第223話 ちょっと意外な組み合わせ
前回のあらすじ
ユーマ達は魔導研究所を見学に訪れ、総責任者のリリスティラン皇女に案内される。
中では様々なマジックアイテムやそれに関する研究が行われていて、中にはリリスティラン皇女が造りだした者も量産が行われていた。
その一種の最先端の光景に、ユーマ達は感動に包まれるのだった。
ラティside
「いい天気ね、クルス」
「グルルルルルルゥ!」
『ラティ、はしゃぐのは分かりますが、それで逸れたりしないでくださいね。今日は私は、あなたの護衛をユーマに頼まれたのですから』
魔道研究所を見学した翌日、今日あたしはクルスとアリアを連れて帝都を散歩している。
いつもなら少なくともユーマくんが一緒だけど、今日は偶には1人で出歩きたい気分だった事を話したら、ユーマくんはクルスの他にアリアを護衛につけてくれた。
正直Sランクのあたしの実力に、クルスの存在もあれば基本的にはどうって事は無いと思うけど、ユーマくんはそれでもとアリアを付けてあたしの身に掛かる危険を少しでも減らしてくれた。
この組み合わせなら、例え街中でも確実に危険な事は無いだろうって。
本当にこういう所で気を遣ってくれるから、元々好きだったユーマくんがもっと好きになっちゃう。
そして今、あたしは普通の大きさのクルスと、標準サイズのアリアを伴って街を歩いていた。
『しかしこうしていると、ラティと一緒に出歩くのも随分と久し振りですね』
アリアに言われて思い返すと、確かに小さい頃はよくユーマくんと一緒に遊ぶ他に、アリアとクルスとの3人で遊ぶ事もよくあったけど、銀月の翼を結成して旅に出て、そしてクレイルくんやコレットさんと出会ってからは皆でいる事が常になって、こうしてこの3人で出かける事はもう殆どなかった。
「そうね。でも偶にはいいんじゃない? 一緒に思いっきり楽しみましょう」
「グルルルゥ」
『そうですね。今日はとことん楽しみましょう』
あたし達は帝都の街中に出ている出店で色々買っては食べてを繰り返していた。
「このクレープって、美味しいね」
『ええ。しかも種類によって中身が異なるというのが嬉しいです』
「グルルルゥ」
とある出店でクレープというお菓子が売られていて、薄く焼いた生地に生クリームや色んなフルーツなどが包まれていて、数種類を買って3人で順番に食べてみたら、非常に美味しかった。
帰ったらユーマくんに教えて、今度作って貰おう。
そんな風に帝都のあちこちを歩いて回っていたその時、
「おっ、嬢ちゃんじゃねえか」
後から声を掛けられて振り返ると、バロンさんとゼノンさんがいた。
「バロンさん、ゼノンさん。2人だけですか? 従魔達は?」
「ロップスは先日のヘルフォレストで頑張ったからな。今日は城で文字通り羽を休めている。ユーマ達もいたし、何よりあそこは安全だからな」
「スニィもあの冒険に加えて、先日のトランスゴーレムとの模擬戦もこなしたからな。あいつも同じく帝城で休ませている」
「そんで今日は、ゼノンと2人で帝都を散策して過ごす事にしたのさ。その最中に嬢ちゃんを見かけたのさ」
「そうですか。あたしも今日はアリアとクルスだけで街を散策していたんです。アリアに関しては、ユーマくんが護衛につけてくれたんです」
「そうか。自分の相棒を護衛につける辺り、あいつらしいな」
バロンさん達もユーマくんの性格を思い出して、アリアをあたしに付けた事に納得している。
「あの、良かったらあたしと一緒に街を散策しませんか?」
「いいのか?」
「勿論です。あたし達は仲間なんですよ」
「そうだな。では、私達と共に行こうか」
「はい!」
こうしてあたし達は、バロンさんとゼノンさんも加えた計5人で街を歩く事になった。
「にしても、なんだか珍しい組み合わせかもな、今の俺達って」
「そうですね。バロンさんとゼノンさんは基本的にユーマくんと一緒にいるのが主ですから、あたしと一緒というのは無かったですね」
「確かに、ラティ殿は普段はイリスやコレット殿と言った女同士でいる事が多かったからな。後はユーマ殿くらいだが、こうして私やバロン殿と3人でいるというのは、思えば初めてかもしれぬ」
だからこの組み合わせはちょっと意外な風に思えるかもしれない。
「でも、偶にはいいと思いますよ。それにしても、2人だけで散策なんて、バロンさんとゼノンさんは仲が良いんですね」
「まあな。こいつとはエリアル王国で再会して以来、ずっと一緒だからな。今じゃすっかりマブダチだぜ」
「バロン殿とは、互いにパーティーの仲間を率いる者同士。色々と通じ合う部分も多く、よく一緒にいる事が多いのだ」
どうやらこの2人はアライアンスを結んだリーダー同士で通じ合う事が多く、それで何時しか親友になった様ね。
確かに戦闘ではかなり息が合っていたし、武闘大会でもとてもいい連携だった。
エリアル王国で再会してからは常に一緒にいたから、その時間を通して心が通じ合い、こうして仲良しになれたのね。
「じゃあ今日は、あたしも含めてゆっくりと楽しく行きましょう」
『そうですね』
「グルルゥ」
「よし。行くか、嬢ちゃん」
「ユーマ殿の分まで、私達がアリア様とご一緒に、ラティ殿を守らねばな」
「ありがとうございます」
そしてあたし達5人は、帝都を歩いて回りその途中でいくつもので店を回っては買い食いを繰り返して、何時しか散策は食べ歩きの旅となっていった。
でもこれはこれで楽しく、普段とは違うメンバーで一緒にいる事で色々話が出来て、とても楽しい時間となった。
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やがて夕暮れになり、時間を合わせて帝城に戻って来た私達は、ユーマくん達のいる部屋へと向かった。
「おかえり、ラティ、アリア、クルス。散歩は楽しかった?」
部屋に戻ってすぐに、愛しいユーマくんに出迎えられた。
「ただいま、ユーマくん。途中でバロンさんとゼノンさんと会って、一緒に歩き回ったの。とっても楽しかったわ」
『ユーマ、ただいま戻りました。ラティはクルスと共にしっかりと守り抜きました』
「ありがとう、アリア、クルス」
ユーマくんは2匹を優しく撫でて労っていた。
「バロンさん、ゼノンさん、ラティがお世話になった様で、ありがとうございました」
後ろにいたバロンさん達にもお礼を言った。
「いいって事よ、ユーマ。嬢ちゃんは俺達の仲間なんだ。仲間を守るのは当然の事だ」
「ああ。だから礼は無用だ」
こうして、あたし達のちょっと意外な組み合わせでの散策は幕を下ろしたのだった。
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次回予告
ユーマ達はガイノウト帝国での目的を達成し、次の目的地を話す。
次に選んだ国は、アリアやゼノンにとってもとても関わりの深い所だった。
次回、次の目的地
次回で第12章は終わりです。




