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第55話 表彰式

前回のあらすじ

クレイルに追いつめられるも、ユーマの探知魔法を組み合わせたホーミング魔法により形勢が逆転し、クレイルは追いつめられる。

そして最後の勝負を制したのは、ユーマ達銀月の翼となった。

 控室に入ると、バロンさん達が待っていた。


「よう! ユーマ、ラティ、優勝おめでとう!」


「おめでとうございます、皆さん」


「おめでとさん!」


「ユーマ殿、ラティ殿、この度の優勝、おめでとうだ」


「おめでとう、ユーマくん、ラティちゃん」


 バロンさん、トロスさん、ダグリスさん、ゼノンさん、イリスさんの順に僕達にお祝いの言葉を送った。


「ありがとうございます」


「皆、ありがとう」


「おっ、クレイルも連れて来たのか?」


 バロンさんが僕が担いでいるクレイルに気が付いた。


「ええ。この後表彰式だから、回復魔法をかけて意識を戻そうと思いまして」


 クレイルの症状はバロンさん達の時と同じだが、3人の場合は少しして回復したが、クレイルの場合は魔力を限界まで消耗した状態でミネルヴァで斬ったから、まだ意識が戻っていない。


 そこで、外から回復魔法をかけて、意識を取り戻させようとした。


「できるんですか? クレイルさんは僕らの時と同じく、ユーマさんのあの神剣で斬られて魔力炉を損傷しています。ある程度の時間が経てば自然に修復されて目を覚ましますが、それが出来る回復魔法となりますと、かなり高度な魔法になると思います」


 そう、トロスさんの指摘通り、回復魔法には大きく分けて、初級、中級、上級、最上級の4つに分けられる。

 初級なら打撲、中級なら骨折など、上級なら四肢欠損など、最上級ならその四肢欠損に加え、あらゆる状態異常、損傷した魔力炉も回復可能となる。

 状態異常は別に回復魔法があるが、最上級魔法は全ての怪我や状態などを完全に治す事が出来る。

 ただし、失った血までは回復できない難点がある。


「大丈夫です。僕達は、冒険者の両親から魔法や戦闘などを教わりました。その教わった魔法では、僕達は最上級まで回復魔法が使える様になりました。だから、クレイルの魔力も回復できます」


 これに特に驚いているのは、パーティの中でも魔法を中心にしている、ダグリスさんとイリスさんだった。

 まだ成人したばかりの若さで最上級の回復魔法が使える者は極僅からしい。

 だから魔力操作に長けたラティはともかく、僕までもが出来るというのは予想外だったのだろう。


「お前達が規格外だとはわかっていたが、まさか最上級魔法まで使えるとは……」


「ラティちゃんもユーマくんも、途轍もなく高くそれで澄んだ魔力を持ってるから、2人はそれ程に高度な魔法が使えて制御できるのね」


 僕はクレイルを壁にもたれかけさせて、楽な姿勢にさせた。

 次にエンシェントロッドを抜いて魔力を集中した。


「じゃあ、始めます。パーフェクトヒール」


 僕はエンシェントロッドに込めた魔力をクレイルに注ぎ、クレイルの体が純白の光に包まれた。


 パーフェクトヒール、回復魔法の最上級魔法だ。

 その光に包まれたことで、クレイルの呼吸は次第に安定し、探知魔法で確認してみると、ミネルヴァで斬られて損傷した魔力炉も元に修復されていた。


「うぅっ……ここは……」


 回復した事で、クレイルの意識が戻った。


「クレイル、意識が戻ったね? ここはコロシアムの控室だよ。君は僕達との試合に負けて、僕達がここに運んで、君に回復魔法をかけたんだ」


「ユーマ……試合って……ああ、そうか……俺は負けたのか……」


 クレイルはあの最後の勝負を思い出して納得したのか、顔を俯かせた。


「……なあ、ユーマ。俺、強かったか?」


 クレイルの口から出た言葉は、僕達への質問だった。

 だが、この質問の答えは決まっている。


「強かったよ、クレイル。君の戦い方、少なくとも他の人には真似できない事だよ。加速魔法と身体強化の重ね掛け、あれはとんでもない戦い方だった。もし、僕が最初のスピードで対抗するやり方だけで戦い続けたら、間違いなく僕達が負けていたよ」


 そう、今回の勝敗を決したのは、僕達とクレイルの戦い方のバリエーションの数の差だ。

 最初は、僕がスピード中心に動いて、ラティがその援護の魔法を放つという、僕達の1番基本的な戦術だったが、クレイルのスピードの正体があまりにも規格外且つ、とても太刀打ちできなかった為、僕達は僕の探知魔法を中心にした戦い方に切り替えた。

 もし、僕の無属性魔法が探知魔法じゃなかったら、この勝負に僕達の勝算はほぼ皆無だったのは確実だ。


 僕の言葉を聞いて、クレイルは少しだが安堵した様な表情になった。

 だが僕の言葉はまだ終わってない。


「それにクレイル、君はこの大会にたった1人で出場して、それで決勝まで勝ち残ったんだよ。それも、僕やラティと同じく今大会に最年少で参加してだよ。誰も君を弱いなんて思っていないよ」


 僕の言葉に、ラティも、バロンさん達も、ゼノンさん達も頷いて肯定していた。


「そうか……ありがとうな、ユーマ。それを聞いて吹っ切れたぜ」


 クレイルは元気を取り戻して立ち上がった。


「ユーマ、ラティ、今日、お前達と戦えて俺は本当に嬉しかった。同時に、俺は自身の限界を知る事が出来た。だから、お前達に出会えて本当に良かったぜ。ありがとうな」


「こちらこそ。君と戦えて、僕達もまた一段と強くなれた」


「ありがとう、クレイルくん」


 僕達3人は固く握手を交わした。


「さあクレイル、元気になった所で、この後すぐに表彰式だよ」


「クレイル君は準優勝として表彰されるね」


「ああ! 行こうぜ!」


 僕達は元気になったクレイルと一緒に、再びフィールドに向かった。


――――――――――――――――――――


 表彰式は、前世のスポーツの大会のと大して変わらなかった。

 僕達銀月の翼は優勝チーム、クレイルは準優勝、マッハストームともう1チームが準々優勝チームとなった。


 そこに、獣王陛下が側近らしき人を連れて僕らの元にやってきた。


「銀月の翼の者達よ、この度の優勝、誠に素晴らしかった。君達の優勝を祝して、賞金としてこの白金貨100枚を進呈する」


 優勝した僕達には賞金として、白金貨100枚が進呈された。

 これって、日本円に換算したら、1枚が1000万だからそれが100枚で、10億円になってしまった。


 元々持っていた修業時代に貯めた資金がまだ残っていて、これまでの旅路での魔物の討伐報酬と依頼の報酬を合わせると、最早前世では考えられない金額を所持してしまった。

 正直こんな大金を持ってしまうと、前世の頃に染みついていた僕の倹約神経が拒否反応を起こしそうだった。


「そして、この大会に優勝した者達は、このヴォルスガ王国で貴族として暮らす事も許されるが、どうする?」


 そういえば、この国の文化にそんな事もあったな。

 でも、僕達の答えは決まっている。


「申し訳ありませんが、私達は貴族になるつもりはありません。そして、私達はどの貴族に仕える気もありません」


 僕のこの宣言に、会場内は驚愕の声がちらほら聞こえた。

 よく見ると、その声を上げたのはいかにも悔しそうな表情をした貴族らしき人達だった。


 これが、僕が考えた対貴族対策の答えだ。

 僕達が貴族の辞退、そして、この際にこの会場に来ている貴族達に、僕達が仕えるつもりはないとはっきりと言ってやる事で周りの貴族達にその意思を見せつける。

 それによって、王の前で宣言する事で外堀も埋めた為、これで貴族達も妙なちょっかいはかけにくくなった筈だ。

 一国の王の前で貴族になるつもりも誰にも仕える気はないと言った事で、そんな者を囲おうという様な勇気がある貴族はいないだろうからね。


「そうか。君達がそう決めたのならば、君達の決断を私は尊重しよう。では、君達は今大会に優勝した強者として称えよう!」


 獣王陛下の宣言によって、歓声や拍手が響き渡った。

 かくして、様々な出来事を残して、今年の武闘大会は幕を下ろした。

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お待ちしております。


次回予告

武闘大会が終わり、ユーマ達の優勝を祝うため、祝勝会が行われる。

そしてその中で、ユーマはクレイルにある提案をする。


次回、新しい仲間

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