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第277話 『海災』のリヴァイアサン

前回のあらすじ

夜中に1人目が覚めたユーマは神殿の中を気ままに歩き、夜空が見える場所に出る。

アリアと水竜王がいた事で3人だけになり、その中の会話で水竜王はユーマが転生者だと見抜いていた事を明かす。

彼女も過去に転生者と会った事があると明かし、ユーマ達とより親交を深める事が出来た。

 水竜王との会話を経て彼女とより親睦を深めた後、日が昇った後に僕達は朝食を軽く済ませ、いよいよリヴァイアサンの討伐に向かおうとしていた。


「昨日も話した通り、リヴァイアサンはここから件の海流に1番近い場所にいます。私が案内しますので、行きますよ、皆さん」


 その直後に水竜王は海に飛び込み、すると海面が青く光りだして大きな水柱が立った。


 そこから顔を出したのは竜の姿になった水竜王だった。

 その姿は炎竜王やドリュスさんよりやや小さめだが十分巨大な竜で、僕達がこれまで出会った竜王と最も異なる点は背中に翼が無く、代わりに巨大な背鰭があり、尻尾の先端には魚類の様な尾鰭もあった。


 そして最大の特徴は風竜王の様な翼と一体化した様な前脚をしていたが、その前脚から広がっていたのは巨大な鰭状の膜だったという、より水中に特化させた姿だった。


『ラティさんは私に乗ってください。海流を共に戻す以上、一緒にいるべきです』


 水竜王に促され、ラティはその背に乗ろうとした。


「グルルルゥ……」


 クルスが心配そうに頭を摺り寄せたが、ラティは優しく撫でた。


「心配しないで、クルス。あたしは大丈夫だから、あなたはコレットさんを乗せてユーマくん達を守るのよ」


「グルルゥ!」


 僕とクレイル、ライオルドさんはアリアに乗り、レクスとルインはクレイルの亜空間に入れ、コレットとアインはクルスに乗って、リヴァイアサンのいる海域へ向けて出発した。


 向かう途中、アリアがふと訪ねた。


『ユーマ、リヴァイアサンと戦うのはいいですが、今回の戦場は海の中です。私はレジストと魔法のよって水中でも呼吸が出来るので水中戦が出来ますが、ユーマ達は私とお姉様が水中でも息が出来るレジストを掛けても、地上や空中の時の様な動きが出来ません。そう考えると、態々相手の土俵で戦うのはリスクが大きすぎますし、レクスもルインさんも戦力にはならないと思います』


「確かに、水中で戦う事を視野に入れると、いくらEXランクのレクスでも思う様には戦えないだろうね。でももちろん、僕だってそんな危険な橋を渡るつもりはないよ」


「でもユーマ、確か水って雷をよく通すんだろ? 水中で使えば、お前の雷魔法もより威力を発揮出来るんじゃないか?」


「いや。水中は水中でもここは海だ。前……前に読んだ本で、海水は話が別だって読んだ事がある」


 今は第三者のライオルドさんがいる為前世の話題を出す訳にはいかない為、以前本で読んだ知識という事にしてクレイルに説明した。


 海水による電力の伝達範囲というのはそれ程広い訳ではない為、雷が落ちた地点から大きく離れていれば感電する事は無いそうだ。

 これは海中であれば海水が多く、その分電気が拡散しやすい為に届きにくい為らしい。

 その伝達の範囲は大体30メートル前後となる為、この範囲内にいなければ致命的なダメージを受ける事はないそうだ。

 尤も、海中から顔を出している場合と、海中に完全に潜っている場合とでは、前者の方が感電しやすいと言われている。


「だから、海中では僕もフォースを使ってもいつもの様には戦えないという事だ」


「となると、同じ様に雷属性で戦う俺も、その理屈が通るって訳だな。だがどうする? ユーマくんは最初に会った時に使っていたあの魔法で飛べるからまだいい。でも俺とクレイルくんは飛べる手段がないから海中では戦えないぞ」


 ライオルドさんはそうだが、クレイルの場合はブラッドスクウィッドの時に使った氷属性のフォースなら海面を凍らせて、即興で足場を作れる。

 それが僕にあるアイディアを浮かばせた。


「勿論考えがあります。アイン、ちょっと来てくれない?」


 隣で飛んでいたクルスが近寄り、コレットと一緒に乗っていたアインが来て掌に乗った。


「どうしたの?」


「アイン、これから僕の作戦を聞いて。今回の戦い、クレイルとライオルドさん、そしてレクスとルインが戦える様にするには、ラティの代わりに僕と君である魔法を使う」


――――――――――――――――――――


 アインに作戦を話し、海流に近づいてきた頃、ラティを乗せて海上を進んでいた水竜王が僕達に声を掛けた。


『そろそろリヴァイアサンがいる場所に入ります。気を付けてください』


 同時に詠唱無しで探知魔法を全開にすると、海深くから巨大な魔力反応が出た。


「どうやらその様ですね。アイン、配置について!」


 クルスの上からアインが飛び立ち、僕もライトニングウィングを展開してアインの隣に立った瞬間、目の前の海から巨大な魔物が姿を現した。


 ウミヘビの様な巨大な胴長の身体に鰐の様な鋭い牙と大顎を持つ顔、そして翼の如く大きな鰭が複数、そしてベヒモスと同じぐらいの巨大な魔物。


「あれがリヴァイアサンか。あんな巨大な魔物、ベヒモスの時以来だな」


「そうだね。作戦通り、ここは僕達に任せてください! ラティの事をお願いします!」


『お任せください! ラティさん、水中のレジストを掛けますので、1度ここを離れます』


「ユーマくん、海流を戻したらすぐに駆け付けるわ! それまで頑張ってね!」


 その言葉と共に水竜王はリヴァイアサンから離れようとしたが、それを見たリヴァイアサンが2人を標的に定め、襲い掛かろうとした。


「させない! ライトニングジャッジメント!!」


 それを阻止するべく雷魔法を放ち、リヴァイアサンの顔面に命中させた。


 だが流石は異名持ちのSランクだから、理論上では有利な筈の雷魔法も対して効果がなかった。


「噓だろ!? いくらSランクでもあいつは水属性の筈だろう! まさか奴には、ベヒモスの様な強力な魔力耐性があるのか!?」


 そのクレイルの発言にアインが否定した。


「そんな筈はないわ! リヴァイアサンは海での戦いに特化はしているけど、ベヒモスの様な魔力耐性は備わっていないわ!」


 単純に雷魔法の威力が足りていないのか、それとも――


「コレット、アイン! 3人でそれぞれ別々の魔法を放って試すんだ!」


「「了解!」」


 クルスの上に乗っていたコレットがユグドラシルを、アインが複数の魔力を集め、僕もエンシェントロッドを取り出し複数の魔力を集めた。


「トライヘッドバースト!!」


「エレメンタルバースト!!」


「八岐大蛇!!」


 コレットの放たれた魔力の矢が光、闇、雷の三つ首の竜の形に分裂し、アインも得意な複合魔法を、そして僕もラティが得意な最強の複合魔法を放った。


 その僕達3人が放った魔法が一斉に炸裂したが、爆炎の中から殆ど無傷のリヴァイアサンが現れた。


「馬鹿な!? あれだけの魔法を喰らって、殆どダメージがないだと!?」


 ライオルドさんも驚愕しているが、僕とアインは冷静にあいつを見ていた。


「アイン、奴は何か特殊な方法で防いではいなかったよね?」


「ええ。あれは純粋に、あのリヴァイアサンの能力で間違いないわよ」


 だがリヴァイアサンには本来、魔力耐性はないとアインが言っていた。


 通常ではありえない筈の能力を持った魔物、その答えはすぐに出た。

 何故なら、僕達は普段からその魔物と一緒にいたんだから。


 そう、今僕達の傍を飛んでいるクルスとね。


「それなら間違いない。あのリヴァイアサンは……特異種だ」


 今回僕達が対峙した魔物は、これまでの異名持ちの中でも一際手強い相手だという事を意味していた。


――――――――――――――――――――


 ラティside


 ユーマくん達がリヴァイアサンとの戦闘を始めた頃、あたしを乗せた水竜王はリヴァイアサンから離れた海に移動した。


 後では何度か爆発の音がしていた。


「始まった様ですね」


『その様ですね。こちらも急ぎましょう。ラティさん、今から水中で呼吸が出来る魔法を掛けます』


 水竜王の背鰭が大きく開き、青色の魔力があたしを包んだ。


『これで大丈夫です。行きますよ』


 そして水竜王は海の中に潜水し始めた。


 思わず息を止めて口を塞いだけど、すぐに海の中でも息が出来る事に気が付いた。


「凄い……まさか海の中でも息が出来るなんて、海人族にでもなった気分だわ」


『それでも、浮力や水圧などで機動力は地上時よりも劣ります。さあ、早速海流に行きましょう。しっかり掴まってください』


 水竜王の身体にしっかりとしがみつき、目的の海流を目指した。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

「面白い」、「更新頑張れ」と思った方は、是非評価をしてみてください。

今後の執筆の励みにもなりますので、よろしくお願いします。


魔物情報


リヴァイアサン

「海災」の異名を持つSランクの幻獣種。

アスタリスクの海域を遊泳し、非常に発見例が少ない伝説の魔物となっている。

性格は途轍もない凶暴性を秘めており、一度暴れだすと小さな島を海に沈めたという記録も存在している。

水中での戦闘力は全水属性、及び水棲系の魔物でもトップクラスで、水竜王とも互角に戦えるほどといわれている。

討伐証明部位は背鰭。


次回予告

海流へと到達したラティはウラノスを手に入れた経緯を思い出しながら、初めてこの神器の力をフルパワーで使う事の決意を改める。

一方リヴァイアサンと対峙するユーマ達は特異種である事実を冷静に受け入れ、ライオルドはそれについて行けてなかった。

だがユーマにはある対処法と秘策があった。


次回、異名持ちの特異種

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― 新着の感想 ―
[良い点] そうか、特異種だったのね。 Sランクで幻獣種で異名持ち、しかも特異種なのでEXか。ついでに相手に有利な場所、これは手こずるかな。 まずは特異種としての固有の能力が何なのかからか、 [気にな…
感想一覧
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