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第52話 アライアンス

前回のあらすじ

デイツとの賭けに勝ったユーマは、無事ラティとの婚姻を守り抜く。

そして決勝の相手は、2人が出会った友達、クレイルとなった。

 僕達はコロシアムを出る為に、アリア達を引き取って通路を歩いている。


「やっぱり、決勝戦の相手はクレイルくんになったわね」


「そうだね。これまでのクレイルの試合を見て分かった事は、彼は身体強化と装備した手甲と脚甲による格闘術のみで戦っている事だ」


 そう、クレイルのこれまでの戦闘は、全て身体強化と獣人特有の高い身体能力の組み合わせによる手甲と脚甲での徒手格闘のみで戦っている事。

 8属性のどの魔法も使っていないのは、単に属性魔法が苦手なのか、それとも隠しているのか。

 いずれも、明日戦ってみないと分からない。


「まあ、俺達から見ても、あのクレイルってガキは只者じゃないぜ。戦闘中の彼奴の目、ありゃ相当な修羅場を潜り抜けてきた奴の目だ」


「そうですね……処で、何でバロンさん達が一緒にいるんですか?」


 そう、何故か、マッハストームの皆も一緒だった。


「それはな、俺らはお前達の事が気に入った。だから、もっと親睦を深めたいと思ったんだ」


 バロンさんはそう言って豪快な笑みを見せた。

 同時に僕の背中をバシバシと叩いてくる。

 物理攻撃を無効にする魔竜のローブの上からだというのに、地味に痛みを感じるのは何故だろう……。


「すみません、うちのリーダーがご迷惑をかけて。この人はこの通りの性格ですから、一度言い出したら聞かなくて」


 トロスさんが謝ってくる。


「まあ、そう言うなよ、トロス! お前だって、こいつらの事気に入ってるんだろ?」


 ダグリスさんがトロスさんの背中をバシバシ叩きながら声を掛ける。


「……訂正します。この人ではなく、この人達でした」


 「達」って事は、ダグリスさんもバロンさんと同類って捉えているんだな……。

 こうして見ていると、トロスさんが彼らを縁の下で支えている苦労人だというのが分かる。


「トロスさん、僕達もあなた達と親睦を深めるのには反対はありません。Aランクの冒険者と親睦を深めれば、今後の冒険者生活に役立ちますから」


「そうですよ。だからトロスさん、元気を出してください」


 僕達の言葉に、トロスさんの瞳に活気が戻ってくる。


「ありがとうございます。そうだ。親睦を深めるなら、いっその事僕達とアライアンスを結びませんか?」


「アライアンスですか? それって確か、パーティー同士による同盟の事ですよね?」


「そうです。アライアンスを結んだパーティーで依頼を受けた場合、そのパーティーは一つのパーティーとして依頼を受ける事が出来るんです。つまり、パーティーとしての枠に制限がある場合、アライアンスを結んだ複数のパーティーは1つのパーティーとして扱われ、その分枠が空く事になるんです。それに、アライアンスを結べば、僕達の情報が互いに知る事も出来て、まさに一石二鳥です」


 アライアンスについては、お母さんから授業で教えて貰ってたけど、改めて聞くといい事尽くしだな。

 それにAランクのパーティーとアライアンスを結べば、僕達は心強い仲間を得た事にもなる。


「いいですね。では、大会が終わったら、ギルドでアライアンスを結びましょう」


「そうか、今は決勝戦に集中したいって訳か。分かったぜ」


 そして僕達は、コロシアムの出口に出た。

 すると、その先で見覚えのある2人に会った。


「待っていたぞ、ユーマ殿」


「はあ~い、ラティちゃん♪」


 それは、5回戦で戦った赤黒の魔竜のゼノンさんとイリスさんだった。


「ゼノンさん! イリスさん!」


 ラティは嬉しそうに、イリスさんに微笑んだ。

 僕はゼノンさんと向かい合っている。


「ゼノンさん、体の方はもういいんですか?」


「ああ。コロシアムの再生効果で、体が修復されてから丸1日安静にして、この通りだ。魔力も回復して、完全に治った」


 ゼノンさんはそう言いながら、腕を回したりして自身の回復ぶりを見せた。


「それは良かった。でも、ゼノンさん達はどうしてここに?」


「うむ。君達が決勝戦に勝ち残ったと聞いて、居ても立っても居られなくなってな。激励に来たのだ。そして、私で良ければ、明日の決勝戦に備えての練習相手になろうと思ったのだ」


「練習相手?」


「そうだ。君達の明日の相手であるクレイル殿は、私と同じく体術による肉弾戦で戦っている。私とは違う部分もあるが、戦い方が似ている私と模擬戦をする事によって、何か役に立つと思うのだ。どうだろうか?」


 それはありがたい。

 確かに竜化魔法での体術を主体としているゼノンさんなら、クレイルとの戦いで何かのヒントが得られると思う。


「それなら、僕の方からお願いします。ゼノンさん、僕達と模擬戦をお願いします」


「お願いします!」


 ラティもイリスさんから離れてお願いした。


「あい分かった。私で良ければ、いくらでも相手をしよう」


 模擬選する事を考えて、僕達は以前クレイルと話をしたあの広場を目指した。


 その道中、バロンさんがゼノンさんに話しかけていた。


「お前さんとは初めましてだな。俺は、Aランク冒険者パーティー、マッハストームのリーダー、バロン・レブラントだ。よろしくな」


「こちらこそ。私はBランク冒険者パーティー、赤黒の魔竜のリーダーを務めるゼノン・ウィンザルグだ。ユーマ殿とは、5回戦で戦い敗れた」


「俺も、さっきの準決勝でこいつ1人に負けちまってな。でも、その戦いを通じて俺達、今度アライアンスを結ぶ事になったんだ」


「ほう、アライアンスか。それは良いな。良ければ、我々もその同盟に加えて貰えないだろうか?」


 なんとゼノンさん達まで、僕達とアライアンスを結びたいと申し出てきた。

 竜人族のゼノンさんと魔族のイリスさんも、僕達の仲間になって貰えるなら非常に心強い。


「それは大歓迎ですが、いいんですか? 僕達はまだ、冒険者としてはまだまだ若輩者(じゃくはいもの)です。そんな僕達と同盟を結びたいなんて……」


 僕がそう言うと、バロンさん達は呆れた様な表情になった。


「何言ってんだよ。お前達は既に、俺達に勝てるくらい強いじゃねえか。それに、お前達が若輩者かどうかは関係ねえ。俺達は、お前達と同盟を組みたいと思ったから、アライアンスを提案したんだ」


「バロン殿の言う通りだ。我々は既に、ここまで心が通い合った友。ならば、同盟を結ぶのに理由はいらない」


 バロンさんとゼノンさんの発したその言葉は、僕にとってはとても嬉しい響きだった。


 転生してからは、僕が友達と呼べるのはラティ、アリア、クルスくらいだった。

 でも、旅に出てからは、ローレンスの街で夜明けの風、そしてこのヴォルスガ王国で、クレイル、マッハストームに赤黒の魔竜、冒険者を通じていくつもの友人が出来た。

 ならば、僕の返事は只1つ。


「分かりました。僕達銀月の翼からも、皆さんにアライアンスを申し込みます。これからもよろしくお願いします」


「よろしくお願いします」


 僕達は互いに握手し合い、アライアンスを結ぶ事を約束した。


 そして、広場に向かう道中、ゼノンさんがアリアを見て口を開いた。


「ユーマ殿の従魔のその幼竜、何とも神々しいオーラを放っている。私の勘だが、いずれは竜王クラスの存在に成長するであろうな」


 ゼノンさんはアリアの凄さに、直感で気付いたみたいだ。

 でも、今ここで「アリアは竜神です」なんて事は迂闊には言えないな。

 でも、アライアンスを結ぶ以上、出来れば秘密は少なくしておきたい。

 それに、バロンさん、ゼノンさん、トロスさん、ダグリスさん、イリスさんはその人柄から、信用出来る人達だ。

 だから、武闘大会が終わったら、この人達にはアリア達の事を話した方がいいかもしれない。


 その後は、僕とラティはゼノンさんと模擬戦をしていた。

 ゼノンさんは竜化魔法による体術で、僕達に肉弾戦での戦い方を教えてくれて、明日のクレイルとの決勝戦に備えた。


 そして夜が更け、遂に武闘大会の決勝戦の時がやってくる。

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次回予告

ついに決勝まで来たユーマ達。

相手は類稀な格闘センスを持つクレイル。

そしてその力を目の当たりにする。


次回、決勝戦

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