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第25話 アリアの暴走

前回のあらすじ

アリアとクルスの初陣となり、2匹はオークを瞬殺する。

そしてミニサイズとなった2匹の強さを考慮し、ユーマ達は2人と2匹での基本の陣形を決め、結果初の実戦では異常な数の魔物を討伐する。

 初めての実戦訓練を終えて翌日になり、僕達は昨日の初の戦闘で疲れているだろうから今日は休息にしようというお母さんの提案で、僕達は家でゆっくりと過ごしている。

 前世の事を話しても、変わらずに平和に過ごせるのは嬉しい。


 ただ、1つ不満があるとすれば、料理が出来ない事だ。

 僕は前世では自炊していて、子供の頃から料理が好きだった。

 それに、パンやお菓子を作ったりして、近所に住んでいる同僚の子供達に振る舞ったりしては、子供達は喜んで食べてくれた。


 そう前世の事を思い出していたら、無性に何か作りたくなってきた。


 それなら、


「お母さん」


「どうしたの?」


 僕はお母さんに頼む事にした。


「今日の夕ご飯の支度、僕にやらせてください」


「えっ、ユーマくんが? できるの?」


「大丈夫。僕は前世の頃から料理の腕に自信があったの。だから、僕にやらせてください」


 お母さんは僕の目を見て、暫くして頷いた。


「分かったわ。でも、刃物には気を付けてね。後フライパンや鍋で火傷したりしない様に気を付けてね」


「はい」


 これには前世の頃から気を付けてきた事だけど、やっぱり母の忠告には素直に返事するべきだな。

 お母さんも満足そうに頷いていた。


 それからは、支度するにはちょうどいい時間だったから、僕はお母さんに使う材料を出してもらい台所にあった調味料を用意して料理を始めた。

 それから、食後のデザートも用意しよう。


 それからは僕はひたすら台所で夕食の用意に取り組んでいた。


――――――――――――――――――――


 その夜、僕は皆に作った料理を配った。


「今日の御飯は、僕が作りました。メニューは、オークの肉を煮込んだ野菜たっぷりのシチューに、レタス、キュウリ、トマト、チコリのサラダ、僕が焼いた手作りのパンです」


 そのテーブルには人数分に盛りつけたシチューと大きめのお皿に盛りつけたサラダ、そして食卓の篭には僕が作った焼き立てのパンがあった。


「これ程の料理、ユーマが1人で作ったのか?」


 お父さんが驚きながらも、僕に確認してくる。


「本当よ。心配で陰から見ていたけど、ユーマくんの手際は素人とは思えないくらい手際が良かったの。あれは、相当な料理の経験を積んでいる手つきだったわ」


「僕は前世で色んな料理を作ってきたからね。今ではレシピと材料さえ揃っていれば、大抵の料理は作れるよ」


 僕はテーブルの席について、両手を合わせた。


「さあ、美味しい料理は出来立てが1番です。皆で食べましょう」


「そうね。冷めちゃったら勿体ないし」


 お母さん達も皆手を合わせた。


「では、頂きます」


「「「「「頂きます」」」」」


 お父さん達はシチューやパンを口に含んだ。

 その瞬間、皆銅像の様に固まってしまった。


「「「「「…………」」」」」


「……どうしたの? お父さん? お母さん? ダンテさん? エリーさん? ラティ? アリア? クルス?」


 念の為1人ずつ声を掛けたら次の瞬間、皆が震え出した。


「美味い! 美味いぞ、ユーマ!」


「本当だよ、凄いよユーマくん!」


「この味、あたし達でも中々出せないわ!!」


「ええ! お肉や野菜の煮え具合が絶妙だわ!!」


「このパンもふんわりしててとっても美味しい!!」


『ユーマ、一体このシチューやパンに何をしたんですか!?』


「クルルルゥ!!」


 お父さん達は僕の料理をとても喜んでいた。

 側では、バルバドス達も喜んでシチューの具材を食べている。


「僕は何もしていないよ。只、調味料の分量をシチュー全体の量に合わせて入れたり、肉や野菜の火の通り具合を何度も味見して確認して味を調えただけだよ」


『それだけでこれだけの料理を作れるのですか』


「要は、1つ1つの手順をしっかり守って、ちゃんと味見しながら手を加えていく。それが、僕が美味しい料理を作れる理由さ。というより、料理が上手くなりたいなら必要な事だけどね」


「凄いわ、ユーマくん」


「本当。できれば、ユーマくんに料理を教わりたいくらいだわ。」


 お母さんとエリーさんは冗談半分でそんな事を言った。


「僕で良かったら、いつでも教えるよ。レパートリーには自信があるから」


「本当!? じゃあ、お願い!」


「あたしも!」


 なんだか成り行きで、実の母と友達の母に料理を教える事になってしまった。

 まあいいかな。


 その後、全員ご飯を食べ終わった。


「美味かったな」


「ああ、こんな美味いシチューは初めてだったぜ」


 僕は皆の食器を下げた後、僕はあるものをトレイに乗せて運んできた。


「ユーマ、それは?」


「今日作ったのは、夕食の他にもう1つ、デザートを作ったんだ。僕は前世ではパンを作るのが仕事で、その一環でお菓子作りも学んだんだ。それで、食後のデザートにプリンを作ったんだ」


 僕がデザートといった瞬間、お母さん、エリーさん、ラティの目がギランと光ったように見えた。


『ユーマ、そのデザートって甘いのですか?』


 アリアも獲物を仕留める竜のような眼をしながら尋ねて来る。

 ……実際竜なんだけどね……。


「う……うん。これは甘い物だよ。人数分作ってあるからちょっと待ってて」


 僕は我先にと手を差し出してくる女性陣(アリアも含めて)の後に男性陣にもプリンを乗せたお皿を渡した。

 お母さん達がお皿のプリンを一口すくって、口に含めた途端に、また女性陣は固まってしまった。

 でも少しして、


「美味しい! 手作りのプリンって、こんなに優しい甘さなのね!」


「ユーマくん! このプリン、とっても美味しいよ!」


「ええ! しかも口に入れた途端、舌の上で滑らかに蕩けるわ!!」


 お母さん、ラティ、エリーさんは僕の作ったプリンに既に夢中となっていた。

 お父さん達もクルスも喜んで食べてくれている。


 そういえば、アリアは如何したんだろう。

 ふと、さっきまでアリアがいた所を見ると、


『……………………』


 アリアは無言でプリンを食べていた。

 そして食べ終わると、


『……ユーマ、私はあなたの従魔になって、今はこれまでで最も幸せな気分になりました。それで、1つお願いがあります』


「なっ……何でしょうか……アリアさん……」


 僕は思わず敬語で答えてしまった。


『これからの私の食事は朝昼晩、全て甘い物でお願いします! 私はこれほど美味なるものは初めて食しました! 故にに、私はもうこの甘味なしでは生きていけません! お願いします、ユーマ! どうか私に甘味を!』


 アリアはこれでもかという程の凄まじい迫力で迫ってきた。

 正直、これは驚いた。

 いつもは温和で礼儀正しく、それで僕やラティにはお姉さんの様な態度で接してくるアリアがこれ程までに甘党だったなんて……。

 しかも心なしか、今のアリアの様子は欲しい物をねだる子供の様にも見えてくる。


 でも、全ての食事を甘い物にするって訳にはいかないので、それからはアリアとの粘りに粘った交渉の末、晩御飯のデザートに、甘い物を出すという事で落ち着いた。

 しかし、竜とはいえ、甘い物を求める女性の情熱には凄いと思ったし、同時に怖くも感じた。


 これからは、アリアに出すデザートにはいろいろ考える日々が出そうだな。

 まあ、僕は作るのが好きだから、喜んで食べてくれるなら大歓迎だ。


 そう思って、僕は食事とデザートの食器の片付けをする為に、台所へと足を運んだ。

 ついでに数日分のデザートも作り置きして、収納魔法に入れておこう。

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アリアの凄すぎる所

その4、甘い物への執着がとんでもなく凄い。


ちょっとアリアの欠点という様なものを考えてみました。

アリアは人間で言うなら完璧超人ともいえるもので、何か1つはギャップの様なものを考えたくなりました。

そこで、女性で目がないもので甘い物に狙いをつけてみました。


次回予告

討伐した魔物を換金する事を学ぶべく、ユーマ達は王都の冒険者ギルドを訪れる。

そして初めてのギルドの雰囲気を全身で味わう。


次回、初めてのギルド

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