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第66話 それぞれの役割

前回のあらすじ

ラティに聞かれ、コレットは自身の経歴とクレイルとの出会いを語る。

その中で2人の親密さを改めて目の当たりにする。

 僕達はギルドで、コレットさんと臨時でパーティーを組む手続きをして、現在は4人で今日受ける依頼を選んでいる。


 エリアル王国のはエルフの国というだけあり、人族や獣人、魔族なども勿論いるが、それでも人口の比率などからエルフの冒険者も多くいる。

 その中には褐色の肌をしたエルフ、ダークエルフもいる。

 ダークエルフはエルフの亜種とも言われていてエルフから極稀に生まれてくる種族だ。

 エルフの得意とする風属性に加え、闇属性も得意としたエルフの亜種ともいえる種族だ。

 厳密な種族としてはエルフとして括られ、基本的な能力はエルフと大差なく、ハイエルフになる為の試練も受ける事が出来、その際はダークハイエルフという名の上位種族へとなるそうだ。

 また、エルフの亜種と言われているが、基本的には一般のエルフと同格として扱われ種族間での差別はないそうだ。


 話を戻すが、僕達はAランクのコレットさんがいるから僕達もAランクの依頼を受けられるけど、今回はBランクの依頼を受けようと、Bランクの依頼ボードを見ている。

 僕はその中から、とある依頼用紙を見つけた。


「何だろう、これ?」


「何か見つかったのか?」


 僕は隣に来たクレイルと一緒に、その依頼内容を呼んだ。


 内容はバイコーンの討伐。

 場所はここから馬車で数時間の場所にある湖。

 報告には、討伐の証明部位の角の提示。


「バイコーンの討伐か。場所は、ここからギリギリ1日で往復できるな。コレット、ラティ、この依頼はどうだ?」


 クレイルに呼ばれて、2人もその依頼用紙を見て頷いた。


「いいんじゃない? バイコーンが現れたという事は、恐らく繁殖の為にやってきた可能性があるわ。早急に討伐した方が、今後の安全に繋がるわね」


 バイコーンは単体ではCランクの魔物だが、常に群れで行動する魔物で、群れではBランク相当になる。

 特にこの時期は、バイコーンの繁殖期で元々高い気性が一段と荒くなり、その際の凶暴性は単体でBランク並となる。

 バイコーンは繁殖の際には綺麗な水辺に移動する習性があり、今回の依頼の場所である湖は、バイコーンの繁殖には最適な場所の様だ。


「ユーマくん、この依頼にするなら私は構わないわ。私は今は銀月の翼のメンバーだから、リーダーのあなたの決定に従うわ」


「分かりました。クレイルとラティもいいかな?」


「勿論よ。ユーマくんの決定なら、文句はないわ」


「俺もだ。このパーティーのリーダーはお前なんだからな」


 満場一致で、僕達の初依頼はバイコーンの群れの討伐依頼になった。

 僕達はこの依頼を受ける為に受付カウンターへと向かった。


「こんにちは。本日も当ギルドをご利用してくださり、ありがとうございます」


 その受付を担当したのは、エルフでなく人族だったが、僕とラティはその()姿()に驚愕した。

 何故ならその女性は僕とラティが見知った女性、アルビラ王国の王都のギルドの受付嬢のリーゼさんだったのだ。


「リーゼさん!? 何でここにリーゼさんが!?」


「アルビラ王国のギルドからこっちに異動して来たんですか!?」


 僕とラティは驚いて、声を上げて質問したが、そのリーゼさんらしき人は落ち着いた様子で答えた。


「リーゼ……あなた達、リーゼの知り合いなんですね?」


「えっ? あなたはリーゼさんじゃないんですか?」


 ラティの質問に、そのリーゼさんらしき人は一礼して自己紹介をした。


「申し遅れました。私はラーゼ、アルビラ王国のギルドのリーゼの五つ子の姉です」


「「五つ子の姉!?」」


 ラーゼさんと名乗った女性の口から告げられたのは、何とリーゼさんには五つ子の家族がいる事が分かった瞬間だった。


「はい。私はその五つ子の姉妹の長女で、リーゼは次女なんです。私達姉妹はそれぞれが各国の首都のギルドで受付嬢をしていまして、私はこのエリアル王国の、リーゼはアルビラ王国のギルドで働いているんです」


「そうなんですか……」


 つまりその顔があと3人いて、残り8ヶ国の十天大国のいずれかにいるという事か……。


「もし、他の国のギルドで私達に似た顔に会ったら、その人は私達の姉妹ですので、その時は是非『私達は元気でした』と伝えてください」


 確かに、僕達は世界を巡る旅をしているので、何時かは他の大国にも行くから、残りの姉妹にも会う事になるだろうな。


「では改めまして、本日は依頼を受けるのでしょうか?」


 ラーゼさんはすぐに受付嬢の営業スマイルで尋ね、僕は手に持っていたバイコーンの討伐依頼の依頼用紙を出した。


「はい、バイコーンの討伐依頼、確かに受注しました。気を付けてくださいね」


 ラーゼさんのその言葉と共に見送られ、僕達はギルドを出た。


 僕達は馬車に乗って城壁を出て森の街道を抜け、コレットさんの案内で目的地の湖を目指した。


――――――――――――――――――


 出発して2時間半たった頃に、目的地の湖に到着した。

 その湖はとても広く、コレットさんによると、ここではよく釣りの目的で訪れる人が多いとの事だ。

 という事は、繁殖期のバイコーンがいる以上危険で、今は一般人が来れる様な環境じゃないという事だ。

 それなら僕達が解決しないとな。


 僕が探知魔法を使おうとした処で、コレットさんが口を開いた。


「じゃあ、着いた処で、バイコーンを探す前にこのパーティーの現状の確認をしましょう。私達がどんな役回りが得意で、どんな魔法や武器を使うのかをね」


 確かにそれは一理ある。

 僕達は昨日の魔甲蜂との戦いでコレットさんが戦う姿は見てるが、それはあくまでほんの僅かな間だけ。

 完全な状態を確認していないから、今の内に互いの確認をしておこうという訳か。


「まずは私からね。私は弓術士で、武器はこの弓と腰に下げたこのクロスボウよ。魔法は、苦手な属性はなく主に風属性が中心で、それからロストマジックを覚えているわ」


「「ロストマジック!?」」


 僕とラティが思わず声を上げてしまった。

 コレットさんは、ロストマジックの魔法書だけじゃなく、ロストマジック自体も使えるのか。


「そうよ。そのロストマジックの内容は、戦闘時に見せてあげるから。」


 成程、楽しみは後でという訳か。


「それから、私の固有魔法は必中魔法。どんなに遠く離れていても、目に見える所なら、矢でも魔法でも必ず当てる事が出来る固有魔法よ。勿論魔力も消費するけど、普通なら届かない距離でもこれなら当てる事が出来るの」


 その無属性魔法は、弓を得意とするエルフのコレットさんとは最高の相性の魔法だな。

 それにエルフは視力が優れているらしいから、事実上かなり遠くまで視認出来る訳か。


「じゃあ、次は僕ですね。僕はどっちかというと、魔法戦士ですね。武器は主に魔剣2本の二刀流、魔槍、大剣型の神剣、魔法杖を使います。ですから戦闘では前衛を中心に担っています。魔法は全属性が使えて、特に雷属性に特化しています。後、固有魔法は探知魔法です」


「あたしは魔法使いです。主に、このエンシェントロッドでの魔法で後方支援をやります。魔法は全属性を使えます。それに、いざという時は短剣での近接戦も出来ます。固有魔法は、魔力の貯蔵魔法で、魔力の量にはかなり自信があります」


 僕とラティの詳細を聞いて、コレットさんはうんうんと頷いた。


「成程。2人とも中々の実力がある様ね。それに、探知魔法が使える人がいるのは大きいわ。中には、『探知魔法はただ魔物や目標の位置を探すだけでそれ以外は役に立たない』と言い張る人もいるけど、私はそんな事を1度も思った事はないわ。だって、いち早く魔物や目的の物の場所を探し当てるという事は、対策を立てる事も出来るから、これを役立たずなんて言う方がどうかしてるわ」


 コレットさんが饒舌に色々言っている。

 きっと、100年間の旅で色んな冒険者や貴族を見て来たから、余程の思いをしてきたんだろうな。


「んじゃあ、最後は俺だな。俺は拳闘士だ。武器はこのメルクリウスで、近接での肉弾戦で戦う。固有魔法は加速魔法。だから、前衛に特化してるな」


 こうして、僕達の戦力を改めて確認すると、今の銀月の翼の戦力はかなり理想的かもしれない。


 クレイルが前衛、ラティが後衛、僕は前衛から中距離、そしてコレットさんがその中距離から後衛、従魔も入れると、アリアとレクスが前衛に参加し、クルスは後衛の2人を守りつつ前にも出れて、アインが後衛に着く。

 こうするとかなり隙のない布陣になるな。


「じゃあ、ユーマくん、確認が済んだ処で、バイコーンを探知できる?」


「ええ。それくらいならお安い御用ですよ。サーチ」


 僕はさっそく探知魔法を発動し、周囲の索敵に当たった。

 すると、1分もしない内に僕の索敵にたくさんの魔力反応が現れた。


「反応がありました。東の方角に多数の魔力を感じます。数は30近く。魔力の強さはCランクですね」


「ランクまで分かるのね。それが出来る探知魔法の使い手は少ないと聞くけど、こうしてみると凄く心強い魔法だわ。それに探す速度も速いから頼りになるわ」


「コレットさんは、冒険者の旅をしていた頃に他の探知魔法の使い手は見た事なかったんですか?」


「何回か見た事あったけど、それはあくまで見た程度。実際にパーティーを組んで見る機会はなかったわね」


 そうか。

 コレットさんはハイエルフの冒険者で、アインの存在も公表していたから、彼女に近づく者には一定の信頼が無ければ、パーティーを組む事はなかった。

 だから僕の様な高度な探知魔法の使い手とパーティーを組む機会がなかったのか。


「よし、場所が分かったんなら、行こうぜ」


 クレイルの言葉で、僕達は目的を思い出し、バイコーンの反応があった方角へ足を進めた。

※前作の改稿に伴って、何か変化を入れたいと思いまして考えた結果、ベタですが主人公の知人の家族ネタをやろうと思いました。ラーゼ、リーゼと、この姉妹の名前から残りの姉妹の名前にある程度の予想がついた方もいると思いますが、今後も残り3人の姉妹もちゃんと出す予定ですので、応援よろしくお願いします。


「面白かった」、「続きが気になる」、「更新頑張ってください」と思った方は、ブックマークや評価、感想していただけると励みになります。

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感想は、確認し次第返信する方針で行きますので、良かった所、気になった所とかがありましたら、是非感想を送ってみてください。

お待ちしております。


次回予告

バイコーンの群れを発見し、戦闘を開始する銀月の翼。

そしてその中で、コレットとアインの能力を目の当たりにする。


次回、コレットとアインの力

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