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第22話 正体の告白

前回のあらすじ

魔物との戦闘訓練を控えたユーマは、魔物とはいえ生き物の命を奪う事に不安を覚える。

その事を女神イリアステルに相談するが、逆にその不安を覚える事の素晴らしさを説かれ、ユーマは迷いを振り払う。

そして、家族に正体を話す決意を固める。

 教会から戻ったその夜、僕は家族とアルグラース一家と夕食を食べ、その片付けを終えた。

 今この場には全員揃っている。

 前世の事を話すなら今だ。


 僕は席から立ち上がり、皆に声をかけた。

 アリアは傍で僕の事を見守ってくれている。


「お父さん、お母さん、ダンテさん、エリーさん、バルバドス、フラウロス、サーレス、ヴィオーラ、クルス、そしてラティ、ちょっといいですか?」


「どうしたんだ、ユーマ? 急に畏まったりして」


「実は、僕は今まで皆に隠していた事があるんです」


「どうしたの、ユーマくん? お母さん達に秘密にしていた事って何?」


 僕は覚悟を決め、一旦深呼吸して口を開いた。


「実は……僕は、只の人間じゃないんです。僕は転生者、地球という……このアスタリスクとは別の世界から転生してきた、異世界人の魂を持った人間なんです」


 僕は皆に全てを打ち明けた。

 かつてはその地球の成人男性だった事。

 ある日、地球の神様の手違いで死んでしまった事。

 僕の死が予定外で輪廻の輪に乗る事が出来なかった為、神様の計らいでこのアスタリスクに転生する事になった事。

 その際、神様の罪滅ぼしとして、前世の記憶を持ったまま転生した事。

 その全てを語った。


「だから、僕は体はこの世界のユーマ・エリュシーレとして生まれたけど、魂は前世の岩崎悠馬のままなんです。僕が、年齢の割に大人びていたのも、お母さんの授業で計算などの呑み込みが早かったのも、魔法で様々な複合魔法を作り出せたのも、全部前世の知識や経験からできた物なんです」


 ここまで言い終わった僕はお父さん達を見ると、全員絶句していた。

 僕はそれを見て、とても悲しくなった。


「今まで黙っていて、本当にごめんなさい。僕は怖かったんです。もしこの事実を話したら、皆は僕の事を気味悪い人間だと思うんじゃないかと。この新しい生活の中の、幸せな時間が壊れるんじゃないかと。何より……皆から突き放されるのが怖かったんです」


 そう言ったその時、僕の左頬にスパーンという音が響き、同時に僕の顔が右へと飛んだ。

 前を向くとお母さんが涙を流しながら立っていて、僕の両肩を強く掴んできた。


「馬鹿!! 何て事を言うの!? 私達があなたを気味悪がる!? あなたを突き放す!? 本気でそんな事を思ってるなら、次は平手じゃなく拳で殴るわよ!!」


 お母さんの今までにない怒鳴り声に、僕は思わず体が震えてしまった。

 その声には、怒りだけではなく悲しみの感情も含まれている様だった。


「おか……あ……さ……ん……?」


「転生したから何!? それが何だっていうの!? あなたは私とお父さんの世界でたった1人の子供、ユーマ・エリュシーレ! それ以外の何者でもないわ!!」


「驚いてないの……? あんなに絶句していたのに……」


「私達がショックだったのは、そんな大切なことを秘密にされていた事よ。確かに、転生したというのには正直驚いたわ。でも、あなたは私がお腹を痛めて産んだ私達の家族。その大切な家族に秘密にされていた事がショックだったのよ」


 その言葉に、僕はやっと気づいた。

 僕は心の何処かで家族を信用していなくて、それで皆を悲しませてしまったという事に。


 お母さんの隣にお父さんがやってきた。


「サラに言いたい事を全部言われてしまったが、俺も同じ気持ちだ。お前が異世界からやって来ようが、そんな事は関係ない。お前が何者だろうと、お前は俺達の息子だ。例えお前が家族を止めたいと言っても、そんな事は俺達が絶対に許さないぞ」


 お父さんは優しく、それで力強く言い、僕の頭を少し乱暴に撫でまわした。


 さらにダンテさんとエリーさんも僕の近くにやってきた。


「ユーマくん、確かに君の正体には驚いたが結局はそれだけだ。君は家の娘と仲良くしてくれて、娘の面倒を見てくれる優しい子だ。君は俺達にとっては甥っ子も同然なんだ。そんな甥の事を突き放すなんて、そんな事はありえないよ」


「そうよ。あなたは転生した人間である以前に、私達の娘の大切な友達で、私達の甥も同然の大切な子供よ」


 2人はこんな僕を甥として接し、可愛がってくれた事に、僕の涙腺が緩みそうになってきた。


「クーン」


「クォン」


 バルバドスとフラウロスも僕に寄り添って、顔を舐めてくる。

 サーレスとヴィオーラも僕に寄り添ってきた。


「グルルゥ」


 クルスも寄ってきた。


「さあ、最後はあなたのお姫様からのお説教よ」


 お母さんはそう言って、一度離れた。

 その後ろには、泣きながらもこっちを睨みつけるラティの姿があった。


「う……っ、ユーマぐんのばがぁぁぁ……あだじがユーマぐんをごわがるわげ……ないでじょう……もうぞんな……がなじいごど……いわないでぇ……」


 僕は泣きじゃくる彼女を優しく抱きしめた。


「ごめんね、ラティ。もうさっきみたいな事は思わないし、言ったりもしない。約束するよ」


「ほんどうぅ……?」


「本当だよ。もう金輪際、悲しい事は言わないから。皆にも誓います。僕はもう皆を恐れたりしない。あんな悲しい事は思ったりしません」


「約束よ。もしまた思ったら、その時は魔法の拳をお見舞いするからね」


「俺からは大剣の振り下ろしだ。約束したからな」


 そして僕はラティを抱きしめたまま、お母さん、お父さん、ダンテさん、エリーさんに抱きしめられた。

 少し苦しかったけど、皆の、家族の温盛がとても気持ち良かった。

 その気持ち良さと嬉しさで、僕は涙を流しながら皆の温もりを感じていた。


 ありがとう、皆。

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次回予告

遂に魔物との戦闘訓練を迎えたユーマ達。

自分達の出番が回って来る事に、アリアとクルスは気合を入れる。

そして、彼らが戦う相手は。


次回、実戦訓練


次回からは6時、12時、20時にそれぞれ更新します。

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