第57話 アライアンス結成
前回のあらすじ
武闘大会が終了し、ユーマ達はクレイル、バロン、トロス、ダグリス、ゼノン、イリスと共に祝勝会を行う。
その中で、ユーマはクレイルを銀月の翼に勧誘し、クレイルはそれを承諾、彼らに新しい仲間が増えるのであった。
祝勝会から一晩経ち、僕らは今、ギルドに来ている。
目的は、クレイルの銀月の翼への加入手続きをする為と、バロンさん達とアライアンスを結ぶ為だ。
まずはクレイルの加入手続きをしている。
手順は、受付で加入用の登録用紙を貰い記入をして提出する事で、それが受理されればクレイルは晴れて銀月の翼の一員になれる。
その用紙の項目は、加入する人――本人の名前、加入する先のパーティーの名前、自分のランク、従魔の名前などだ。
従魔に関しては何らかの事情でいない場合は空欄でも出せるが、クレイルの場合は普段は従魔は「実家に預けてある」と言ってレクスの存在を隠している為、そう説明して事なきを得た。
クレイルは紙に記入を終えて、受付嬢に渡した。
「はい、登録用紙の受理を確認しました。これより本日から、クレイル様は冒険者パーティー、銀月の翼の一員となります」
「ありがとうございます」
「それから、ユーマ様、ラティ様、クレイル様の3名をDランクからCランクに昇格します」
「昇格ですか?」
受付嬢から、僕達のランクアップが告げられた。
「はい。ユーマ様、ラティ様は今年の武闘大会に最年少で参加し、優勝した実績により、クレイル様はやはり最年少で参加し、単独で準優勝した実績により昇格が認められました。それに、皆さんには盗賊の討伐記録もございましたので、それも含めましてランクアップには十分な実績がありますので」
そういえば、武闘大会でいい成績を出すとランクアップする場合もあるって、以前夜明けの風のソニアさんから聞いていたな。
それに僕達はこの国に来る途中盗賊を討伐したけど、クレイルも盗賊の討伐記録があったんだ。
そう思ってクレイルを見ると、僕の意図が分かったのか教えてくれた。
「ああ、俺はこの国に3か月くらい前から滞在していてな、武闘大会が開かれるまでこの国で依頼をいくつか受けていて、その中に盗賊の討伐依頼もあったんだ。冒険者ランクをDランクから上にあげるには、人を殺せる覚悟も条件に含まれているから、その経験を積む為に受けていたんだ」
「成程。僕達はここに来る途中、盗賊に襲われてね。その際にその盗賊を討伐して、このギルドで報告したんだ」
故に、僕達の盗賊の討伐記録がギルドに残されていたという訳だ。
僕達はギルドカードを渡して、ランクアップの手続きを済ませて、青になったカードを受け取った。
それに合わせて、バロンさん達がやってきた。
「ユーマ、クレイルの加入手続き、終わったか?」
「はい。それと同時に、僕達はCランクに昇格しました」
僕達は青のギルドカードを見せて、ランクアップした事を伝えた。
「そうか、それは良かったな。それなら、Aランクの俺達や、Bランクのゼノン達と高ランクの依頼を受けても、大丈夫そうだな。なら、とっとと俺達とのアライアンスの手続きもしちまうぞ」
「はい」
次に僕達は、銀月の翼、マッハストーム、赤黒の魔竜のアライアンスの登録を申請した。
手順は、各パーティのリーダーが出てきて、登録用紙にそれぞれ記入する。
記入する項目は、自分のパーティー名とアライアンスを結ぶパーティー、または冒険者の名前を書く項目だけだ。
この場合は僕、バロンさん、ゼノンさんがパーティーリーダーな為、代表して書く事になる。
記入が終わった後、次に各自のギルドカードを提示して、そこにアライアンスを組むパーティーをそれぞれ登録する。
その一連の作業が終わって、僕達のアライアンスが結成された。
「はい、終わりました。これにより、マッハストーム、赤黒の魔竜、銀月の翼のアライアンス登録が完了しました」
受付嬢からカードを受け取って確認してみると、そこには新たな項目にアライアンスを結んでいるパーティーの名前が刻まれていた。
こうして、僕達は正式にアライアンスを結ぶ事が出来た。
「よし、これで俺達は晴れて同盟が結成された。これからよろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
「これからの付き合い、よろしくお願い申す」
互いに挨拶を済ませて、僕達は依頼ボードで受ける依頼を選び始めた。
イリスさんとトロスさんの提案で、Aランクの依頼を受ける事になった。
理由は、僕達に高ランクの依頼による経験を積む為だそうだ。
そして、イリスさんが、1枚の依頼の張り紙を見つけた。
「皆、この依頼なんてどうかな?」
その依頼は、以下の内容だった。
依頼は、サイクロプスの討伐依頼。
場所は、ここから馬車で往復1週間ほど離れた場所にある渓谷。
そこに3匹のサイクロプスが現れる様になったので、全て討伐して欲しいという内容だった。
サイクロプスは、ランクはBランクだが複数いるとその討伐難易度はAランクに匹敵する。
大きさは約7メートルで、一つ目で頭頂部には1本の角がある、魔物の巨人とも呼ばれている。
討伐証明部位は角。
戦闘力は、Bランクの中でも上位クラスで、手には自身のサイズに合った棍棒を持っていて、その単眼からは衝撃波を放つらしい。
四肢の筋力も強く、単純な力だけならAランクでも通用する程らしい。
「しかしイリスよ、何故にその依頼を選んだのだ? ユーマ殿達はつい先程Cランクに昇格したばかりなのだ。それでサイクロプスを3匹討伐するのは、いくら何でも無茶ではないか?」
「その辺もちゃんと考えてあるわ。サイクロプスは3匹いるんだから、私とゼノンで1匹、バロン、トロス、ダグリスの3人で1匹、ユーマくん、ラティちゃん、クレイルくんの3人で1匹ずつ倒すの。サイクロプスは単体ではBランクだから、Cランクの3人ならいけるかと思って」
成程、イリスさんは1パーティーにつき1匹のサイクロプスを倒すという考えで、この依頼を選んだのか。
確かに、それなら公平に魔石や素材を等分する事も出来る。
「ユーマさん、ラティさん、クレイルさん、どうでしょうか?」
「僕達は構いません。僕とラティは以前修行で高ランクの魔物と戦って討伐した事がありますので」
「俺も、小さい頃からよく狩りで高ランクの魔物を倒していたから、Bランクの1匹や2匹どうって事ありませんよ」
「そうですか。しかし無理だけはしないでください。本当にヤバくなった際には、必ず僕達を呼ぶ事。いいですね?」
僕らはその約束に頷き、受付で依頼を受注した。
その後バロンさんから、準備を整えて、2時間後に各自の従魔と共に正門前に集合という事になった。
僕らは既にアリア達と一緒にいたので、現在武器屋に来ている。
「すみません、このお店に投擲用の短剣や槍なんかはありますか?」
僕の質問に、店主の筋骨隆々な男性が答えた。
「おう、あるぜ。何本欲しいんだ?」
「とりあえず、短剣を30本、槍を15本お願いします」
「あいよ。ちっと待ってな」
そういって、店主は店の奥に姿を消した。
「なあ、ユーマ。何で、投擲の短剣や槍を買うんだ?」
「ちょっとした保険さ。武闘大会でのバロンさん達との戦いを通して、今後何らかの事態でラティの魔法による援護が難しい時に、自分で距離のある敵に魔法以外での攻撃手段を確保しようと思ってね」
「成程な。確かに、何かあった時の為に攻撃手段は1つでもある事に越した事はないしな」
「流石ユーマくん!」
そして僕は短剣30本と槍15本を合計金貨2枚と大銀貨4枚で買い、8人分の食料を1週間分用意して正門に来た。
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次回予告
合流したバロン達の従魔と顔合わせをするユーマ達。
その後、ユーマ達は彼らに自分達の従魔の秘密を打ち明ける。
次回、秘密の打ち明け




