第54話 決着
前回のあらすじ
ついにクレイルとの決勝戦が始まる。
クレイルとの直接の対決を通し、2人はクレイルの強さの秘密が彼の固有魔法によるものだと知る。
その魔法の強さの前に、ユーマ達は追い詰められる。
クレイルの強さを前に、僕はある魔法の使用を決意した。
それは僕の固有魔法、探知魔法を最大限に引き出せるとっておきの魔法だ。
「こうなったら、奥の手だ! サーチ、ロックオン! ライトニングニードル!!」
僕は周囲に雷の魔力で構成された10本の棘を作り出し、クレイルに向かって放った。
「甘いぜ!」
クレイルは難なく加速して躱した。
「確かにお前の雷魔法は強力だ。もしまともに喰らえば、俺もひとたまりもない。だが、直線的に俺に向かってくるなら、十分躱す事も出来……ぐわああぁっ!!」
出来ると言いかけた瞬間、クレイルの体が突然電気に包まれて彼は感電した。
その正体は今さっきクレイルが躱した、僕のライトニングニードルだった。
そして、クレイルは体中から黒い煙を出しながら僕を睨んだ。
「お前……今……何をした……」
「簡単な事さ。僕の無属性魔法、探知魔法で君の魔力を覚えて、次に出したライトニングニードルに君の魔力を記憶させたんだ。こうすれば、僕の魔法は目標の魔力に目掛けて、何処までも追いかけてくる事が出来るんだ」
この魔法は、前世のホーミングミサイルのイメージを浮かべて編み出した、僕のオリジナル魔法だ。
探知魔法で目標物の魔力や情報などを放つ魔法に記憶させる事で、その放った魔法は目標が逃げてもその魔力を感じる限り何処までも追跡してくる。
「名付けるなら、ホーミング魔法。これなら、君の加速魔法にも対抗できるって事が、今分かったからね」
この説明に、今度はクレイルが絶句していた。
「探知魔法にそんな使い方が……しかも相手を追尾する魔法なんて、お前なんて魔法を編み出してんだよ」
「悪いけど、ここまで来た以上、僕達も易々と負ける訳にも行かないんだ。行くよ! ロックオン! ボルテックスキャノン!!」
僕はクレイルの魔力を記憶させた雷弾を放った。
「く……っ! 加速!」
クレイルは加速して、少しでも雷弾との距離を開けようとした。
「クレイル、1つ忘れていない? 僕達は2人いるって事を!」
僕は後ろにいたラティにアイコンタクトを送って、ラティもそれに応えた。
「アースクリエイション!!」
ラティはクレイルが加速する瞬間に向いていた方角に、土魔法で3メートルほどの壁を三方向に作って、逃げ場を塞いだ。
ラティが土魔法でその場所の地面を操作して、土壁を作ったんだ。
「ちっ! でもまだだ!!」
クレイルはその加速状態のまま、壁を蹴って上空へ逃げた。
それと同時に、壁に雷弾が被弾して壁は粉々に吹っ飛んだ。
「まだ上が残ってる! 残念だったな!」
いや、これが僕達の狙いだ。
「バーニングブラスト!!」
すかさずにラティが上空に向かって、炎の魔力波を発射した。
いくら加速魔法と身体強化でも、空中なら身動きも急な方向転換も出来ない。
「不味い! ちっ! こうなったら……エアステップ!」
クレイルの脚に風の魔力を感じると、クレイルは空中を蹴ってラティの魔法を躱した。
あれは確か、風の魔力で空中に足場を作って空を走る様に移動する魔法だ。
「やっぱり属性魔法も使えたのか! でも、まだ僕もいる! ロックオン! マルチプル! ライトニングアロー!!」
僕は全部で20本の雷の矢を放ち、クレイルに向けて自動追尾させた。
「こりゃ、ちとヤバいな! でもな!」
クレイルは加速したエアステップで、瞬時に地上に駆けた。
「地上に立てば、こっちのもんだ! 行くぜ! フレイムフィスト!!」
クレイルは迫りくる雷の矢を、炎を纏った両手にメルクリウスによる連撃の拳で20本の矢を全て打ち消した。
「成程、加速魔法をかけた状態での炎の連続パンチか。クレイルの無属性魔法を応用した複合魔法だね?」
「ああ、そうさ。だけどな、俺もまだまだいけるぜ、ユーマ! ソニックフィスト!!」
クレイルはまたしても加速して僕の目の前に現れ、風の魔力を纏った音速の拳を繰り出してきた。
「ブルークリムゾン!!」
僕の繰り出した炎と氷の剣戟とクレイルの音速の拳が激突した。
クレイルはこの事に、かなり驚いていた。
「はあっ!? どうして、俺の拳の軌道が分かったんだ!? 俺の加速魔法と身体強化の攻撃は、お前達には見えなかった筈! しかも、今は2段階目の加速状態なんだぞ!」
確かに2段階の加速状態なら、普通の人には気づかないまま攻撃を受けていただろうね。
でも、
「見える訳ないじゃん。でも、僕の探知魔法と視力強化で、君の魔力を視認して1番魔力の集まっている場所を探せば、あとは加速していても魔力の流れで、攻撃の軌道がある程度わかる。さっきまではエンチャントでスピードに対抗しようと思っていたけど、クレイルのスピードが魔法の効果によるものなら、僕の探知で把握できると踏んだんだ」
そしてそれが効果覿面だと、今ので実証された。
「それにさっきまでのクレイルとの戦いで分かった事があるんだ。肉弾戦主体の戦い方では、自分は攻撃する時に必ず相手のすぐ傍にいなければいけないってね。つまり、どんなに速くても攻撃している間は、相手は必ず自分の手の届く範囲にいるって事だよ!」
これは昨日のゼノンさんとの模擬戦で彼から近接戦での戦い方のメリットとデメリットを知ったからこそ気付いた事だ。
肉弾戦は武器を持っていない以上己の体を武器にして戦う、つまり常に相手に接近している必要があるという事だ。
そこに僕の探知魔法でクレイルの魔力を感知して1番強い部分の魔力の動きを追えば、今の様にクレイルの加速状態の拳を捉える事も出来る。
「クレイル、僕はもう君の速さに対抗しようなんて思っていない。それにさっきも言ったけど、僕は――僕達は2人いるって事を忘れないで!」
今のクレイルは僕の攻撃との鍔迫り合いで、動きが止まっている。
なにも、クレイルの攻撃を食らわせる方法がホーミング魔法だけな訳じゃない。
「ブレイズキャノン!!」
クレイルの脇腹に、ラティが放った火炎弾が炸裂した。
「うわっちち!!」
クレイルは火炎の直撃により、一度後退した。
「どうだい、クレイル。1人1人では君のスピードには敵わなくても、僕とラティ、2人の良い所を組み合わせて、互いを補い合えばこういう事も出来るんだ」
続けてラティも言葉を綴る。
「クレイルくんは魔法と体術、この2つを組み合わせて戦う事で、戦闘力を何倍にも上げていた。だから、あたし達もそれぞれの魔法と自分達の戦い方を組み合わせて戦えば、クレイルくんにダメージを与えられるの」
これが昨日のゼノンさんとの模擬戦で出した答えだ。
さっき言った通りいくら動きが速く、体術が強力でも、攻撃している間は相手は自分の手の届く距離にいて、一瞬だが動きも止まる。
その隙を僕が作りラティがそこを魔法で攻撃する。
お互いを信頼しているからこそできる、僕達のチームワークがなせる業だ。
「成程な。やっぱりお前達は面白いぜ。この戦いの中で俺に対する戦い方を瞬時に身に着け、それで完璧な連携で俺と互角にまで戦えている。こんな奴らは初めてだ。でもな、俺もここまで来た冒険者であると同時に、1人の戦士! 最後まで戦い抜いてやるぜ!!」
クレイルは再び加速と身体強化をかけて、突撃しようとした。
だがさっきと違って、魔力が四肢全ての集中されていた。
クレイルもまた、僕達の成長に合わせて自分も即時に対応していた。
「四肢全てに魔力が集まってる。これだけじゃ、すぐには軌道は読めない。それなら! ライトニングウォール!!」
僕は自分達の周囲に雷の壁を発生させた。
これなら、クレイルは壁を超える為に、跳ぶしかない筈だ。
「馬鹿め! 俺がこの壁に直接突っ込むと思ったのか! こんな物、普通に飛び越えて突破できるぜ!」
案の定、クレイルは僕らの頭上に姿を現した。
しかも、攻撃態勢に入ってるから、さっきの様な方向転換が出来る態勢じゃない。
今なら魔法が当たる!
「ビンゴだ! ラティ!」
「うん!」
僕らはエンシェントロッドを構え、魔法の発射態勢に入った。
「ボルテックスキャノン!!」
「ブレイズキャノン!!」
僕の放った雷弾と、ラティの放った火炎弾が1つになり、巨大な炎と雷の魔力弾となってクレイルに襲い掛かった。
「くそっ! こいつら、俺がこうする事を見越していたか! でもまだだ! サンダーフィスト!!」
クレイルは雷属性の魔力を纏った拳で迎え撃ったが、僕の魔力が勝り、クレイルはその魔力弾の直撃を受け、落ちてきた。
「勝ったの……?」
ラティが呟いたが、クレイルはそれに反応するかの様に、ふらつきながらも立ち上がった。
やっぱりそういうセリフはフラグなんだなと、痛感した。
「まだだ……俺は……まだ……負けてねえ……ぞ……」
既に体はボロボロになり、恐らく残りの魔力も少ない筈。
これではもう戦いを続行するのは無理だ。
そう判断した僕は、静かにミネルヴァを抜いた。
「ラティ、クレイルはもう限界だ。これ以上の戦いはクレイルの命に関わる可能性がある。だから、僕が全ての決着をつける」
「分かったわ」
僕は身体強化をかけ、クレイルに目掛けて突進した。
「いいぜ……ユーマ……最後の勝負と、行こうじゃ……ねえか……」
クレイルは残りの魔力を注いで加速して、拳を構えてきた。
僕もミネルヴァに魔力を籠め、僕とクレイルの最後の一撃が降り抜かれ、僕らは互いを通過した。
僕は右肩に直撃を受けたが、クレイルは膝から崩れ落ちて倒れた。
あのすれ違い様にミネルヴァで魔力を切り裂いて、一時的な魔力の欠乏症にしたんだ。
「そこまで!! クレイル選手の戦闘不能により、優勝は銀月の翼!!」
審判の掛け声で、会場内に今まで以上にない歓声が響いた。
「やった……優勝したんだ……」
「やったわね、ユーマくん!」
僕の下にラティが飛びついてきた。
「うん、僕達は優勝したんだ」
僕達が優勝の喜びに浸ってると、審判の人が寄ってきた。
「銀月の翼の皆さん、今から1時間後に表彰式を行います。その時にまたここに来てください」
「分かりました」
僕達はクレイルを抱えてフィールドを出て、控室に向かった。
その際、僕らの傷は再生して、クレイルの体も元に戻った。
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次回予告
試合が終わり、ユーマ達はクレイルと心を通わせる。
そして、大会の表彰式が行われる。
次回、表彰式




