第30話 餞別
前回のあらすじ
婚約者となったラティと王都でデートをするユーマ。
しかしそこに過激派のヴィダール大臣に絡まれ、誘いを断った2人にヴィダールは兵士をけしかけるが、ラティに一蹴され、自身もユーマに拘束される。
国王からヴィダールの起こした事件についての謝罪を受け、更に国王の後ろ盾を証明する王家のメダルを授けられ、2人は旅立ちに向けての準備が整いつつあった。
王都でのヴィダール元大臣による襲撃事件から2週間が経ち、僕達はいよいよ明日、この国を旅立つ。
食料も生活道具も医薬品も、必要な物は全て揃った。
僕達は今、自宅で明日の準備を整えている。
「よし。後はこの荷物を収納魔法に入れれば、準備は完了だ」
「ついに明日ね。何だかドキドキしちゃう」
『そうですね。私も思わず楽しみになります』
「クルルゥ!」
僕達は明日の旅立ちに、とても期待を膨らませていた。
「皆、ちょっといいかい?」
「どうしたのお父さん?」
僕達はお父さんに呼ばれ、お母さん達がいるリビングにやってきた。
「皆、この10年間本当によく頑張った。お前達はこれから一冒険者として、多くの経験をするだろう。そこで、お前達の旅立ちを祝って、俺達からの餞別を用意したんだ。まずは見てくれ」
そう言ってお父さん達は、収納魔法から様々な物を出した。
「まずはラティの武器よ。ラティにはミスリルでできた短剣を2本用意したわ。次にこの杖をあげるわ」
エリーさんが差し出したのは、途轍もない魔力が籠った魔法杖だった。
「これはエンシェントロッドというマジックアイテムで、私達が昔ダンジョンで討伐した魔物がドロップしたマジックアイテムよ」
エリーさんによると、この杖は使用者が魔法を使用する際、消費する魔力を何割か減らし、なおかつ威力を数段上げて放てるというとんでもないマジックアイテムだ。
しかも、杖自体の強度も非常に高く、Sランクの魔物の攻撃でも折れないほどらしい。
「こんな凄い杖を……お母さん、ありがとう!」
ラティは自分の新しい武器に、とても喜んでいた。
「次にユーマだが、お前は色んな武器を使用できるので、杖1本とミスリルの短剣2本、片手剣2本、槍1本に、そして大剣1本だ」
僕に用意された武器もナイフ以外は全てマジックアイテムで、次の通りだった。
杖はラティと同じエンシェントロッド。
片手剣は1本目が魔剣白百合。
神速の魔剣と言われる、剣身が純白に染まった綺麗な長剣の片手剣だ。
この剣を持つと、脚力を始めとするあらゆる速度が数段上がり、相手は斬られた事に気付く事無く傷をつけられるマジックアイテムらしい。
もう1本は魔剣黒薔薇。
撃滅の魔剣と言われる、白百合とは対称に剣身が漆黒に染まった長剣の片手剣だ。
この剣を持つと、所持した者の筋力を数段に上げて一撃ごとの破壊力を増すマジックアイテムらしい。
尚、白百合と黒薔薇は2本で対をなす魔剣らしい。
次は槍の魔槍ジルドラス。
外見は普通の槍だが、魔力を籠めると、刃の部分が所持者のイメージに合わせて形状が変化する槍らしい。
例えば刃を三又にできたと思えば、斧の形にしたハルバードにもできる。
更に、柄に魔力を籠めれば、柄が伸縮自在に伸び、石突に籠めれば石突も刃に変形する双頭の槍としても扱える、臨機応変に使えるマジックアイテムだ。
最後に、大剣の神剣ミネルヴァ。
片刃で峰の部分から鳥の羽が生えた、巨大な翼の様な形状の大剣だ。
神剣とは、女神イリアステル様が自ら作り、世界のダンジョンの何処かに隠されていると言われる世界にも数個しかない、「神器」と呼ばれる武器の事だ。
切れ味は伝説の金属のオリハルコンにも、深い切り傷を付けられると言われるほどの威力を誇り、使用者の跳躍力を数段上げる効果もあるらしい。
また、魔力を籠めれば、肉体を傷つけず魔力だけを切るという事も出来るらしいが、詳しい事は不明が多いマジックアイテムだ。
そしてさっきのミスリルでできた短剣が2本。
以上が僕に用意された武器の一覧だ。
「これ程のマジックアイテム、本当に僕達に?」
「勿論だ。この武器はいずれも、俺達が昔依頼で貰った物や、ダンジョンで手に入れた物で俺達が愛用してきた物なんだ。中でもこの大剣は非常に強力な武器だが、俺も完全に使いこなす事は出来なかったがそれでも武器としては使えていた。だが、お前達ならこれらを使いこなせるだろうと思って、親バカかもだが、お前達が旅立つならせめてもの餞別として用意したんだ」
ダンジョンとは魔力が集まってできた、大迷宮の事だ。
その規模は集まった魔力の量で階層や大きさが変化するが、そこで発生する魔物は特殊で、倒して魔石を取り出したりして、死体を放置してもダンジョンの魔力として吸収されて消滅するらしい。
勿論死体を持ち帰って、ギルドで換金する事も出来る。
また、ダンジョンの奥地にはボスとなる魔物が存在し、そのボスを倒すとアイテムがドロップされる。
そのドロップが、マジックアイテムだったり、ポーションだったりとまちまちに変化するらしい。
このお父さん達の想いが籠った贈り物の数々に、僕達は涙が出そうになった。
「泣くのはまだ早いわよ」
「お母さん?」
「二人にはもう2つ用意したマジックアイテムがあるの。それがこれよ」
お母さんが出したのは、それぞれ黒と白のローブで、黒いローブは丈が長くて全体的に男物の様な感じのデザインで、白いローブは同じく丈が長いが袖や裾といった部分が黒いローブよりも更に幅広くこっちは対称的に女物のデザインだった。
「これは魔竜のローブというマジックアイテムで、私達が昔討伐した竜王の魔石と素材でできたローブよ」
この魔竜のローブは、錬金魔法で竜王の皮と鱗を合わせた生地に、更に錬金魔法で魔石を組み込んで作ったローブらしい。
また、この生地はあらゆる物理攻撃、魔法攻撃による攻撃を衝撃は受けるがダメージをほぼ無効にするという無敵に近い防御力を持っているとの事だ。
更に、竜王の皮による効果で、環境適応の魔法効果が付与されているらしい。
つまりこのローブを着ているだけで、使用者は極寒の地や灼熱の砂漠や火山の火口部だって、快適な温度で過ごす事が出来るという、まさにチート尽くしのローブだった。
「実は、このローブの素材に使われた竜の鱗は、竜王の物じゃないの」
「えっ? それじゃあ、何の鱗を使ったの?」
「それは、お前のすぐ傍にいる竜のさ」
お父さんの言葉に、僕は首を傾けた。
僕の傍の竜と言えば、……まさか!?
「アリア、君はこのローブの事、知っていたのかい?」
『申し訳ありません、ユーマ。実は結構前から、私はゲイルさん達からユーマ達の防具の事に関して相談を受けていました。2人の旅立ちには、何か最高のマジックアイテムを贈りたい。武器は先程の物で良かったのですが、防具では鎧よりも動きやすいローブ系の物がいいという決断になり、私は彼らが竜王の素材を持っていると聞き、私の鱗を使うという提案を出しました。私達竜族は数年に一度、鱗の生え変わりがあります。私はこの数年間に抜け落ちた鱗を提供し、その魔竜のローブの製作に協力しました』
「そのアリアの鱗と竜王の素材をロマージュ共和国にいる、知り合いのドワーフの鍛冶職人に持って行ってそのローブの製作を1年前から頼んでいたんだ」
「そして、先日ローブが完成したという知らせが来て、私がこのディメンションリングでロマージュまで飛んで取りに行ったの」
そうだったんだ。
お父さん達はそこまでして、僕達に贈り物を用意してくれてたんだ。
僕達は受け取ったローブを抱きしめて、涙を流しながらお礼を言った。
「ありがとう、お父さん、お母さん。このローブと武器、大事に使わせてもらうね」
「ありがとう、パパ、ママ。最高のプレゼントだよ」
僕達は親に抱き着いて、更にお礼を言った。
こうして、僕達は最高のプレゼントを受け取って、翌日旅立ちの朝を迎えた。
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次回予告
遂に旅立ちの時を迎えたユーマ達。
支度を整えた彼らは両親との暫しの別れをする。
次回、旅立ち




