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第205話 イリスの家族

前回のあらすじ

イリスがガイノウト帝国の皇女だという事が発覚し、ユーマ達はそのイリスの両親である魔皇帝と帝妃と出会う。

魔皇帝陛下は非常に物腰の柔らかい人物であり、ユーマ達はイリスの家族なの良さを目の当たりにする。

「イリスティラン、その者達は?」


 ヴァンデルンと呼ばれたヴァンパイア族の第1皇子が、イリスさんに僕達の事を尋ねた。


「はい、お兄様。私が冒険者として旅をしている中で出会った、アライアンスを結んだ冒険者達です」


「おお、そうか」


 そして第1皇子は僕達の前へとやって来た。


「初めまして。私はガイノウト帝国第1皇子、ヴァンデルン・フォン・ガイノウト。イリスティランの兄だ。妹の友人なら、喜んで歓迎する。ようこそ、ガイノウト帝国へ」


 ヴァンデルン皇子はセリスティラン帝妃やイリスさんと同じ真っ赤な髪色をした、ヴァンパイア族の男性だった。

 全体的にはそれ程鍛えていない様に見えるが、実際はかなり鍛えられた細マッチョの体形をしているのが分かる。

 そして何より魔皇帝と帝妃にも負けない魔力を感じる。


「初めまして。銀月の翼のユーマ・エリュシーレです。冒険者ランクはSです」


 僕が名乗ると、次にヴェルフェンと呼ばれた悪魔族の第2王子が反応した。


「何!? お前があの有名な『雷帝』か!? 俺は第2皇子のヴェルフェン・フォン・ガイノウトだ。なあ、お前の仲間の『闘王』ってのはどいつだ?」


 ヴェルフェン皇子は魔皇帝と同じ白髪の悪魔族の男性だ。

 イリスさんと同じ角を持ち、ヴァンデルン皇子と違って明確に鍛え上げられた身体を持つ、豪快な人物だった。


 ヴェルフェン皇子は僕の名前を聞くと(えら)く興奮して、クレイルは誰かと尋ねて来た。


「あのぉ、『闘王』なら俺です。クレイル・クロスフォードです」


 クレイルが名乗り出ると、ヴェルフェン皇子はクレイルの手を握りだした。


「お前がそうか! 俺は1度、お前に会ったら手合わせして欲しいと思っていたんだ! なあ、どうだ? 今度俺と1つ模擬戦してくれないか?」


 彼はそう言って、クレイルにいきなり模擬戦を申し出た。


「ええっ……!? あの、ちょっと……」


 流石のクレイルもいきなりの申し出に、困惑していた。


「ちょっと、ヴェルフェン。彼らはイリスティランの招いた、大切な客人なのよ。あまり失礼な事は言わないで」


 そこに助け舟を出してくれたのは、リリスティランと呼ばれた第1皇女だった。


 その容姿は髪が白髪以外はイリスさんと瓜二つで、セリスティラン帝妃とイリスさんを並べれば、まるで三姉妹と言われても通用する様な顔立ちだった。

 そしてもう1つ違うのは、イリスさんはスレンダーな体形だったのに対して、リリスティラン皇女は豊かな胸を持つスタイル抜群の女性だった。


「あっ……申し訳ありません、姉上。以前から会いたいと思っていた者達が来ていると知ったら、思わず興奮してしまって――」


 ヴェルフェン皇子はリリスティラン皇女に謝罪し、クレイルの手を離した。

 そしてヴァンデルン皇子が口を開いた。


「すまなかったな、クレイル殿。ヴェルフェンは1年前の武闘大会で君の活躍を聞いてから、君と戦いたいと願う様になり、その相手が今ここにいると知ってこの様になってしまったんだ」


 曰く、ヴェルフェン皇子は、イリスさんと同じく帝位継承権には興味がなく、皇族の中でも特に剣術や魔法などの戦闘の訓練に力を入れていたそうだ。

 いずれは帝国の将軍になり、皇帝となる兄か姉を生涯支えるという目標を持っているらしい。


 そんな時に1年前、武闘大会に単独で出場し、最年少で準優勝するという快挙を残したクレイルの活躍をこのガイノウト帝国で聞いてから、ヴェルフェン皇子はクレイルに興味を抱き、いずれは彼と模擬戦をしたいという願いを抱く様になった様だ。


「それでクレイル、どうかな。俺と模擬戦してくれるか?」


 再度の彼の申し出に、クレイルは今度は落ち着いて答えた。


「いいですよ。俺で良ければ、喜んでお相手になりましょう」


「そうか! ありがとう! 詳しい日程は後に話す。楽しみにしていてくれ」


 何だかクレイル、思わぬ所でオベリスク王国の時の僕と同じ状況になってしまったな。

 でもあの時は僕は皆に巻き込まれまいと見捨てられたから、僕は敢えて見守る事にした。


「ごめんね、クレイルくん。ヴェルフェンお兄様は私達皇族の中でも特に戦闘を好む性格で、1度言い出したりこうと決めたらテコでも動かないの。でも、基本的には家族や仲間を大切にする人で、それで騎士や国民達からの信頼が厚くて、決して無茶苦茶な人ではないのよ」


 イリスさんがフォローして、僕達はヴェルフェン皇子の人となりを聞いた。

 聞く限りでは、確かに悪い人物ではない様だ。

 何より、イリスさんが大丈夫だという時点でそうなのだろうという確信もある。


「そうですか。イリスさんがそういうのでしたら、僕らも大丈夫です。クレイル、今度ヴェルフェン皇子と模擬戦してあげよう。彼はイリスさんの家族なんだ。仲間の家族なら、僕らとしても無下には出来ないよ」


 僕の言葉に皆は頷き、クレイルも了承した。


「分かったよ、ユーマ。既に俺も約束したんだ。今更反故にする事なんざ、俺には出来ないしな」


 クレイルも納得し、無事にこの場は収める事が出来た。


「皆が落ち着いた処で、話を戻すとしよう。イリスティラン、お前は先程何かを言いかけていたな」


 僕達のやり取りを見守っていた魔皇帝陛下が、皇子達が入ってくる直前にイリスさんが何かを言おうとしていた事を思い出し、彼女に尋ねていた。


「そうでした。私が今回帰郷して来たのは、お父様のお誕生日を祝うだけでなく、彼らの事でお願いしたい事があるからです」


 それからイリスさんは魔皇帝陛下に、僕達銀月の翼がメビレウス大陸にある4つの国と、ゼピロウス大陸のオベリスク王国の各王家の後ろ盾を、バロンさん達アライアンス組も先日ヴォルスガ王国で王家の後ろ盾を得た事や、先日の八輝帝のとの揉め事を話した。

 そして今後互いに迷惑をかけたり、変な厄介事を防ぐ為に、魔皇帝陛下にも後ろ盾を得ようと今回の帰郷を利用して頼み込んで来た事も話した。


 事情を聴いた魔皇帝陛下は、目を閉じて何度か頷いて相槌を打っていた。


 周りでは帝妃や皇子達が見守って、陛下が返答するのを待っていた。


「話は分かった。私の方でも、既に各国の王達が彼らの後ろ盾になったという事は聞いている。数年前に、アルビラ国王から竜神と特異種のグリフォンと適合した者達の力になって欲しいとも言われていたからな。その者達が、こうして娘の友人としてここに来たのも、全ては運命の導きなのかもしれない。娘の頼みとして、盟友の頼みとして私は、銀月の翼、マッハストーム、赤黒の魔竜の後ろ盾になる事を誓おう」


 魔皇帝陛下は無事に僕らの後ろ盾になってくれることを約束した。


「ありがとうございます、魔皇帝陛下!」


 僕は代表して感謝を述べ、他の皆も同時に頭を下げた。


「ありがとうございます、お父様」


「構わないさ。寧ろ、お前が世話になっている相手の後ろ盾になる事で、彼らの役に立てるのならば安い御用だ」


 そして魔皇帝陛下は、近くにいた騎士の魔族に宰相を呼ぶように命令した。


「ヴァンデルン、ヴェルフェン、リリスティラン、聞いての通りだ。これから彼らは私達が後ろ盾となり、力になる事となる」


「分かりました、父上。私達も彼らの力になれるとは、光栄です」


「妹の友達なら、俺達もしっかりと力にならないとですね」


「はい、父上。このリリスティラン、しかりと胸に刻みます」


 そしてイリスさんにもお礼を言うべく、僕達はイリスさんに感謝を述べた。


「ありがとうございます、イリスさん。こうして無事にガイノウト帝国の後ろ盾を得る事が出来ました」


「これも、全てイリスさんのお陰です」


「だから言ったでしょう。あの人なら確実になってくれるって。だからいいのよ、お礼なんて」


「それでも言わせてください」


 謙遜するイリスさんに感謝を伝えた。


「これでバロンさん達も後ろ盾を得る事が出来ました。僕達もですから、互いを守る事もより出来る様になります」


「ああ。お前達に迷惑をかけない為に、しっかりとこの国の後ろ盾を得た身として相応しい冒険者にならないとな」


「僕達もです。お互いに頑張りましょう」


「おう」


 それから少しして、僕達は玉座の間へと移動した。


 僕達に後ろ盾の証を与える準備が整ったからだ。


 僕達はイリスさんも一緒に玉座の前に跪き、魔皇帝陛下は玉座の間に腰を下ろし、その左右に帝妃、皇子や皇女が並び立った。


「ではそなた達にこれを渡そう。ルーファス」


 ルーファスと呼ばれた、宰相の魔族が僕達の前にやって来て僕達に小箱に入った物を差し出した。

 その際、ルーファスさんの姿を見て、彼は上半身が人、下半身が馬の姿をした魔族だった。

 確かあの種族は、魔族の中でも特に忠義に厚いと言われる種族のケンタウロス族だ。

 今までにも色んな種族の魔族を見て来たけど、獣人と同じ様に一口に魔族と言っても様々な種族がいる事を改めて認識した僕だった。


 そしてそのルーファスさんの差し出した小箱の中には、このガイノウト帝国の国家である、悪魔を彷彿させる形のマークが刻まれたメダルが9枚入っていた。


「それは私の後ろ盾を証明するメダルだ。イリスティランにも冒険者のイリスとしての後ろ盾として、それを与える」


 イリスさんはこの国では皇族のイリスティランさんとして通っているが、普段は冒険者の身分として生きているから、魔皇帝陛下は自分が後ろ盾としての形で娘を守るという事か。

 本当にイリスさんの家族は仲が良いんだな。


 こうして僕達は銀月の翼は第6の後ろ盾を、アライアンス組は第2の後ろ盾を無事に得る事が出来た。

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次回予告

無事に後ろ盾を得たユーマ達は、ガイノウト帝国での活動方針を話し合う。

その際イリスはユーマ達に新たな頼み事をする。


次回、魔皇帝への誕生日祝い

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 髪の色の他はそこで区別するのか、 ユーマ意外とむっつり? [一言] そういえば魔族の国や魔皇帝の事はかなり早い段階で紹介されてたな。 それこそ武闘大会でイリスさん達赤黒の魔竜と当たる…
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