第224話 次の目的地
前回のあらすじ
ラティはクルス、ユーマが護衛につけてくれたアリアを伴って、帝都を散策する。
その途中、同じく散策していたバロンとゼノンと合流し、ラティは普段とは違う組み合わせでの散策を楽しむ。
ガイノウト帝国にやって来た僕達は、仲間のイリスさんがこの国の皇女だという事を知り、
その父親である魔皇帝陛下からこの国の後ろ盾を得て、イリスさんの誕生日祝いの贈り物をアライアンス総出で調達し、
帰還してリーゼさんの姉妹に会い、
誕生日会に招待されてリリスティラン皇女の長年の研究成果のトランスゴーレムを見て、
魔皇帝陛下によって第1皇子のヴァンデルン皇子が皇太子に選ばれてと、
かなり濃い数日を過ごした僕達は現在、帝城の一室に集まっていた。
「ユーマ、ここに全員を集めたという事は、そろそろという事か」
「はい、その通りです。この国での目的を達成し、大分過ごしたので、次の目的地に向かおうと思っています」
内容は今言った通り、そろそろこの国を発って、次に向かう目的地を決める為だ。
「ユーマ殿達は、次に何処へ行くのか決めているのか?」
「はい。このゼピロウス大陸で、僕達は最初に巨人族の国、オベリスク王国に行き――」
「その後ヴォルスガ王国で皆さんと再会して、皆で暫く旅をする事が決まってこのガイノウト帝国に来ました」
「そんで、まだこの大陸で行っていない国は、あと1つだ」
「竜人族の国、ドラグニティ王国よ」
このゼピロウス大陸には3つの国があり、1つ目が巨人族の国、オベリスク王国。
2つ目が今僕達がいるイリスさんとダグリスさんの故郷である、魔族の国、ガイノウト帝国。
そして3つ目がまだ行っていない、ゼノンさん、ついでに八輝帝のガルーザスの故郷である、竜人族の国、ドラグニティ王国だ。
そしてドラグニティ王国はゼノンさんの故郷の他にもう1つ、僕達の中に所縁のある者がある国だ。
「成程、アリア様を連れていく為も兼ねてか」
そう、ドラグニティ王国は、アリアの種類である竜神を神の御使いとして崇めている。
それは単に、竜人族が竜種の魔物と従魔に適合しているとか、竜神がその竜種の頂点に立つ存在とか、そういう他にもう1つある。
「はい、ゼノンさん。アリアのお母さんである先代竜神が眠る、竜魂の霊山へ行き、アリアと一緒に先代竜神の墓参りに行きたいんです」
ドラグニティ王国の領内には、竜魂の霊山という命を落とした竜種の魂が眠ると言われる場所がある。
アリアによると、先代を始めとする各竜神もその山脈で永遠に眠り続けると言われている。
そしてドラグニティ王国では、その竜魂の霊山を神聖な場所――所謂聖地として崇めているんだ。
「その山に、アリアのお母さんのお墓があるのよね?」
『はい。お母様は死ぬ直前に私を連れてその霊山へ行き、最期に私に竜神の座を譲り渡して息絶えました。竜神となった私はお母様の亡骸を埋葬して墓を建て、竜神として世界を回りました。それからは数年に1度の頻度でお墓参りに伺いましたが、11年前にユーマと出会ってからは行っていませんでした。従魔として主の傍にいるのが常としていたからです』
「それで、アリアにお墓参りさせるだけでなく、僕達もその当代の竜神であるアリアの家族として挨拶に行きたいと、以前から決めていたんだ」
僕達は銀月の翼を結成して安息の地を探す為に旅に出る事を決めた際、いつかはアリアのお母さんの墓参りに行くと決めていた。
彼女の主として、家族として挨拶に行くのは当たり前だと思ったからだ。
「アリア、随分と時間が掛かってしまったけど、漸く君のお母さんのお墓参りに行ける。待たせてしまってごめんね」
『気にしないでください。私達竜族にとって、10年や20年位の時間はそれ程長くは感じません。それにいつかは行く事になっていたのですから、きっとお母様も怒ってはいません。だからユーマが気にする事は無いのです』
そんな相棒の気遣いの言葉に、僕は改めてアリアにゆっくりと母親に語る時間を与えてあげたいと思った。
「そんな訳で、僕達は次にドラグニティ王国へ行きますが、皆さんはこれからどうしますか?」
「そうだな。私もここ数年帰郷してはいなかったから、この機に1度祖国へ戻ろうかと思う。お主達と目的地が同じなら、もう暫く共に行かせてくれないか?」
「そうね。私達の複合強化もまだまだ極められる部分がありそうだし、もっと鍛えて欲しいとも思っていた所だしね」
ゼノンさん達は、僕達に引き続き同行したいと申し出た。
「俺達も、仲間の故郷がどんな所なのか見てみたいからな。だから、もう少しお前達と一緒に行かせてくれないか?」
「ええ。僕達ももっと鍛え欲しいですし、何より一緒にいると楽しいですからね」
「俺も久し振りにあの国に行ってみたいしな。だから頼むよ」
バロンさん達も同じの様で、僕達としても断る理由はない。
「分かりました。では、次の国へも一緒に行きましょう」
「もう暫くの間、楽しい旅が続きますね」
「その間、俺達が一緒にもっと鍛えてあげますよ」
「まだまだ賑やかになりそうで、私も楽しみよ」
皆も了承し、僕達はドラグニティ王国へも一緒に行く事が決まった。
確かにクレイルが言った通り、バロンさん達の複合強化は大分ものになってきているから、もう少し一緒にいて共に完成させたいとも思う。
その後僕達は魔皇帝陛下達に旅立ちの報告をし、僕達は翌日に発つ事にした。
この数日でゆっくり過ごしていた間に、色々と食料や消耗品などを買い足していたから、いつでも旅立つ事が出来た。
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翌朝になり、僕達は帝城の前で魔皇帝陛下達に見送られていた。
「ではイリスティラン、気を付けていくんだぞ。皆も、これからも私の娘をよろしく頼む」
「クレイル、次に会う時には俺ももっと強くなるからな。その時はまた模擬戦してくれよ」
「皆の鑑眼鏡は既に改良を施しているから、鑑定の精度が格段に上がっているわ。きっとこれからの旅に役に立つわよ」
「イリスティラン、皆さん、あなた達の無事を常に祈っていますからね」
「皆さん、次期皇太子として、私ももっと頑張ります。ですから皆さんもこれからの冒険者活動、頑張ってください」
皇族の皆さんに言葉を贈られ、僕達は最高の気持ちで旅立つ事が出来そうな気分になった。
「魔皇帝陛下、この数日間、大変お世話になりました。あなたから頂いた後ろ盾のメダル、大切にします」
「イリスさんの家族に会えて、あたし達もとっても楽しかったです。ありがとうございました」
「ヴェルフェン、俺達もその時は更に強くなってるからな。その時はまた、俺が勝たせて貰うぞ」
「言ったな。俺だって同じ轍は踏まないつもりだからな。覚悟していろよ」
クレイルとヴェルフェン皇子はガッチリと固い握手を交わし、漢の誓いを立てていた。
「リリスティラン皇女、あなたの研究所はとても素晴らしかったです。またこの国に来た時には、是非また見学させてください」
「勿論よ。いつでも待っているわ」
コレットもリリスティラン皇女と仲良くなった様で、いつかまた来た時に研究所を訪れる事を誓っていた。
「それじゃあ、そろそろ出発しよう」
「よし。行くか」
「それでは、失礼します」
僕達は魔皇帝陛下を始めとする皇族に見送られ、帝城を後にした。
そして城壁を通って外に出て、竜の姿になったアリアとスニィに乗って飛び立った。
「さあ、アリア。ドラグニティ王国へ目指して、出発だ」
『お母様、このアリアがもうすぐあなた様の所へ行きます。待っていてください』
アリアも己の目的に期待を膨らまして、勢いよく巨大な翼を羽ばたかせてスニィと共に移動を始めた。
次の目的であるドラグニティ王国、そこで僕達は新たな出会いをする事になるだろう。
これで第12章は終わりです。
次回から「第13章 ドラグニティ王国」となります。
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次回予告
出発して数日、ユーマ達は野営出来る場所に降り、その後バロン達と模擬戦する。
その模擬戦を通じて、ユーマ達はアライアンス組の複合強化を確認する。
次回、道中の訓練




