔力を集めた。
「我が内の炎と雷の力を一つに合わせ、万物を打ち砕く一撃を生み出さん!!」
その前口上により、それぞれの炎と雷の魔力の強さが増した。
私はその一撃を決めるべく、リビングメイルの懐に接近した。
「豪熱爆雷!! 獄雷爆裂撃!!」
私の繰り出した、竜化魔法の奥義が氷を砕きながらリビングメイルの胴体に届き、その破壊の一撃により奴の体を粉々に破壊した。
その砕けた鎧の破片に交じって、奴の心臓部の魔石が現れた。
「カミラ! 今だ!」
私の呼び声に反応したカミラが、リビングメイルの魔石を掴み回収した。
魔石という心臓部を失った事により、頭と下半身のみになったリビングメイルは動かなかくなり、討伐を達成できた。
「やったわね、ゼノン」
「ああ。イリスが電撃で鎧そのものを攻撃したのを見て思いついたのだ。リビングメイルには中身がない。つまり、内部には心臓部の魔石しかないから、その外側の鎧を砕き、中の魔石を取り出す事が出来れば、奴は動かなくなると」
「成程ね。あいつの体の鎧には電気が通ったけど、あくまで魔石以外は中身がないから感電によって破壊される体がなかったから、あいつは立ち上がれたのね」
「その通りだ。そしてその魔石は強い魔力が集まってできた物。それが高ランクの魔物のならば、外からの魔法では簡単には壊れない。だがイリスがあの魔法で攻撃したからこそ、鎧を砕いて魔石を取り出すというあの方法で倒す事が出来たのだ」
この戦いは、私の竜化魔法、イリスの魔法、スニィのブレス、カミラの撹乱、どれかが1つでも欠けてしまうと、倒す事は出来てももっと時間がかかってしまったかも知れぬ。
「じゃあ、あいつの討伐証明の頭部を回収しましょう。鎧は粉々になったから、回収できる素材はないけど、頭が残っていれば依頼が完了できる」
「そうだな」
私達はリビングメイルの頭部を回収し、王都へ戻る準備をしていた。
「そういえば、ゼノン。ラティちゃん達は、もうエリアル王国に着いたのかしら?」
イリスがふとラティ殿の事を聞いてきた。
「そうだな。ヴォルスガ王国を出てもう1ヶ月ほどだ。ユーマ殿達はアリア様に乗ってはいかず馬車での移動だったから、その移動時間を考えるともう着いている頃だな」
私達はスニィに乗って移動したから、出発して数日でアルビラ王国に到着したが、ユーマ殿達は竜神のアリア様の事を隠す為、馬車で移動している。
だが、その移動時間を考えるともう到着していてもおかしくはない。
「もし気になるのなら、ギルドに戻ったら確認してみればいい。私達はアライアンスを結んでいるのだ。それで確認すれば、ユーマ殿達が今どこにいるのかがすぐに分かる」
「それもそうね。じゃあ、早く戻りましょう」
それからは私達はスニィに乗り、王都のギルドへと真っ直ぐ戻った。
ギルドで依頼の完了の報告を済ませた私達は、次いでユーマ殿達が今何処にいるかを確認し、その結果彼らは無事にエリアル王国に着いたという事を知った。
また、バロン殿達も確認すると、彼らは先日ロマージュ共和国領のとある街を出発し、首都を目指している事が分かった。
こうして私達は仲間達の情報を知り、彼らの無事に安堵しながら、ユーマ殿とラティ殿の実家を目指し、帰路についた。
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