第262話 力と絆と思い出
前回のあらすじ
アリアは覚醒した事で会得した竜覇気を使いこなし、次々と昇華させた技を披露する。
ユーマとの連携で先代にその力を見せ、先代はその戦いを通して垣間見た2人の絆を認める。
そしてアリアは最後の勝負を挑み、竜のブレスでの勝負に持ち込む。
アリアの白銀の魔力に、僕の魔力が伝って徐々に金と銀の混じった魔力がアリアの身体中に集まり始めた。
「この金色の魔力……忘れる筈がない……僕が君を召喚した時、召喚の魔法陣が輝いた時の光と同じだ」
『この金色の光こそが、私達を繋ぐパスです。私とユーマは常に、互いの魔力がこのパスによって繋がっています。同時にこれが私がユーマの従魔として適合しているという証になり、我らの間にのみ魔力の供給が出来るのではないかと思いました。それが今、こうして可能だと分かりました』
主と従魔の絆によって成せる力という奴か。
この様な場で、また1つ従魔と出来る事を知った。
『そして真の竜神となった私に、ユーマの魔力が加われば、私にも想像がつかない威力のブレスが撃てると確信しています。やりましょう、ユーマ。私達2人で』
「よし、アリア。僕の全魔力を注ぐ。先代の魔力に勝つ為に、一切の出し惜しみはしない」
『その覚悟、感謝します』
僕はアリアへと全意識を集中し、フォースによって増幅されている魔力を全て注ぎ込んだ。
『感じます……ユーマさんの魔力が、あなたの力へと変換されていく。そして分かります。これからあなたが放とうとしているのは、単なる竜神のブレスではなく、あなたの力とユーマさんの想いが1つとなった、絆のブレスだと』
僕達の魔力を感じ取り、先代もアリアが放つブレスを推測した。
だがその推測には足りない物がある。
『ですがお母様、私のこのブレスは私とユーマだけのではありません。竜神の私の力に、ユーマの魔力を通して伝わる彼との絆、そして私達銀月の翼がこれまでの旅で培って来た、全ての人達との思い出を1つにした、私達の奇跡のブレスです!』
アリアの誇りとは、これまでに歩んできた道で築いた、僕達人間や従魔との絆と思い出その物。
その誇りの根幹となる物全てを注ぎ込んだこのブレスは、必ず先代の竜覇気を凌駕すると確信している。
「アリア、この力に竜覇気を合わせて!」
『ええ、そのつもりです! お母様が教えてくださった、それぞれの属性を融合させて放つ複合ブレス! その素材となるのは、私の誇りとして込めた竜覇気、そしてユーマから受け取った魔力……即ち雷の力!』
そしてアリアの集束された竜覇気に、僕とのパスを通じて注がれた僕の魔力が雷の力となって、金と銀の魔力が合わさってスパークし始めた。
『こちらの準備は整いました。お母様、最後の勝負です!!』
『いいでしょう! 私も最強の複合ブレスで挑みます! この母を超えて見せなさい!!』
先代も前進の魔力を口へと集束させ、8属性全ての色の魔力が合わさってスパークし始めた。
全ての属性を合わせての複合技は、ラティの最大魔法でもある八岐大蛇があるが、あれは各属性をバラバラに操作して放つ魔法。
だからあのブレスの仕組み自体は、アインのエレメンタルバーストに限りなく近い。
だがあの魔法でも、組み合わせた属性は炎、水、土、雷の4つ。
それを全ての属性で放つとなると、竜神の力も合いまったらどうなるか。
それこそ1発で国1つを消し飛ばしてしまう程の威力になるだろう。
ラティ達は今ドリュスさん達が張っている結界に守られているが、もし先代が力の調整を誤ったら間違いなく僕達は無事じゃすまないだろう。
だが僕は今、凄く安心感を抱いている。
アリアを見ていると、彼女ならやれる、そう確信出来るからだ。
きっとそれは皆も同じだと思う。
全ての思いや力を注ぎ込んだアリアのブレスなら、必ず先代に打ち勝てると皆も信じていると、僕も信じているからだ。
そうでなければ皆は僕をアリアの許に行かせたりはしない。
そんな皆の信頼に応えようと、アリアは更に魔力の放出を強めた。
やがてアリアの魔力のスパークが収まり始め、完全に魔力が同調したという事を表すかの様に輝き始めた。
『行きます、お母様! 覇竜天雷哮波!!』
『勝負です、アリア! アトリビュートバースト!!』
アリアと先代の放った最強のブレスが激突したその瞬間、生まれた衝撃波が天空へと上がり、そして天が2つに割れた。
空間その物まで分かつ一撃に、僕はアリアの背で固まってしまった。
だが目の前で最後の勝負に挑む相棒の姿を見て、僕はすぐに我に戻り、すぐにアリアに供給する魔力を増やした。
「アリア、僕の残っている魔力を全て注ぐ! 絶対に勝つんだ!!」
『はい! ユーマの魔力、決して無駄にはしません!!』
受け取った魔力を全てブレスにつぎ込み、アリアのブレスは更に勢いを増した。
『これ程の魔力! これがアリアの誇りの力……!』
『私の全ての誇りを懸け、今こそ偉大なる母を超えます! だがそれを成すのは、私だけの力ではありません! 私達は人々と繋がる事で力を得、絆を育み、私達の世界を広げました! その繋がりが私達の誇り!』
そう、僕達は決して自分達だけの力でここまで来た訳じゃない。
ラティ、クルス、クレイル、レクス、コレット、アイン、銀月の翼の家族。
お父さん、お母さん、ダンテさん、エリーさん、バルバドス、フラウロス、サーレス、ヴィオーラ、僕達の家族の暁の大地。
バロンさん、ゼノンさん、トロスさん、イリスさん、ダグリスさん、ロップス、スニィ、カミラ、ピック、ジオン、アライアンスによって結ばれた仲間。
それだけじゃない。
ルドルフとアンリエッタ、各国の国王、八輝帝、これまで出会った全ての冒険者や騎士、その全ての人達がいたからこそ、今の僕達がある。
もしこれまでの道で、誰か1人でも出会わなかったら、決してここまでは来れなかった。
それを分かっているからこそ、そして出会いと戦いに恵まれた事に感謝を忘れずにいたからこそ、今の自分達を保っていられる。
その1つ1つの思いがアリアのブレスに込められ、少しずつ更に大きくなっていった。
そして今行われているブレスの激突に、やがて変化が起こり始めた。
先代にブレスをアリアのブレスが徐々に飲み込み始めた。
アリアの誇りに呼応するかのようにブレスが大きくなり、それが先代のブレスを飲み込み、勢いが勝り始めたのだ。
『ぬぅぅっ……! これが始祖の竜神の力……! アリアの竜神の誇り……!』
先代は踏ん張ってはいるが、それ以上にアリアの思いが強く、更に勢いが大きくなったブレスがやがて先代へと迫った。
『よろしい……今こそ、あなたは真の竜神となりました……』
そう言った直後、アリアのブレスが先代のブレスを掻き消し、先代はアリアのブレスに包まれた。
それはアリアが真の竜神として、母を超えた瞬間だった。
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次回予告
勝利を収めたアリアを待っていたのは、母との別れだった。
先代は自らの消滅を受け入れ、ユーマにある頼みをする。
次回、これからは共に




