第67話 コレットとアインの力
前回のあらすじ
コレットを加えた初依頼に、バイコーンの群れの討伐依頼を受ける。
その際、アルビラ王国のギルドのリーゼの姉のラーゼと知り合い、彼女が五つ子の姉だと知る。
目的地に着いた後、1度現在の戦力を確認し、ユーマは今の銀月の翼が理想の戦力になっている事を痛感した。
魔力の反応があったポイントまでやってきて、茂みからそっと覗いてみると、そこには黒い体に黄色い鬣、2本の角を生やした馬型の魔物が沢山いた。
「間違いないわ。バイコーンの群れよ。じゃあ、作戦を立てましょう。バイコーンの厄介な所はその攻撃性よ。特に今は繁殖期だからその気性は更に激しくなってるから、まずはその気性をある程度落としましょう」
「そんな事可能なんですか?」
「ええ。アインの能力なら、それが可能よ」
コレットさんとアインには何か策がある様だ。
「分かりました。じゃあ、アインの能力が効いてきたら、各自の従魔と一緒に各個撃破と行きましょう」
「分かったわ。でも気を付けてね。バイコーンの角には雷の魔力が溜まっていて、奴らは攻撃する際にはその雷を纏った角で突進してくるのよ」
単純な攻撃パターンだと、僕達の馬車を引いている馬型ゴーレムの素材になっているトライコーンとほぼ同じか。
「分かったわ、コレットさん」
そして、僕達のバイコーン掃討作戦が始まった。
まずは手筈通り、コレットさんが合図を送り、アインがバイコーン達の上空へと飛んでいく。
この時、アインは光魔法による認識阻害の魔法を掛けた為、バイコーン達に気付かれる事なく飛ぶ事が出来た。
そして次の瞬間、アインの8枚の翅から光り輝く鱗粉が撒き散らされ、その鱗粉を吸ったバイコーン達は次々と大人しい雰囲気を出した。
「成功ね。アインの鱗粉で、バイコーン達の気性が静まってきたわ」
ティターニアは全ての妖精の頂点に君臨する魔物。
その力は、全ての属性魔法を最上級クラスで操る事が出来、その羽から撒かれる鱗粉は吸った相手を気分を高揚させたり、鎮めたり、または幻覚を見せる事も出来る。
今回は気分を鎮める鱗粉を使った事で、たちまち全てのバイコーンが大人しくなった。
「今よ!」
コレットさんの合図で、僕達は茂みから飛び出し、それぞれの従魔とペアになってバイコーンへ突撃した。
今回はアリアはミニサイズのままだが、クルスは元のサイズに戻り、クレイルも今のタイミングでレクスを呼び出した。
バイコーンはこちらに気付いたが、アインの鱗粉の効果で未だに戦闘態勢に入っていない。
よって、ここからは僕達の一方的な蹂躙になった。
僕はジルドラスを出して双頭の刀槍にして、1体1体に狙いを絞ってその首を斬り落として絶命させ、アリアは光属性のブレスのシャインブレスで、バイコーンの脳天や首を貫いて仕留めている。
ラティは水や風の魔力で形成した刃で、バイコーンの首を切断し、クルスは身体強化を掛けた前足の一撃で首をへし折って仕留めている。
クレイルは加速魔法と身体強化による打撃で首の骨を砕き、レクスもその牙でバイコーンの首や胴体に噛みつき砕く事で仕留めている。
コレットさんの方は、アインは風と水の複合魔法でバイコーンを吹き飛ばし、それをコレットさんが弓で放った矢で脳を貫いて仕留めている。
だが、よく見るとコレットさんの周囲に、クロスボウとそれに装填される矢が浮いていて、コレットさんが弓で矢を放つと同時にクロスボウからも矢が発射されて、2匹のバイコーンを同時に仕留めている。
そして、矢を放った後のクロスボウに新たな矢が装填されて、同じく2匹同時に仕留めた。
「コレットさん、それってもしかして、コレットさんのロストマジックですか?」
ラティが戦いながら、彼女に尋ねた。
すると彼女は、頷いて肯定した。
「そうよ。これが私のロストマジック、制御魔法よ。自分の半径10メートル以内にある、武器やマジックアイテムを自分の意のままに制御して操れる魔法よ。その分魔力の消費も大きいけど、その辺はハイエルフの魔力量でカバーできているわよ。これなら弓での攻撃に加えて、別の場所にいる敵にも矢を当てる事が出来るわ。そこに、私の必中魔法を加えれば、どんな場所からでも私の攻撃は当たるのよ」
凄い……これが、ロストマジックの戦いか。
クレイルのはあまり戦闘向きじゃないから、ロストマジックを使った戦闘を見るのはこれが初めてだけど、それでも凄い。
そうこうしている間に、周囲のバイコーンの反応がなくなり、バイコーンは1匹残らず討伐が完了した。
「これで全部だな。アインがいなかったら、確実に混戦になって少なくない怪我をしていただろうな」
『これも、アインお姉様が鱗粉で奴らの戦闘意欲を削いだからです。やっぱり、お姉様は凄いです』
アリアが目をキラキラと輝かせながら、アインを尊敬している。
その構図はまさに女先輩に憧れる後輩その物の様だ。
「ありがとう。でも、アリアもやるじゃない。あのブレス、まるで先代の竜神を思い出したわ」
『ありがとうございます』
アリアとアインは互いを褒め合っている。
特にアリアは姉と慕っているアインに褒められて、凄く嬉しそうだ。
「ユーマくんとラティちゃんも中々やるわね。あのクレイルが負けたというのも頷けるわ。従魔とのコンビネーションも良かったし、人族としてはかなりの強さだったわ」
コレットさんは僕達の戦いぶりを見て、かなりの好評価をくれた。
「ありがとう、コレットさん」
「これでも、Sランク冒険者の両親に鍛えられてましたから」
「成程ね。今の時点でこの強さなら、あなた達はいずれSランクにもなれそうね。従魔に頼るだけじゃなく、己もよく見て戦う事で最適な判断と行動が出来る者が生き残る。それが本当の冒険者なのよ」
コレットさんから冒険者の生き残り方を説かれた後、僕達は斃したバイコーンの剥ぎ取りを開始し、討伐証明部位の角と、魔石、毛皮を始めとする素材、それから肉を確保した。
バイコーンの肉はオークの肉を上回る高級肉で、その肉には生臭さもなくほど良い脂がのっていて、食べると舌の上で蕩けると言われている。
それが約30頭分確保できた為、暫く僕達の食卓に肉に困る事はなくなった。
その後、夕暮れになる前に王都に戻ってきて、ギルドでラーゼさんに依頼完了の報告をした。
結果、依頼完了の報酬に加え、バイコーンの魔石も素材も全て換金して更に追加報酬を得た事で、コレットさんを加えた初依頼はかなりいい出だしとなった。
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今僕達はコレットさんの家に戻るべく帰路についている。
やがて家に着くと、そこには見知らぬ馬車があった。
「ねえ、あの馬車って何だろう?」
「多分外見からして、貴族の馬車じゃないかな? ほら、ヴォルスガ王国でもデイツがのっていた馬車も、あんな感じだったし」
僕達が馬車に対する印象を述べていると、コレットさんは嫌悪感剥き出しの表情をしていた。
「どうしたんだ、コレット?」
クレイルも気になったのか、彼女に声を掛けた。
「何でもないわ。早く家に入りましょう」
コレットさんはまるで関わりたくないかの様に僕達を先へと促した。
今までの明るく面倒見のいい彼女からはとても想像できない態度に、僕達は何が起こっているのか分からなかった。
だが、すぐに僕達は気付く。
あの馬車に乗っていた人物にどれ程の醜さが秘められていたかを。
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魔物情報
バイコーン
漆黒の体に2本の角を持ったCランクの幻獣種の魔物。常に群れで行動し、群れでの討伐難易度はBランクに相当する。気性が荒く、繁殖期になるとその希少は更に荒ぶるようになり、その際のランクはBランクに上がる。繁殖する際は、綺麗な水辺がある所に移動する習性がある。戦闘時は2本の角に溜まった雷の魔力を纏わせて突進する。討伐証明部位は角。
次回予告
コレットに関わってきた人物は、これまで以上に醜い人物だった。
そしてユーマ達もそれの醜さに嫌悪感を抱く。
次回、ハイエルフ至上主義




