第225話 道中の訓練
前回のあらすじ
次の目的地にゼノンの故郷、ドラグニティ王国と決めたユーマ達は、その国にあるアリアの母、先代竜神の墓参りに行く事を告げる。
そしてゼノン達アライアンス組もまた、それぞれの目的で引き続き、ユーマ達の旅に同行する事を決める。
ガイノウト帝国を発って数日、僕達はもうすぐドラグニティ王国の領内に入ろうという所まで来ていた。
その途中で僕達は夜営に出来そうな所を探し、その中で見つけた巨大な樹の下で今日を過ごす事になった。
そして今、僕は――
「いっくぜぇ!!」
「ユーマ殿、覚悟!!」
バロンさんとゼノンさんを同時に相手にした模擬戦を行っている。
2人はそれぞれ複合強化のテンペストアーマーと覇王竜魂纏依を発動していて、僕もドラグーンフォース・ライトニングを使い、2人の攻撃を鞘に納めたアメノハバキリで受けようと構えた。
勿論例によって鍔と鞘を鎖で巻いて、振った際にすっぽ抜けない様にしてだ。
また少し離れた所では、水属性のドレスアップ、アクアドレスを纏ったラティが、それぞれ炎属性の複合強化を発動中のイリスさんとダグリスさんの2人を相手にして、クレイルもシャドウクロスを纏ったトロスさんを相手に炎属性のフェンリルフォースを発動して模擬戦をしている。
コレットはその3つの模擬戦を見ての審判を務めている。
そして目の前の模擬戦に意識を戻し、まずはアメノハバキリで暴風を纏ったバロンさんの風斬剣を受け止めた。
そこからアメノハバキリを上にして風斬剣を下へと抑え付けた所に、横から魔力で形成した竜の頭部を纏ったゼノンさんの右腕が突き出された。
その頭部は口を大きく開けて、その鋭い牙で僕に噛みつこうとしている。
「甘いですよ!」
左脚に纏われた雷で出来た竜の脚でアメノハバキリごと風斬剣を抑え付け、そのまま右腕を振り被って雷の魔力に加え、光属性の魔力を加えて右手の竜の爪での殺傷力を高めた。
「雷竜爪光斬!!」
雷のフォースの腕に光属性の魔力を集めてレーザー状の魔力を纏った爪へと強化させ、雷属性の殺傷力と光属性の貫通力を合わせた爪撃でゼノンさんの攻撃を迎え撃った。
その一撃で竜の首を斬り落としたが、それはあくまでゼノンさんの魔力によって生み出された質量を持った魔力な為、その下にある本当の右腕は無事だった。
「くっ……! まだだ!」
続けて僕の首元を狙って鋭い蹴りを放ってきたが、ドラグーンフォースによって生み出された雷の尻尾を操作してその足に絡みつけ、ゼノンさんの動きを封じた。
ドラグーンフォースを纏った僕は雷で出来た竜の四肢を纏っている他、雷で出来た竜の翼や尻尾を持っている事で翼で飛行、尻尾で背後の敵の奇襲にも対処する事が出来る。
そしてその尻尾を絡みつけたまま、ゼノンさんを脚ごと持ち上げて目の前で僕と肉薄しているバロンさんに叩きつけた。
「ぬおっ!?」
「何だと!?」
互いが激突されてバランスを崩した2人は、重なり合うように倒れた。
「いてて……ユーマの奴、スゲエ力だな」
「まさか、強化状態の私をこうも簡単に……複合強化はそれ程までに力を向上させるのか」
2人が立ち上がろうとしたが、その前に僕は2人の前に縮雷で距離を詰め、バロンさんの首に鞘に収めているアメノハバキリを、ゼノンさんの腹部に雷の爪を纏って左腕を当てて、完全に2人の出方を封じ込めた。
「そこまで! ユーマ達の模擬戦は、ユーマの勝ちよ!」
その時コレットが終了の合図を出し、僕は剣と腕を引いて2人から1歩離れた。
左右を見ると、ラティのイリスさんとダグリスさんとの、クレイルとトロスさんとの模擬戦も佳境に入っていた。
「ダグリス、私の魔力を渡すわ! 受け取って!」
イリスさんが纏っていたフレイムドレスが、ダグリスさんのフレイムオーラに纏われ、彼の複合強化を強化させた。
「行くぜ、嬢ちゃん! アブソリュートインフェルノ・フルオーバー!!」
ダグリスさんのオーラが巨大な魔力の塊を形成して放たれ、イリスさんのドレスと合わさってより強大な威力に底上げされていた。
「ユーマくんも終わらせた様だし、あたしもそろそろ終わりにするとします。ハイドロバーストキャノン!!」
ラティのアクアドレスの水がウラノスに集められ、巨大な水流が放たれた。
その2つの魔法が激突し、その直後にラティが魔力をより強めた結果、イリスさんの魔力で底上げされたダグリスさんの炎を掻き消してしまい、2人はその魔法が撃ち消された衝撃で複合強化が解けてしまった。
「そこまで! 勝者、ラティ!」
すかさずコレットが合図を出し、ラティが勝利した。
最後はクレイルだった。
「絶対に一撃入れて見せます!」
シャドウクロスを纏ったトロスさんは巨大な樹の下で模擬戦をしているのを利用して、その樹の影に潜り込み、何処から飛び出してくるのか分からなくした。
対してクレイルはその場から動かずに、目を閉じて周囲に意識を集中させた。
それから暫くして、遂にトロスさんが動き出し、クレイルの背後から飛び出して剣の腹で殴ろうとしかけた。
「そこか!」
その瞬間目を開いたクレイルが振り向かずに後ろに手を伸ばし、フォースを纏った手で剣を掴んでそのまま背負い投げの要領でトロスさんを地面に叩きつけた。
「ぐはっ……!?」
そしてもう片方の手の炎の爪を構えて、完全にその場を制した。
「そこまで! 勝者、クレイル!」
コレットが合図を出し、全ての模擬戦が終了した。
結果は僕達の圧勝だった。
「だあああああっ!! まだ勝てねえのかよ!」
「ユーマ殿達に鍛えられ、私達も随分と強くなったつもりだったが、まだまだ修行が足りないという事か」
バロンさんとゼノンさんは自分達の力を痛感していた。
「なあ、ユーマ。俺達の全力は見ての通りだ。どんな感じだ?」
「複合強化自体は、もう完璧に限りなく近いです。後は日々部分強化と魔力制御の訓練を出来る限りする様にすれば、その成果が複合強化の精度アップにも繋がります。要はあとは己の自己錬磨次第です」
僕の結論に、ゼノンさんは腕を組んで頷きながら納得していた。
「元より、強くなるのに楽な道はない。もっと己を高めたければ、常に己をひたすら鍛えるしかないという事か」
「そういう事です。皆さんと一緒にいる間は、僕達も全力で協力します。だから頑張りましょう」
「おう」
「かたじけない」
正直バロンさん達の複合強化はもう完壁に限りなく近かった。
実際この模擬戦では僕もラティもクレイルも、感覚を極限まで研ぎ澄ませたり、攻撃を迎え撃つのに全力で対抗したりもした。
だがそれは逆に言い返せば、中途半端な複合強化で相手をすれば僕達も決して無事では済まないという事。
それだけ彼らの強化した力がすさまじかったという事で、後はバロンさん達がこの力で本当に強くなった自分達を自覚すれば、それこそ本当に八輝帝にも勝てそうなくらいだ。
ドラグニティ王国を目前にして、僕達は自分達が指導して強くなった仲間達の能力を目の当たりにしていた。
そして模擬戦を終えて少しして、僕は夕食の支度をトロスさんとイリスさんの3人で行い、僕達は食事を始めた。
その中での会話で、今後の旅の事を話していた。
「アリア、あとどの位でドラグニティ王国の王都に着きそう?」
『明日には領内に入るので、あと3日もしない内には到着しそうです』
もう頭とも目と鼻の先まで来ている事を知り、僕はその先でどんな出来事が待っているのか、とても楽しみだった。
それが巻き込まれ体質によって新たな出来事に巻き込まれるとも知らずに……。
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次回予告
遂にドラグニティ王国の領内に入ったユーマ達は、王都の城壁へとやってくる。
そこでユーマは、ある光景を目にした。
次回、やって来た竜神様




