第251話 竜神と雷竜王のお仕置き
前回のあらすじ
風竜王の誤解を解くには、風竜王に力を示して大人しくさせるしかなかった。
ユーマ、クレイル、ラティはハイブリッドの複合強化を展開し、全員と力を合わせて風竜王に挑んだが、風竜王は竜王の能力を活かし、ユーマ達の攻撃を凌いでいく。
『風翼天刃撃!!』
翼と一体化している両前脚を振り下ろし、同時に乗せた風の魔力によって風の真空波が発生し、ラティ達の魔法を引き裂いてしまった。
「だがそのお陰で俺の攻撃が通りやすくなるぜ!! スラッシュテンペスト!!」
だがこれも風竜王の戦闘力を想定していた内であり、ラティ達の魔法が防がれるのは3人も予想していた。
本命は風竜王が攻撃した直後に生じる隙で、予めスタンバっていたバロンさんが仕掛けた。
スラッシュテンペストは元々バロンさんが最も得意としていた技だったが、今のバロンさんは複合強化のテンペストアーマーを纏った状態で使用している。
テンペストアーマーの暴風とスラッシュテンペストの斬撃の嵐が相乗効果を生み出し、それはまさに『風帝』のリーシャの最大魔法と遜色ない威力へと化している。
『風の竜王のボクに、風で攻撃とは……はっきり言って馬鹿だね! そんな風、僕にはそよ風くらいにしか感じないんだよ!』
風竜王はその暴風の斬撃をまるで波に乗るかの様に受け流し、斬撃を受けきれなかった分は持ち前の再生力で無力化させた。
「分かってるさ。俺はあくまで特大の攻撃で目晦ましをさせる役。あんたが俺の攻撃に目が行った隙に――」
『僕の出番だ!』
風竜王が僕達の攻撃に意識が行っている間に、ドリュスさんが背後に回り込んでいた。
竜王では風竜王が最速だとドリュスさんが言っていたけど、雷竜王のドリュスさんもかなりのスピードを誇っている。
故に風竜王の視線をこちらに向ける事で、上手くドリュスさんを素早く移動させる事が出来た。
『雷竜王!?』
『悪いけど、ちょっと大人しくしていて貰うよ! ボルテックスクラッシュ!!』
ドリュスさんの振り下ろした雷撃の掌底が決まり、風竜王を地上へと叩き落とした。
『ぐっ……!? まさか雷竜王までが……! 許さない……許さないぞ! この墓荒らし共めが!!』
風竜王はますます僕らへの怒りを爆発させた。
『ユーマ! 翼だ! 翼を狙うんだ!』
その時、ドリュスさんが僕達にそう告げた。
『ユーマ、思い出してください。私達、翼を持つ竜族の弱点を!』
アリアにそう言われ、僕はライトニングウィングを覚えた時の事を思い出した。
竜や妖精と言った翼や翅を持つ魔物は、そこに空気中の魔力の素である魔素を取り込み、体内の魔力炉へ送り込んで魔力に変換する能力を持つ。
飛行能力を持つ魔物は飛行中は常に魔力を消耗しているが、この能力によって魔素を取り込み魔力にし、飛行による消費と魔力の回復を繰り返す事で、実質飛行の魔力消費を帳消しにしている事。
つまり、翼の飛膜の部分を破壊すれば、風竜王の魔力の回復能力が封じられて、飛行する事が出来なくなるか大きく制限される。
「分かりました!」
すかさずアメノハバキリを腰元に移動させ、構えを取った。
同時に雷と闇の魔力を集中させた。
「この一撃にフォースの魔力を注いでやる!」
そしてフォースのスピードで風竜王の懐に飛び込み、左の翼に狙いを定めて居合斬りを繰り出した。
『ぬあっ!? こいつ……翼を!?』
狙い通り風竜王の左翼の飛膜は、大きく斬り落とすに成功した。
だが同時にハイブリッドフォースの魔力が今の一撃で尽きてしまい、僕の強化が解けてしまった。
『貴様、よくも! そんなに死にたいなら、まずは貴様からだ!!』
そこに風竜王が右脚を振りかざし、翼全体に風の魔力を纏った。
だがその瞬間、1発の闇の矢が空を切り、その右の翼の飛膜を大きく貫いた。
『何!?』
風竜王が振り向くと、そこにはアルテミスを構えて狙撃の姿勢を取ったコレットがいた。
「残念だったわね。私達がいる限り、ユーマをやらせはしないわよ」
同時に風竜王の頭上にクレイルとレクスが現れた。
「翼をやられたお前はもう飛べない! 畳みかけるぞ、レクス!」
「ガルルルゥ!」
2人の同時攻撃が背中に決まり、風竜王は大きなダメージを受けた。
「ユーマ、離れてろ!」
「ここは僕達に任せてください!」
続いてバロンさんとトロスさんが仕掛け、風竜王に斬りかかった。
僕は残った体力を振り絞って、その場からバックステップで下がった。
『舐めるなああああ!!』
しかし翼を傷つけられても尚、風竜王は2人の攻撃を受け止め、弾き返した。
続いてロップスとピックとジオンが死角から攻めたが、風竜王は自身の周りを風魔法で覆い、その風圧で2匹を弾いた。
「いい加減に大人しくしなさい! 超重力!!」
今度はラティが仕掛け、複合強化を解いてからの重力魔法を放ち、風竜王を重力で抑え付けた。
「スニィ、ブレスで私を撃ちだせ!」
『分かりました、ご主人! クリスタルブレス!!』
その隙にゼノンさんがスニィのブレスの勢いで加速し、加えて水晶の欠片を含んだブレスが風竜王に炸裂した。
だが古竜のスニィのブレスでは風竜王には全く効かなかったが、それはゼノンさんもスニィも承知している。
「覇王竜天輪閃!!」
覇王竜纏魂依による強化された手刀の突きを繰り出し、スニィのブレスの勢いも加わって風竜王の右肩を貫いてダメージを与えた。
ゼノンさんの複合強化状態での戦闘力は、レイシャさんとの模擬戦で、彼女に竜王クラスの強さを出させた程だった。
逆に言い返せば、この状態のゼノンさんの戦闘力は竜王にもダメージを与えられるという事だ。
その予想は的中し、風竜王は風の身体の実体を捉えられて傷口から出血していた。
「その血を利用させて貰うわ! ニブルヘイム!!」
すかさずクルスに乗ったアインが目の前に現れ、その傷口を狙って最上級の氷魔法を放った。
「私達もいくわよ!」
「おう!」
イリスさんとダグリスさんも氷魔法を放ち、アインの援護をした。
すると、血の水分が凍結され、出血箇所から風竜王は血を中心の凍り付いて身動きが取れなくなった。
「今よ! 後はあなた達が決めるのよ!」
『はい、お姉様!』
そして僕達は風竜王の足止めを果たし、止めを担当する2人が上を取っていた。
『僕の説得を聞かなかった罰を受けろ! ボルテックスバースト!!』
『ごめんなさい、風竜王様! ミーティアルシャイン!!』
アリアとドリュスさんの大技が降り注いだ。
『ぎゃああああああああああ!!?』
そして風竜王の悲鳴が響き渡った。
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次回予告
ドリュスのお説教を受けた風竜王は、自分の行いを反省しユーマ達との誤解を解く。
無事に和解したユーマ達は、風竜王の案内により、遂に先代竜神の墓前へとやって来た。
次回、先代竜神の墓




