幕間 神の間での世間話
エリアル王国のコレットさんの自宅に宿泊する様になって数日、今日は僕とアリアはエリアル王国の教会に礼拝に来て、イリアステル様に神の間に招かれている。
いつもの事だが、やはりここに連れて来られる時は意識が遠のく感じがするので未だに慣れなかったりする。
でもこうしなければ、僕はイリアステル様と会話する事が出来ないので、我慢の一択しかなかった。
今日は主な報告では順調に旅をしている事くらいで、既にその報告も済ませている為、現在僕とアリアはイリアステル様と世間話の様な話をしている。
「しかし、本当にユーマさんは律儀な方ですね。こうして時間を作って教会に来て頂いて、礼拝してくださるのですから」
「それに関しては、当然の事だと思っています。イリアステル様はいつもここから僕らの事を見守っていてくれているそうですから、こうしてここに会いに来て無事に生きている事の感謝と報告を直接言うのが、僕からのせめてもの礼儀という物です」
僕がこうして神の間に連れて来てくれるのも、イリアステル様が僕を見守っていてくれる証拠でもある為、僕はその事も含めて感謝した。
「それはそれは、本当にありがとうございます。こうしてお礼を言われると、私も嬉しくなります」
イリアステル様は僕がこの神の間に来ている目的を聞いて、とても嬉しそうだった。
『私は、ユーマの従魔として常にこの方のお傍にいる身ですから、私も一緒に連れて来て貰ってありがたい事です』
そういえば、アリアが初めてここに来た時は自分の魂を自ら切り離してここに連れて来られた僕の意識を追ってきたんだよな。
今思うと、本当に凄い事をしたよな、アリアは……。
「私もあの時は本当に驚きました。最初はユーマさんだけを連れて来た筈なのに、いつの間にかアリアさんもいて、あれには驚かされました。神の私を驚かせるなんて、あなたの行動には素直に凄いと思いましたよ」
『いえいえ。そんなに褒めてもらうと照れるでありますよ~』
((褒めてない褒めてない))
僕とイリアステル様は揃って突っ込んだ。
イリアステル様は話を切り替え、僕の普段の話をし始めた。
「それにしても、ユーマさんの旅に出てからの日常は、この神の間から見ていますが、あなたは結構トラブルに好かれるようですね」
「失礼な。そんな事…………あるな……それもかなり……」
思い返すと、旅に出てからの僕は、それなりにトラブルに巻き込まれているな。
最初に訪れたローレンスの街で、半年間放置された曰く付きの調査依頼を自分から受けて、その結果Aランクのデビルスコーピオンと戦う羽目に。
その後、ローレンスの街の領主がミニサイズのアリア達の事を聞きつけ、僕達を囲おうとしてきたから、領主と揉め事を起こした。
街を出た後早々に盗賊に襲われ、ラティと2人で殲滅。
ヴォルスガ王国ではラティと結婚しようと言い寄ってきた貴族と一悶着あり、その結果マッハストームのバロンさん達とは僕1人で戦う事に。
そして今回のこのエリアル王国ではコレットさんの事でレイザード侯爵と揉め事が起こりそうに。
その他にも、アリア達と出会い国王に後ろ盾になって貰う為に城にも行ったし、冒険者になった後、あの過激派大臣がちょっかいを出してきて、街中で軽く戦闘したし……。
……なにこれ?
1つの街へ行く毎にそれぞれ最低1回は揉め事に巻き込まれてる。
「どうやら思い当たる節はありまくりの様ですね」
「はい……どうやら僕は俗にいう、巻き込まれ体質の様ですね」
巻き込まれ体質、それは何かある毎に面倒事や厄介事に巻き込まれ、知らず内にその中心に行ってしまう魔の体質だ。
『確かに思い返すと、ユーマといると面倒事に飽きませんね』
アリアにまで言われてしまった。
「確かに、アリアと出会って、冒険者になって旅に出てからはそれなりに巻き込まれてきたよ。でも、それは何も僕だけの所為じゃないから」
僕は出来る限りの抵抗を試みてみたが、
「でも、ユーマさんの場合ははっきり言って凄いですよ。1つの場所に行く度に最低1回は何かに巻き込まれていますし。勿論私があなたの運勢に干渉している事は絶対にありません。神が1人の人間に運勢や人生などで干渉しすぎると、その人の身に反動が掛かって身を滅ぼしてしまう事があるのです。ですが、あなたの元来の運や性分などを統合しても、これはもうどうしようもないくらい、ユーマさんの運命というか業といっても過言ではありませんよ」
『そうですね。勿論、ユーマと一緒にいると全てが楽しいですが、同時にトラブルにも愛される日常にもなっています。これはユーマが中心になっての事の方が多いですよ。まあ、私はそれが楽しかったりしますが、できればあまり揉め事を引き寄せないで欲しいですね。自分からトラブルを引き込む体質なんて、ユーマは何時かトラブルホイホイと呼ばれるかもですね』
イリアステル様とアリアによって、僕の巻き込まれ体質が完全認定されてしまった。
しかも、トラブルホイホイって何?
僕は黒ヒゲホイホイじゃないから、人をそんな風に言わないでくれよ、アリア。
「お願いですから、トラブルホイホイと呼ぶのだけは勘弁してください」
僕の懇願に、神の間は笑い声に満ちた。
それからは他愛のない世間話になり、やがて僕とアリアがこの間にいられる限界時間が訪れた。
「今日はこれまでの様ですね。イリアステル様、今日はこれで失礼します」
『また教会には来ますので、またお会いできる日を楽しみにしています』
「はい。私も楽しみにしています」
イリアステル様の言葉を皮切りに、僕の意識が消えそうになったその時、
「ユーマさん、これだけは言って置きます! 本当に私はあなたの巻き込まれ体質には何も関与していませんからね~~~!」
そんな言葉が聞こえてきた。
そこまでして否定する事ですか、イリアステル様?
そして僕とアリアの意識は教会の礼拝堂にある、僕達の肉体へと戻った。
※黒ヒゲ…主に台所等に現れる、しぶとい生命力を持つ、キングオブ害虫。ユーマの前世の頃からの隠語。
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10時にもう1話幕間を更新します。
その後12時に本編を更新しますので、読み飛ばしに気を付けてください。




