第64話 ロストマジックを習得する意味
前回のあらすじ
クレイルの知り合いのハイエルフ、コレットの従魔はアリアとレクスと同様のEXランクのティターニアだった。
そしてそのアインはアリアとは姉妹分の関係だった事が判明する。
その後ユーマ達はコレットの自宅に招かれる。
僕達はコレットさんの家に上がり、彼女が提供してくれた部屋に荷物を置いた後、リビングに集まっていた。
「それで、クレイルは『野暮用で戻ってきた』って言っていたけど、あなた達はどう言った目的でこの国に来たの?」
早速彼女から本題を聞かれ、僕達はこの国に来た経緯と目的を話した。
ヴォルスガ王国でクレイルと出会い、僕達のパーティーに加入した後、次の目的地を話していた時僕とラティのロストマジックを習得する旅をしようと話した事。
その際にクレイルからエリアル王国に行かないかと提案された事。
そして、そこにいるクレイルの知り合いのハイエルフ、つまりコレットさんがロストマジックの魔法書を2冊持っている事をクレイルが教えてくれて、その魔法書を求めてここまで来た事を話すと、コレットさんは何か難しそうな顔をして、暫く考えると口を開いた。
「成程ね、話は分かったわ。確かに、私はロストマジックの魔法書を2冊持っているわ。でも、今の時点では、あなた達に渡す事は出来ないわ」
コレットさんの口から出た答えは、ある程度予想出来ていた答えだ。
確かにいくらクレイルの友達でも、今さっき知り合ったばかりの者にそんな貴重な物を渡す人はいないだろうな。
でも、この人の考えなら、別にも理由がありそうだ。
だがその答えはクレイルには予想外だった様だった。
「なんでだ、コレット? こいつらは信用できる奴らだ。それなら、魔法書を渡しても大丈夫だとは思うんだけど」
クレイルがいいタイミングで理由を尋ねてくれた。
「そうね。クレイルの話から纏めて、君達が悪人じゃないという事は分かったわ。でも、これだけは確認させて欲しいの。ロストマジックを身に着ける事が、何を意味するのか」
1番の理由はやはりそれか。
ロストマジックはかつて、歴史上最強と言われた固有魔法の無属性魔法で、後に使う者がこの世を去り魔法自体も歴史の闇に消えた、文字通り失われた魔法だ。
「でも、そのロストマジックの原理や技術をもとに、現代での一部の魔法やマジックアイテムが開発されたの。君達が知る物だと、魔法なら収納魔法、マジックアイテムならゴーレムとかが代表的な物よ」
そして、ロストマジックはその現代の無属性の標準魔法やマジックアイテムに使われている魔法技術の、いわば元祖的な存在でもある。
この時代でそれが使えるという事は、この世界の魔法の歴史を大きく揺るがす事も出来、軍事利用したならば、世界の勢力バランスが一気にその使い手を所有する国に傾く。
「つまり、ロストマジックを身に着けるという事は、魔法の文明だけでなく、自分達の人生を大きく変えてしまう可能性があるの。クレイルはそれが分かってるからこそ、両親の遺した魔法書で亜空間魔法を覚えたの。君達に、その覚悟がある?」
僕とラティはその言葉に大きく頷いた。
「勿論です。でなければ、軽々しくロストマジックを身に着けたいなんて言いません」
「それに、あたし達は既にEXランクの魔物と従魔契約している身です。それに1つや2つ自分の人生が変わる様な事が増えても、あたし達はそれを受け入れる覚悟があります」
元々僕達の人生は、アリア達と出会った時点で大きく変わった様なものだ。
それなら、ロストマジックを覚えて、人生が更に変わっても僕達にはそれを受け入れる覚悟はとっくにできている。
それ程、僕とラティの覚悟は大きかった。
僕とラティの真っ直ぐな言葉を聞いて、コレットさんは微笑んだ。
「そう、あなた達の覚悟は本物みたいね。でも、それでも今すぐに渡す事は出来ないわ。暫くはこの国で冒険者活動をして、渡しても大丈夫そうなら私の判断で差し出すわ。悪いけど、暫くは我慢してね」
コレットさんの言葉は完全に的を得ているので、僕達はそれを受け入れた。
「ごめんな、ユーマ、ラティ。コレットなら俺が頼めばくれると思っていたけど、考えが甘かった」
クレイルはコレットさんがすぐにくれると思っていた様で、僕達の期待を裏切ったと思い謝罪してきた。
「気にしないで、クレイル。これはある程度覚悟していたから」
「うん。要は、あたし達がコレットさんに、魔法書を渡しても大丈夫って所を見せればいいんでしょ? 時間はあるんだし、暫くはこの国に滞在して、いろいろ経験しちゃいましょう」
「逞しいのね、あなた達。気に入ったわ! じゃあ、ここにいる間は、私と4人で臨時のパーティーを組みましょう!」
「いいんですか?」
「ええ、それに君達からしたら、常に私と一緒にいた方が、都合がいいでしょう?」
それはそうだ。
コレットさんに認めてもらうなら、一緒に行動していた方が何かと都合がいいに決まっている。
「それなら、ここにいる間は、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「よろしくな、コレット」
「こちらこそ。Aランクの冒険者の実力、たっぷりと見せてあげるわ」
僕達は互いに手を重ね合い、一緒にパーティーを組む事を決意した。
その夜、僕はコレットさんにキッチンを借りて、夕食作りに入った。
コレットさんが自分の家だから自分が用意すると言ったけど、僕がやりたいって事とラティとクレイルが僕の作る料理の美味しさを伝えて、次第に興味を持ったのか彼女は僕に任せてくれた。
そして、僕が皆に出した献立は、以前ここに来る度の途中で立ち寄った川で捕った魚を焼いた物に、野菜ときのこの煮物、それに炊いた米と味噌汁という和食中心の献立だった。
最近洋風や味わいの強い料理が多かったから、ちょっと嗜好を変えて素朴な味わいのメニューにしてみた。
「あら、本当に美味しいわ。この魚の塩加減も絶妙だけど、こっちの煮物もいい味が出てるわ。ユーマくん、あなた料理人を目指していたりするの?」
「目指していませんよ。これはあくまで僕の趣味ですから」
「趣味でも、これ程の腕なら十分お店を出せるレベルよ」
「やっぱりそう思うか、コレット! もしユーマが店を出したら、十中八九開店1日目で大繁盛すると思うぜ!」
クレイルとコレットさんは僕がお店を出す姿を想像したのか、そんな架空の未来を妄想している。
「でも、もしユーマくんがお店を出したら、繁盛した分、あたし達が食べる分が減ると思うわよ」
ラティがかなり真剣な表情でそんな事を言うと、2人はハッと表情を変えて僕に詰め寄ってきた。
「ユーマくん、前言撤回するわ! 絶対にお店を出しちゃ駄目よ!」
「そうだ、ユーマ! 俺達に食わせる分だけで十分だからな!!」
そんな2人の迫力があまりにも冗談には聞こえなかった為、僕は苦笑いするだけであった。
そして、ラティとクレイル、クルスとレクスはかなりの量をお代わりする中、コレットさんは普通の量で食事を終えた。
因みに、今日のデザートは水羊羹で、本日もアリアは満足してくれました。
そして僕達は片付けを終えて暫く談笑していたが、ふとラティがある話題に切り替えた。
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次回予告
ラティからクレイルとコレットの出会いを聞かれるコレット。
彼女はその期待に応え、自分の過去も含めたクレイルとの出会いを語る。
次回、クレイルとコレット




