第61話 新たな家族との日々
前回のあらすじ
ロストマジックの習得を求め、エリアル王国にいるクレイルの知り合いを訪ねる事にしたユーマ達。
バロン達もそれぞれの目的地を決め、ユーマはアルビラ王国を目的地に決めたゼノンにゲイル達への手紙を預けた。
ヴォルスガ王国を出て数日、僕達はエリアル王国を目指して、馬車での旅を続けている。
この数日の間に、クレイルの魔力を馬型ゴーレムに登録させた為、クレイルも馬車の御者が出来る様になった。
そんな僕達は今、
「はい、これで」
「だああああぁぁぁぁ!! また負けたぁぁぁぁ!!」
アリアとクルスに御者台を任せて、馬車の中でボードゲームをしている。
因みに今は、クレイルがラティとリバーシをしていて、クレイルが惨敗した所だったりする。
クレイルとは彼が加入してからよくボードゲームをしているのだが、ルールは覚えたがクレイルはあまり後先の事を考えずに駒を進めたりマスを埋める為、結果リバーシや将棋、チェスといったボードゲーム全般では中々勝てないのだ。
「でも、このボードゲームって、ほんとに面白いな。ユーマが前にいた世界には、こんな面白い物があるんだな」
でも、クレイルはあまり勝敗に拘っていないのか、勝てなくてもこのゲーム自体をとても気に入っている。
そしてもう気付いたかと思うが、クレイルは僕の前世の事を知っている。
出発して少しした時に、僕が彼に話したからだ。
ゼノンさん達には話すつもりはあの時はなかったけど、クレイルにはすぐに話そうと思っていた。
理由は、この銀月の翼のモットーに従ってだ。
この銀月の翼は、元々、僕とラティ、アリアとクルスの2人と2体で結成したパーティーだ。
この人間の組み合わせで、僕とラティは婚約者でいずれは結婚する。
つまり、僕達はもう家族みたいな物だ。
そして、アリアとクルスもまた僕達の家族。
そんな僕達のパーティー内での関係は、家族関係という形で成り立っている。
そして新たに加入したクレイルとレクスも、もう僕達の家族も同然だ。
そんな家族に隠し事をするのは、僕達の関係を壊すようなものだと僕達は思っていた。
だからクレイルとレクスには、僕の前世の事を話したんだ。
因みに、前世の事を知ったクレイルは、最初は驚いたみたいだがすぐに納得した。
理由は、僕の礼儀正しさが何だか年不相応だとか、僕から漂う雰囲気がもっと年上の男のそれに似ているとからしい。
とはいえ、やっぱりアライアンスを結んだ皆に秘密を隠したままにするのは、それはそれで後味が悪かったな。
いつかまた会った時には、ちゃんと話しておこう。
あの人達なら、分かってくれる筈だ。
そうして旅立ってからの事を振り返って色々決めている内に、僕の探知魔法に反応が現れた。
『皆さん、敵が近づいていますよ』
同時にアリアが幕から顔を出して、僕達に知らせてくれた。
「こっちも補足してるよ。今行くから、アリアはクルスと一緒に周囲の警戒を強めて」
『分かりました』
僕達はすぐに装備を出して、馬車から出てアリアとクルスと合流し、クレイルも亜空間からレクスを呼び出した。
そして僕達の周囲に現れたのは、人の姿をした犬の魔物だった。
その魔物は全身を革や鉄の鎧で身を包み、手には剣や槍などを持って武装している。
「コボルトか。数は30、まあまあの数だね。多分、こいつらの縄張りに近づいたんじゃないかな」
コボルトは、Eランクの魔物だ。
常に群れで行動し、中には上位種のDランクのハイコボルトなどが群れを統率して、集落を築く事もある魔物だ。
討伐証明部位は右手。
何故右手なのかというと、過去に2体討伐してそれぞれから両手を切り落として提出し、4体に捏造した事があるらしい。
それ以来、捏造を防ぐ為に、コボルトの討伐証明部位は右手に固定されたという実話がある。
「だが、こいつらの中にはハイコボルトはいないみたいだ。という事は、こいつらはまだ群れを作ったばかりか、こいつらで全員の小規模な集団の可能性が高い。このまま一気に全滅させちまおう」
「そうね。数は30匹だから、1人10匹の割り当てね」
「そう言う事だね。アリア達は念の為に、馬車の警護に回って」
『分かりました』
「クルルルゥ」
「ウオオン」
そして僕達はコボルトの集団との戦闘を開始した。
僕は刀槍にしたジルドラスとライトニングエンチャントによる攻撃で一掃し、クレイルは身体強化と加速魔法を重ね掛けした超高速攻撃で一掃し、ラティは風や氷の矢の魔法で一掃し、5分もしない内にコボルトの群れは片付いた。
「皆、お疲れ様」
「ああ、皆怪我はないみたいだな」
「みたいね。それにしても、いつもより早く終わったわね」
「多分、クレイルが入って戦力が上がったからだね。人数が2人から3人になった事で役割分担が増えたから、その分僕達の負担も減ったんだ。その辺は、クレイルも同じなんじゃない?」
「そうだな。俺も今まではレクスとだけだったから、その頃と比べると、俺も戦闘中の視野が広がって結構余裕を持って戦えたな」
僕達は新しい仲間が加わった事で今までの負担が減り、クレイルは場合によっては1人で戦う様な事もなくなった為、僕達はお互いに全体的に余裕を持って戦える様になった。
その後僕達はコボルトの右手首を斬り落とし、牙や毛皮に魔石、それからこいつらが持っていた武器を回収して、馬車を走らせた。
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その夜は野営して、僕は皆の食事を作った。
今日のメニューはこの前討伐したサイクロプスの肉を使った醤油ベースの煮込みだ。
サイクロプスの肉は結構な高級肉として扱われ、ちょっと臭みがあるがその匂いも気にならないくらいに美味しいとの事だ。
だが僕は下ごしらえの段階で、ニンニクやその他の香菜を使って臭みを取り除いた為、肉自体には臭みは残らず純粋な料理としての匂いだけとなった。
後は、サラダに今日は醤油味の料理なので米を炊いた。
結果は好評で、皆綺麗に食べてくれた。
元々ラティ、アリア、クルスの大食い組がよく食べる方だったけど、新たに加入したクレイルとレクスもかなりの量を食べる為、事実上僕達の6人分は常人の20人分程の量がある。
まあ、それでも僕としては作り甲斐があるし、皆残さずに食べてくれるから、なにも文句はない。
その後にデザートとしてフルーツの果肉をふんだんに使ったゼリーを出したが、そこは甘党竜神ことアリアが特に喜んでくれた。
そんなこんなで僕達は順調に旅をつづけ、途中の街のギルドで討伐した魔物の報告をしたり、ギルドや商会などで魔石や素材などを売ったりして路銀を稼ぎ、食料の補給をしたりの日々を送り、僕達は遂にエリアル王国に到着しようとしていた。
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魔物情報
コボルト
革の鎧を身に着け、剣や槍などで武装した二足歩行の犬の姿をした魔物。Eランク。常に集団で行動して集落を築く修正を持ち、団体行動ゆえにチームワークに優れている。また、集落の規模によっては上位種のコボルトが統率している。討伐証明部位は右手。
ハイコボルト
コボルトの上位種のDランクの魔物。通常のコボルトよりやや背が高く、知能もより発達している。築いた集落の規模によっては、集落のリーダーを務める事もある。討伐証明部位は左手。
次回予告
エリアル王国の王都に通じる森へやってきたユーマ達。
しかしそこで魔物の急襲を受ける。
その時現れたのは……。
次回、出会いと再会




