第24話 従魔の戦い
前回のあらすじ
魔物との実戦訓練を始めたユーマ達。
初の戦闘で、2人は異常な数の魔物を討伐してしまう。
お昼のお弁当を食べて少し休んだ後、僕達は再び魔物との実戦訓練の為、探知魔法で魔物を捜した。
「反応を感知。数は……5。強さは……Dランクだ」
僕達はすぐにその場所へ向かった。
そこにいたのは、2足歩行のボロ布を纏った、豚の顔の魔物、オークだった。
因みに、オークもゴブリンと同様、攫ってきた他種族の女性を繁殖用の苗床にする為、女冒険者達からは女の敵として嫌われている。
「オークが5匹か。なら、今度はアリアとクルスにやってもらおう。2人も自分の従魔の戦い方を見ておきなさい」
「うん。アリア、準備はいい?」
『ええ。私の力の一部をお見せしましょう』
「お願い、クルス」
「クルルゥ」
2匹は飛び出し、それぞれオークに対面した。
そして、ミニサイズ化を解除して元の大きさになった。
アリアは実はまだ成長中だった為、最初は15メートル程だったがこの5年で今は18メートル越えに成長していた。
クルスもこの5年で5メートル程の大きさになった。
オークの大きさは2メートル程の巨体だが、目の前の小さな生き物が突然自分達より大きくなった事で、アリア達に怯えていた。
そして、完全に弱腰になり、アリア達に背を向けて逃げ出した。
『逃がしませんよ』
「グルルルルルルゥゥゥ!」
アリアとクルスは同時に逃げるオーク達に飛び掛かり、アリアは魔力を纏った尻尾を振って3匹のオークの首を纏めて刎ね飛ばし、クルスは身体強化をかけて、鷲の前脚を横に振って2匹のオークの首を一瞬で刎ね飛ばし、5匹のオークは何が起こったか分かる間もなく絶命した。
今のクルスの攻撃を見て、僕は思わず前世のあるアニメのシーンを思い出した。
動物や恐竜の戦闘機獣アニメで、主人公の愛機のライオン型の機獣の必殺技を。
でもクルス――グリフォンは体の半分程がライオンだから、あながち間違いじゃないのかも知れない。
2匹は尻尾と前脚についたオークの血を払い、ミニサイズに戻って僕達の下に戻ってきて、そのまま僕とラティの胸に飛び込んできた。
『どうでしたか、ユーマ? 私の強さの一端、見ましたでしょうか?』
「うん、見てたよ。やっぱりと思ってたけど、アリアは本当に強いね。しかも、あれが本気じゃない以上君はまだまだ強くなるんだよね?」
『勿論です。私の目標は、亡くなったお母様の様な偉大な竜になる事なのですから。あんな豚擬きを一発で仕留められない様では竜神としても、ユーマの従魔としての誇りを汚してしまいます』
最近忘れがちになってたけど、アリアは誇りを何よりも大切にしているんだった。
でも、彼女がそこまでの思いを背負ってる以上、僕もその思いを支えてやりたい。
「そうだね、アリア。僕と一緒にもっと強くなろう」
『はい』
ふと隣を見ると、
「凄いよ、クルス!! 魔物を一瞬で倒すなんて、強いんだね!!」
「クルゥ! クルルルゥゥゥ!」
ラティは自分の従魔の強さを知って、嬉しくてクルスを抱きしめていた。
クルスもまた大好きな主人に褒められ、抱きしめられて嬉しそうだった。
そこにお母さん達が寄ってきた。
「やっぱり、オークじゃ2匹の相手にならなかったわね」
「そうだな。だが、この辺りの魔物では2匹の強さに釣り合う魔物なんてあまりいないだろうな」
確かにそうだ。
2匹の強さではこの辺りの魔物ははっきり言って雑魚だ。
でも、2匹に釣り合う魔物となると、それこそ辺境とかに行かないと見つからないだろうし。
そう考えた僕の頭に、ある疑問が浮かんだ。
「ねえ、アリア。ちょっと質問があるんだ」
『何でしょうか?』
「アリアとクルスは普段のミニサイズのままでも、戦闘は出来るの?」
『可能と言えば可能ですが、私たちはこの姿だと筋力が下がって物理攻撃の威力はある程度失われます。精々、Aランクの魔物に致命傷を与えられるかどうかですね』
「成程。じゃあ、魔法系の攻撃は?」
『それは問題ありません。私達は小さくなっても、体内の魔力量は変わりません。よって、魔力を使った攻撃なら本来の姿と遜色ない威力を発揮できます』
「じゃあ、こうしよう。2匹には基本はミニサイズのままで、魔力の攻撃を中心とした戦いをしてもらう。勿論、命の危険がある時や不測の事態になった時には、元の姿で戦っていいから。でも普段はその姿で戦って貰うという事でいいかな?」
『それが一番いいでしょうね。この姿なら、私達はそれぞれ幼竜とグリフォンの子供として振舞えますし、他国での余計な騒動を極力回避できるでしょうしね』
「決まりだね」
こうして、僕達の基本的な戦い方が決まった。
僕が武器や魔法などでの近距離から中距離の攻撃を担当し、ラティは魔法による後衛担当。
アリアとクルスは状況に合わせての魔力での攻撃。
この陣形が、僕らの基本的な戦い方となった。
2匹が仕留めたオークの解体を終えた後、僕達はお父さん達に見守られる中、さっきの陣形で、魔物との戦闘訓練を再開した。
夕暮れが近づいた頃で、今日の訓練が終了した。
今日の僕らの成果は、スライム20匹、ゴブリン50匹、角兎20匹、グリーンウルフ20匹、オーク5匹、ソルジャーアントというDランクの魔物30匹というお母さん曰く、初めてでは異例の成果となった。
ただ倒しただけではなく素材なども剥ぎ取ったので、全体量はかなりの収穫となった。
「ではそろそろ戻るか」
「帰りはこれで帰りましょう。みんな私に触れて」
お母さんの言葉に従って、僕達はお母さんに触れた。
その時、お母さんの指にはめられた指輪が光りだし、次に目を開けたらそこは僕達の家の前だった。
「これって……もしかして、マジックアイテム?」
お母さんは自信に溢れた表情で頷いた。
「そうよ。これはディメンションリングと言って、魔力を通していきたい場所をイメージすると、1度行ったことのある所なら、本人とその人に触れている者をその場所まで転移させるマジックアイテムよ。これなら閉門の心配する必要なないわ」
国への出入りする検問所は日が暮れると、活発化する夜行性の魔物への対策で閉門する事になってる。
だから、一度閉門したら翌朝まで野営をする必要があるんだが、お母さんのマジックアイテムならその心配もなくなる。
つまり、僕達は安心して、魔物と戦う事が出来て、戦闘や剥ぎ取りを覚える事が出来る。
こうして、僕達の初の実戦は無事に終了した。
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クルスの攻撃を書いて、実際に思わずこう叫びたくなった。
「スト〇イクレー〇ークロー!!」
まあ、体の半分以上がライオンだから、あながち間違いじゃないかも……。
魔物情報
オーク
二足歩行の豚の魔物で、Dランクでは最も有名な魔物。ゴブリンと同様他種族の女を繁殖用の苗床にする為、女性の嫌われ魔物ランキングでは2位(1位はゴブリン)に輝いている。しかし、オークの肉はかなりの美味で、その点は女性にも角兎以上に親しまれている。ゴブリンと同じく、従魔として適合すると生殖本能が治まり、安全となる。討伐証明部位は下顎から生えている牙。
ソルジャーアント
1メートルほどの大きさを持つDランクの蟻の魔物。群れで行動し、クイーンの指示に従って行動する。口からは岩をも溶かす酸の液を吐き、腹部には麻痺毒を含む毒針を持つ。討伐証明部位は毒針。
次回予告
ユーマは翌日の休息で、ある事をしたくなる。
そして、その際にユーマは、アリアの隠された一面を見る。
次回、アリアの暴走




