第28話 プロポーズ
前回のあらすじ
10年の修行を終えて、遂に冒険者登録をしたユーマとラティ。
同時にパーティーの登録もし、銀月の翼という名前のパーティーを結成する。
ギルドに登録して数日経ち、僕達は旅立ちに向けて、買い物などをして準備をしている。
これまでの実戦で稼いだお金が殆ど手を付けていない状態であった為、僕は王都で、食料や調味料などを買っては収納魔法に入れている。
この中なら時間の経過が止まる為、肉や魚などを入れても平気となる。
よって、僕は色んな食材を買っていた。
その中で一番嬉しかったのは、この世界でも醤油やマヨネーズといった、前世でも馴染みのある調味料が普通にあったという事だ。
このアスタリスクは、食材や調味料の内容は地球と遜色なかったのだ。
ラティは僕が渡したメモに記した、回復や魔力の補充のポーション、薬草、包帯、薪などの旅における必要品を買いに行っている。
そして今、僕はある店で買い物をしている。
それはラティとの事に関係するとても大切な物だ。
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「どうしたの、ユーマくん。行き成り呼び出すなんて」
今僕は、家から少し離れた高台にラティと一緒にいる。
従魔達は家で留守番させている。
「ラティ、遂に冒険者になれたね」
「そうだね。やっとスタート地点に立てたのね」
僕達はその思いに共感しながらも、言葉を続けた。
「僕はね、ラティが隣にいたから、ここまで来れたんだ。そしてこれからも、ラティと一緒なら、何処までも行けると思う」
これは紛れもない僕の心からの本心だ。
僕がこれまで頑張ってこれたのは、ラティが傍にいたから。
彼女がいればこれからもいかなる困難が襲ってきても、きっと乗り越える超える事が出来る、そう信じる事が出来る。
「あたしもよ。ユーマくんが隣にいてくれるから、悲しい時も怖い時も笑顔で乗り越えられるの。だから、ユーマ君があたしの幼馴染で、本当に良かったと思ってる」
ラティはそう言って、僕を見つめている。
彼女の大きくそれで綺麗な瞳を見ていると、思わず吸い寄せられそうになる。
そんな感覚を振り払いながらも、僕はこの想いを彼女に告げた。
おそらく、僕が今後彼女以外には決して言わない言葉を。
「ラティ、僕は……君が好きだ。小さい時から、ずっと君が好きだった」
遂に……遂にこの言葉を言う事が出来た。
告白を……。
そう、僕は彼女に惹かれていたんだ。
身体が成長して、女の人に反応する様になってから、ラティを見てると凄く胸が締め付けられる様な感覚がしていた。
後から、これが恋だと知った。
前世では年齢=恋人がいない歴だったから、これが恐らくの初恋だろうと思う。
そして遂に、僕はこの気持ちを彼女に打ち明ける事が出来た。
そう思いながらラティを見ると、彼女は涙を流していた。
そして口に手を当てて泣きながらこう言った。
「嬉しい……あたしもよ……ユーマくん何時もあたしに優しくて、あたしの世話を焼いてくれて、そんなお兄ちゃんみたいな眼差しをしているユーマくんが……あたしも好きだった。だから、そんな大好きなユーマくんが好きだと言ってくれて、あたし、嬉しくて、涙が止まらない……」
そうだったのか、ラティも僕を……。
しかも、その口振りからすると、彼女はかなり前から僕の事が好きだったと考える事も出来る。
そう思いながらも、僕はもう一つの勇気を出して、懐からある物を取り出した。
それは……
「ユーマくん、それって……」
僕が出したのは、青色の宝石が埋め込まれたペンダントだった。
「告白の後で急だと思うけど、ラティ・アルグラースさん、僕と……僕と……結婚してください」
その言葉に、ラティは一瞬目を見開いたが、すぐに満面な笑顔になって返事をした。
「……はい、喜んで……」
地球では結婚を申し込む時は指輪を送るけど、この世界では、結婚を申し込む時には宝石を付けたペンダントを渡す風習がある。
僕はラティの後ろに回り、ペンダントを付けてあげた。
「ユーマくんに告白してもらった上に、プロポーズまでされるなんて……嬉しくてどうにかなっちゃいそう……」
ラティは涙を流しながら振り向き、僕に抱き着いてきた。
僕も彼女を抱きしめ返した。
そして、僕達は顔を合わせ、ゆっくりと唇と唇が近づいていき、それが触れ合って僕達は幸せなキスを交わした。
――――――――――――――――――――
その後僕達は家に戻り、お父さん達に、何よりダンテさんとエリーさんに僕とラティの告白の事を話した。
「ダンテさん、エリーさん、この度、ラティさんに告白して、プロポーズもしました。どうか、僕達の結婚を認めてくれませんか」
僕は殴られる覚悟で、ダンテさんに土下座しながら頼み込んだ。
「……ユーマくん……」
ダンテさんはそう呼びながら、ゆっくりと近づいてきた。
これは殴られるかな……。
ダンテさんは僕の事を甥っ子同然だと言ってくれたが、自分の愛娘をお嫁さんに下さいと言われるのは話が別かもしれない。
そう思った瞬間……
「ありがとう、ユーマくん!!」
突然ダンテさんに抱き着かれた。
ナニコレ……。
「よかったわね、ラティ。初恋の相手と一緒になれるなんて」
「うん、ママ!」
エリーさんは満面の笑顔でそう言い、ラティも負けないくらいの笑顔で答えている。
「あのダンテさん、怒ったりしないんですか?」
「なんで怒るんだい?」
彼はそんな事を真顔で聞いてきた。
「だって、自分の娘が嫁に行くなんて、普通なら相手を殴ったりとか、『うちの娘はやらん!!』とか言われるんじゃないかと思うんです」
「う~ん……確かに普通ならそうすると思うけど、ユーマくんなら寧ろ嬉しいよ。だって、自分の娘を任せられる様な男は、他に知らないからね。今後も知る必要はないし」
彼の言葉が嬉しかった。
僕は、それほどの信頼を得ていたんだ。
「凄いな、ユーマ。まさか、プロポーズまでして来るなんてな」
「ほんとに……あんなに可愛かった子供が結婚まで……お母さんとても嬉しいわ……」
お父さんとお母さんも喜んでいる。
お母さんなんか嬉しい余り、ハンカチで目元を抑えている。
「でも、僕達は結婚はまだ当分先にして、その間は婚約という形にします」
「それがいいな。俺達もそれくらいの年に、サラ達にプロポーズしていたんだ。それに、婚約者になっていれば、周りの女性も言い寄ってきづらくなるから、旅をするならいい環境になる」
基本ファンタジー小説とかだと、異世界は一夫多妻のシチュエーションが多いが、このアスタリスクは地球と同じ一夫一妻制度となっている。
だから、僕がラティ以外の女性と結婚するなんて言う心配もない。
「では、ユーマ、ラティちゃん、婚約おめでとう」
「「「おめでとう」」」
「ありがとう」
「ありがとう」
こうして、僕に可愛い幼馴染の婚約者が出来た。
そしてその日は、僕とラティの婚約を祝って、盛大なパーティーが開かれた。
それはまるで、僕とラティのこれからの未来を明るく照らしてくれる様だった。
作中でユーマが言った通り、異世界物のラノベでは一夫多妻のシチュエーションが主な為、ちょっと意外性を求めて一夫一妻の異世界物というのを書いてみました。
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次回予告
プロポーズをして婚約者となった2人は、王都でデートをする。
だが、そこに2人に迫る事件が。
次回、街中での出来事
0時に幕間を更新します。




