第65話 クレイルとコレット
前回のあらすじ
コレットの自宅に招かれたユーマ達は己の目的を話す。
しかし、まだ渡すには不十分だった為、彼女に認められるまで彼女と臨時のパーティーを組む事を受け入れる。
「そういえば、コレットさんとクレイルくんって、どうやって出会ったの?」
ラティの質問は、クレイルとコレットさんの出会いについてだった。
確かにそれは気になる。
クレイルが4歳の頃に彼の両親が魔物との戦闘で亡くなり、クレイル母親の施した結界で生き延びたというのは知っているけど、クレイルが彼女と出会ったのはおそらくその後なんだろうな。
コレットさんはコーヒーの入ったカップをテーブルに置き、少し間をおいてから話し始めた。
「そうね。その前に、私の話から始まるけど、そこからで良ければ話すわよ」
「大丈夫ですよ。コレットさんがどんな風に生きてきたのかも気になりますから」
僕達はそれに頷き、コレットさんは話し始めた。
コレットさんは今から200年程前に、この国の平民の家系で生まれた。
彼女は5歳の時に行った従魔契約で、今までエルフ族でも契約者が現れなかったティターニアと適合していた事で、天才エルフとして称えられた。
そして彼女はその天才の名に恥じぬ成長を見せ、文学、戦闘、狩りなどのあらゆる分野で瞬く間に一流として頭角を現し、遂には通常は100歳か200歳を超えてから行われるのが通常のハイエルフへなる為の試練を、弱冠20歳で達成し最年少でハイエルフとなった。
これにより王族や貴族からの注目が更に集められ、それからの彼女には何度か貴族になる機会が多々あったが、誰よりも自由を愛していた彼女には貴族の称号は自分を縛る枷という認識だった為、全て断ってきた。
後に外の世界に憧れ、自分の世界を広げるべく冒険者になる決意を固め、30歳の時にアインと共に旅に出た。
彼女はハイエルフの冒険者であり、EXランクのティターニアを従魔にしている事で旅に出て半年足らずで各地で注目を集める存在となった。
その実力や彼女の類稀なる美貌から、各国の王族や多くの貴族が何度も言い寄ってきたが、彼女は全て一蹴してあらゆる意味で有名な存在となった。
中には不敬だと罵る王族もいたが、その時はアインの能力を見せつけ、逆に黙らせてやり過ごしたりしてきたらしい。
旅に出て50年以上たったある時、とある依頼でやってきた土地でアリアのお母さんである先代の竜神と出会い、アインの存在もあり彼女は先代竜神と親交を結び、その他にも多くの知り合いを作って楽しく旅を続けた。
その過程でいくつかのダンジョンを攻略し、そのドロップアイテムとしてロストマジックの魔法書を入手した。
そして旅立って約100年たった頃には、彼女はAランクの冒険者になっていた。
正確には旅立って2年ぐらいでAランクになっていたので、彼女の実力を考えればとっくの昔にSランクになっていてもおかしくはなかったのだが、彼女はそれ以上の欲を出さなかった為に昇格を辞退し続けた。
そして全ての大国を回り、ほぼ世界の全てを旅した彼女は1度エリアル王国に帰国し、それ以降は母国の冒険者として地道に狩りや軽い遠出程度の依頼を受けて過ごしていた。
この家も、それまでの旅で稼いだお金で買った物だった。
また、新人冒険者の指導などもして、彼らの実力や生存率の向上に貢献し、冒険者からもギルドからも絶大な信頼を得た。
そして50年程前に、生まれたばかりのアリアを連れた先代竜神が訪れ、その時にアインはアリアから姉として慕われる様になった。
それから更に約50年、彼女はこの国で冒険者達の相談を受けたり、新人冒険者の指導といったボランティア活動をして過ごしていたが、11年前のある日、あの街道のある森の付近で1人の少年を保護した。
それがクレイルだ。
彼女はクレイルから話しを聞いて、冒険者だった彼の両親が魔物との戦闘で命を落とし、彼は母親が施した結界で生き延びた事を知った。
その時にクレイルは自分も冒険者になるという決意をし、彼はコレットさんに冒険者になる為の修業を付けてくれと頼んだ。
彼女はボランティア活動を通して、それなりに冒険者の指導には慣れていたのでそれを了承し、彼の保護者となった。
クレイルはそれから11年間、彼女の下で修業を積んだ。
父親の戦闘スタイルを見て覚えていたのが幸いし、かなり初期段階で自分の戦い方を定着させた。
5歳になって魔力が安定して魔法の行使が出来る様になってからは、自身の無属性魔法の加速魔法と身体強化を組み合わせた戦法を編み出し、更に従魔契約で出会ったレクスとの連携も鍛え、10歳の時点でクレイルは高ランクの魔物とも戦える様になった。
そしてクレイルは15歳になってこの国の冒険者ギルドで冒険者登録をして、数ヶ月後にヴォルスガ王国で武闘大会が開かれる事を知り、まずはそこから始めて他の国も見て回ると決めて旅立った。
その後の彼女は、再び新人冒険者の指導役や後輩冒険者達の相談役などをしたり、狩りをしたりして過ごしていた。
「とまあ、これが私の出生やクレイルとの出会い、そしてクレイルが旅立った後の出来事よ」
「そうだったんですか。コレットさんがクレイルに修業を付けたから、クレイルはあれ程の強さを身に着けたんですね」
「私は別に何もしていないわ。クレイルが強くなったのは、全てこの子が頑張ったから。私はただきっかけを与えて見守っていただけ。彼の諦めない強い決意が、今の彼を生み出したの」
コレットさんの真っ直ぐな評価に、クレイル本人は照れくさそうな顔をしていた。
「でも、今の俺があるのはやっぱりコレットのお陰だ。あの時、俺を保護してくれなかったら、今頃俺はとっくの昔にくたばっていて、こうしてユーマやラティとも会う事は出来なかっただろうからな。だから、ありがとうな、コレット。俺を拾ってくれて」
クレイルが感謝して、コレットさんは嬉しさと気恥ずかしさが混ざった様な笑みを浮かべた。
「もう……そう言われたら、私も嬉しくなっちゃうじゃない」
クレイルとコレットさんは、やっぱりとても親密な関係みたいだな。
僕の横ではラティも楽しそうにしている。
「ねえ、やっぱり、2人のこれからが楽しみね」
「そうだね」
僕達はそれからも、楽しく話し合い、エリアル王国での初日を過ごした。
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次回予告
コレットを加えての依頼を受ける際、彼らはある依頼に目を付け、それを受ける事にする。
そしてその依頼を遂行する前に、ユーマ達はそれぞれの役割を確認する。
次回、それぞれの役割




