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第199話 打ち明けと同行

前回のあらすじ

ヴォルスガ王国の獣王陛下に謁見したユーマ達は、自分達の素性を明かし後ろ盾になって欲しいと頼む。

獣王はそれを了承し、同時にアライアンスを結んでいるバロン達の厄介事を予防する為に彼らにも後ろ盾になる事を誓う。

 王城で獣王陛下からの後ろ盾を得た僕達は、セイナさんの宿へと戻り、部屋に戻って来た。


 バロンさん達アライアンス組の5人も一緒だ。


 今この部屋には、僕達銀月の翼とその従魔に、バロンさん、トロスさん、ダグリスさん、ゼノンさん、イリスさんが揃っている。


「それで、話って何だ、ユーマ?」


「態々宿の部屋にまで連れてくる当たり、改まってどうしたんですか?」


「何か大事な話なのか?」


 バロンさん達は僕が話す事が気になり、そう尋ねて来た。

 部屋の端では、ゼノンさんとイリスさんが何か悟った顔をしていた。


「ええ。かつてアライアンスを結んだ時に、僕達はアリア達の秘密を明かしたのを覚えていますよね?」


 この確認に、3人は頷いた。


「実はその時に、僕はもう1つ話していない事があったんです。あまりにも現実離れした話なので、もしかしたら信じて貰えないのと、無暗に明かしたくない秘密だったんです。でも、アライアンスを結んでいる以上、パーティーは違っていても僕らの仲間である事には変わりありません。だから今こそ明かします。僕の秘密を」


 それから僕は、バロンさん達に僕が転生者である事を明かした。


 元々この国でバロンさん達に再会したら、彼らに転生の事を話す予定だった。

 本当ならあの再会した日の夜にでも話すつもりだったが、八輝帝の件がありそのまま話す暇が無くなり、その後も大会までの訓練などで中々話す事が出来なかった。


 だが八輝帝との因縁に決着を付け、武闘大会も終わった事で漸く話す機会を得た僕は、こうしてバロンさん達に話す事が出来た。


 案の定ともいうべきか、3人は僕の正体を聞いて呆然としていた。


「なんとまあ……確かに普通なら信じられねえ話だな。異世界で生きていた人間だが、神の手違いで死んでこの世界に転生したなんて……」


「でも、彼がそんな有り得ない話をするほら吹きでも、ましてやくだらない嘘をつく人ではない事は知っていますし、本当の事なのでしょう」


「それに態々誰にも聞かれない場所で話したんだ。こいつの目もマジだったし、俺達も信じるしかないぜ」


 3人はこんな話を聞いても、僕が嘘を言っているとは思わず、信じてくれた。

 話した僕がこう思うのもなんだが、普通ならふざけた事を言っているとか風な事を思われる処だけど、ゼノンさんとイリスさんもそうだったが、僕が旅先で出会って仲間になった人達は本当にいい人達だ。

 そう考えると、僕は本当に恵まれていると思う。


「ん? ちょっと待てよ。俺達マッハストームの3人に話したって事は、ゼノンとイリスはもう知っているんだよな?」


 バロンさんはそう言ってゼノンさん達に尋ねた。


「その通りだ。私達はアルビラ王国での事件を解決した後、ユーマ殿から聞かされた」


「って事は、その後お前らがユーマ達と別れて、エリアル王国にいた俺達に会いに来て、それから今まで俺達と一緒にいたという事は……」


「お前達は今までずっと知っていたのに、俺達には教えてくれなかったという事だな」


「どうして僕達に言ってくれなかったんですか?」


「すまぬな。だが、この事は出来る限り広めたくなかった。異世界から転生した者がいると、中にはよからぬ事を企てる者が現れる可能性があった」


「私達が彼の秘密を知った時には、ユーマくん達はかなり名が通る様になっていたから、何時何処で誰が聞いているかが分からない以上、無暗に話す事は出来なかったの。例えバロン達が相手でも、変な人に知られたらユーマくん達に迷惑がかかる危険を考えると、そう易々と話す事が出来なくてね」


 ゼノンさん達は僕達が危惧している事を理解し、僕が直接話すまで秘密にしてくれていた様だ。


「そか。それなら仕方ないかもな。確かにユーマ達に迷惑がかかるくらいなら、出来る限り秘密にしたかった気持ちは分かるかもな」


 バロンさん達も納得してくれた様で、話はすぐに纏まった。


『ユーマ、これで全ての人に話す事が出来ましたね』


 アリアの言う通り、これで僕は話したい人すべてに僕が転生者だという事を話した事になる。


 僕の話したい事は全て話した事で、僕は皆と今後の事を話し合う事にした。


 すると、イリスさんが口を開いた。


「処で、ユーマくん達はこの後はまた世界を巡る旅をするのよね? 次の行き先は決めているの?」


「いえ、まだです」


『私達は最近までオベリスク王国を旅していまして、その国王から武闘大会の事を聞かされて、ユーマの空間魔法でこのメビレウス大陸へ戻って来たんです』


 つまり、僕達はこれからだと一旦ゼピロウス大陸のオベリスク王国の領内へ戻り、そこから残りの国を回るという事になる。


「確かゼピロウス大陸でまだ行っていない国は、竜人族のドラグニティ王国と――」


「魔族のガイノウト帝国だったわね」


 クレイルとコレットがまだ行っていない国を挙げ、僕達はそのどっちかから順に旅をするという事になる。


「それならユーマくん、ちょっと私の頼みを聞いてくれないかしら?」


「イリスさんの頼みですか?」


「ええ。私はガイノウト帝国の出身で、もうすぐ私の父親の誕生日なの。私の家では家族の祝い事は家族全員でやると決まっていて、近い内に一旦里帰りする予定だったの。ゼノンのスニィなら数日で着くけど、ユーマくんのロストマジックの事を聞いた時に、もしかしたら頼めるかなと思ったの。それで……」


「僕にゼピロウス大陸まで転移して貰って、最短で帰郷しようと思ったんですね?」


 イリスさんは頷き、僕に頼み込んできた。


「だからお願い。私をガイノウト帝国まで連れてってくれないかしら?」


 イリスさんはアライアンスを結んでいる仲間だから、それくらいならお安い御用だ。


「勿論いいですよ。でも、僕の空間魔法は1度でも言った事のある場所へしか転移出来ないんです」


「今のユーマくんだと、ゼピロウス大陸で行けるのはまだオベリスク王国だけね」


「だから、一旦そこに転移して、後はアリアやスニィに乗っての移動になりますけど、それでもいいですか?」


「勿論構わないわ。同じ大陸内での移動なら、問題にはならないわ」


「空を飛べるアリア様とスニィなら、私達の移動距離を大幅に短縮も出来るからな」


「分かりました。ではイリスさん、ゼノンさん、一緒にガイノウト帝国まで行きましょう」


 僕達は即決で赤黒の魔竜と暫く一緒に旅をする事にした。


「また暫く一緒にいられますね、イリスさん!」


「ええ。よろしくね、ラティちゃん」


 ラティもイリスさんと一緒にいる事になって嬉しそうにしていた。


「なあ、ユーマ。ちょっといいか?」


 すると、今度はバロンさんが口を開いた。


「どうしました?」


「お前さえよければ、俺達も一緒に連れてってくれないか?」


 なんと、バロンさん達も同行を頼んできた。


「俺達、今回の八輝帝との件で、まだまだ鍛えが足りないって痛感したんだ。それで、お前達に鍛えて欲しいんだ」


「君達と一緒なら、僕らも更に強くなれる気がするんです」


「足手まといにならず、仲間として一緒に戦いと思ったんだ」


 バロンさん達は自分達が至らなかったから、僕らの手を煩わせた事に負い目を感じている様だ。

 別に僕らは気にしていないのに。


「それに、俺達もそろそろ別の大陸へ行こうかと思っていたんだ。だけど、別大陸へ行く機会はなかなかないから、ユーマ達と一緒に行くのはいいチャンスでもあるんだ」


 どうやらバロンさん達は効率よく別大陸へ行く際に、僕らと一緒に行くのがいいと考えてもいた様だ。

 冒険者は利用出来る物は何でも利用する傾向があるから、僕の魔法を当てにするのは僕としても問題はないけどね。


「ユーマ、良いんじゃないか? 一緒に連れてっても」


 考えていると、クレイルが背中を押してきた。


「バロンさん達は仲間なんだ。ならさ、俺達と一緒に旅をする理由は他にいらないし、きっと楽しくなると思うぞ」


 確かにこのアライアンスメンバー全員で旅をすれば、きっと賑やかになるな。


「分かりました。そういう事でしたら、旅の間は僕やクレイル達がいくらでも模擬戦の相手をします」


「鍛えるなら、手加減はしないから覚悟してね」


「よろしくお願いします、バロンさん、トロスさん、ダグリスさん」


「ありがてえ! こっちもよろしくな!」


「よろしくお願いします」


「暫くの間、よろしくな」


「ユーマ殿、また暫くの間共に頑張ろう」


「楽しい旅になりそうね」


 こうして、僕達は次の目的地を魔族の国、ガイノウト帝国に決め、同時にマッハストームと赤黒の魔竜と一緒にゼピロウス大陸を旅する事が決まった。

これで第11章は終わりです。

次回から第12章、「ガイノウト帝国」になります。


ここまでお読みくださってありがとうございます。

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次回予告

オベリスク王国の領内へと転移したユーマ達は、アリアとスニィに乗ってガイノウト帝国を目指す。

その途中、ユーマ達はバロン達に自分達がやって来た魔力の部分制御の訓練を施す。


次回、仲間を指導

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― 新着の感想 ―
[良い点] 初めてリアルタイムで連載を追った第11章。 色々とどうなるかと思ったけど完結乙かれさまでした。 [気になる点] 振り返ってみれば銀月の翼と八輝帝だけでSランク冒険者が10人以上も出場してた…
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