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第38話 暫しの別れ

前回のあらすじ

魔の平原でのユーマ達の活躍を聞きつけた領主は、2人を取り込もうとした。

だが魔の平原の問題を放置していた事を2人に指揮されたが、自分のプライドで国に報告しなかった事を知り、2人は激怒する。

結果、王家のメダルを出した事で、領主は失脚の道を歩む事となった。

 朝になり、僕達は起床して着替えた後、今日チェックアウトするこの部屋を軽く掃除した後に、アリア達を迎えに行って食堂に降りた。

 掃除したのは、せめてもの僕達のシナさんへの感謝を込めてだ。

 宿とはいえ、1週間部屋を使わせて貰ってたから、その感謝を込めてだ。


 降りるとシナさんが料理が盛り付けられた皿を片手にして、食堂に入る所だった。


「あら、早いね。朝ご飯の用意はできてるよ」


「おはようございます、シナさん」


「おはようございます」


 僕達はシナさんに挨拶をして、食堂に入ると夜明けの風の皆もいた。


「よう、おはようさん」


「「「「おはよう((ございます))」」」」


「おはようございます」


 僕達はシナさんの用意した朝食を食べた。


「そういえば、ユーマ達は今日この街を出るのか?」


 ワッケンさんが質問した。


「はい。そろそろ、目的地のヴォルスガ王国へ向かおうと思ってまして」


「ヴォルスガ王国か……そういえば、あそこは近々武闘大会が開催される筈だよ」


「武闘大会ですか?」


「うん。年に1度、ヴォルスガ王国で開かれる大会さ」


 シェイルさんが教えてくれた。

 武闘大会は以前お母さんの授業で聞いたから知ってる。

 でもそうか、それなら武闘大会を見れるかもしれない。


「ありがとう、シェイルさん。でしたら、その武闘大会を見ていこうと思います」


「見るだけですか? 参加はしないんですか?」


「参加していい成績を残せば、冒険者のランクが上がる場合もあるのよ」


 ソニアさんによると、冒険者が大会に参加して好成績を残せばその実績で、ランクが上がるという前例があるそうだ。

 冒険者の中には、その武闘大会で一気にランクを上げようと画策する者もいるそうだ。


 僕達は今後の事も考えると、計画的にランクを上げる事も視野に入れなければならない。

 それなら、武闘大会に出て勝ち上がるのも手の1つかも知れないな。


「では、王国に到着してまだ参加受付をしているようなら、考えてみます」


「それがいいな」


 それからは、他愛のない話をしながら食事をした。


 食事を終えた僕達は暫く食堂で休んだ後、シナさんに部屋の鍵を渡した。

 荷物は既に纏めて収納魔法に入れていたからだ。


「1週間、お世話になりました」


「ここの御飯、美味しかったです」


 僕とラティはシナさんにお礼を言った。


「キュイッ」


「クルルゥ」


 アリアとクルスもありがとうとお礼を言った。


 シナさんは僕が差し出した鍵を受け取った。


「ほんとに行っちゃうんだね。あなた達はほんとに良い子だったから、ちょっと寂しくなっちゃうよ」


 シナさんは寂しそうな表情でいった。


「心配しないでください。僕達は冒険者です。これからの旅で、またこの街に寄る事があったら、またこの宿を利用させてもらいます」


「それまでは暫しの別れですよ」


「そうかい。じゃあ、またいつでもおいでね。あたしはいつでも歓迎するから。」


 そういってシナさんは布に包まれた大きな箱を渡してきた。


「これは?」


「お弁当さ。旅の途中で食べな」


 シナさんの思いが籠ったお弁当、僕達はとても嬉しく感じた。


「ありがとうございます、シナさん」


「ありがとう」


 僕達は宿の外に出て、馬車を出し乗り込んだ。


「では、また会いましょう」


「お元気で」


「キュイッ」


「クルルゥ」


 シナさんの他に夜明けの風も見送りに来た。


「気を付けてね」


「またどこかで会おうぜ」


「頑張ってね」


「また一緒に依頼を受けようね」


「よい旅を」


「元気でね」


 僕達はシナさん達に見送られ、馬車を出してローレンスの街を後にした。


 余談だが、ハラントス男爵は後に、お父さん経由で事情を知った国王陛下により、爵位を剥奪されて失脚。

 ローレンスの街は新しい領主が来て前よりもいい街になったとさ。

 めでたしめでたし。


 お父さん達と国王に感謝だな。

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次回予告

旅をつづけるユーマ達の前に、新たな敵が現れる。

それは、2人の冒険者生活において、避けられない運命であった。


次回、初めての人殺し


次回で第3章は終わりです。

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